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“日本一短い” 「西九州新幹線」開業…1番列車に多くの人 利便性や費用対効果では課題も… 新観光列車もデビュー 

2022年9月23日 22:03
“日本一短い” 「西九州新幹線」開業…1番列車に多くの人 利便性や費用対効果では課題も… 新観光列車もデビュー 

23日、“日本一短い”「西九州新幹線」が開業し、地元はお祝いムードに包まれました。

◇ルートの特徴は?
◇日本一短いワケ
◇新しい観光列車もデビュー

以上の3点を詳しくお伝えしていきます。

■始発駅から終点まで最短「23分」 “日本一短い新幹線”開業

西九州新幹線「かもめ」は、佐賀県の武雄温泉駅と長崎県の長崎駅を結び、その距離はわずか約66キロです。どれくらい短いかというと、東海道新幹線で例えると、「東京駅を出発して小田原の手前ほどの距離」しかありません。始発駅から終着駅まで、一番短い時間だと「23分」で到着します。お弁当を広げる間もなく着く…という感じでしょうね。

途中の駅は、「嬉野温泉」、「新大村」、「諫早」の3つです。23日は各地でお祝いの開業イベントが開かれ、にぎわっていたということです。長崎駅では、早朝から1番列車の自由席の切符を求める人などで長蛇の列ができていました。

鉄道ファン
「きょうの朝4時頃から並んでいたんですけど、結構人がいるなと思って、結構期待しているんだなと思って」
「すごくワクワクしています」

午前6時17分過ぎ、西九州新幹線「かもめ」の1番列車が出発しました。沿線では、多くの人たちが「かもめ」のデビューを見守っていました。

■ゆったりと座れる車内が魅力 駅周辺の見どころもたくさん!

西九州新幹線「かもめ」は車両も最新鋭のものを使っています。東海道山陽新幹線で今、活躍中の「N700S」が採用されていますが、西九州新幹線のデザインはだいぶ違います。車体に大きく「かもめ」と書いてあります。

座席もみてみると、東海道新幹線の普通車の場合は、一列が2席と3席で横5列ですが、西九州新幹線の普通車は指定席だと2席ずつの横4列でゆったり座れます。

車内も魅力的ですが、駅周辺にも見どころがたくさんあります。佐賀の嬉野温泉や武雄温泉駅といった、由緒正しい良い温泉街がありますが、開業にあわせて23日に新たにオープンしたスポットもあります。

武雄温泉駅の近くでは、県内の老舗豆腐店が新たな店をオープンさせました。こちらでは、豆乳ソフトを楽しめたり、足湯に入りながらカフェメニューも楽しめたりするそうです。

■長崎から博多に行くには“乗り換え”必要 佐賀県が線路をつながないのは…

西九州新幹線が短い路線になったのには、紆余(うよ)曲折がありました。

西九州新幹線は、長崎から乗ると武雄温泉までしか行きません。博多まで行く場合には、武雄温泉駅で在来線の特急「リレーかもめ」に乗り換えないといけません。同じホームで乗り換えができるように工夫はされていて、23日も、長崎から来た人はホームを歩いて、すぐ向かいに止まっている特急に乗り換えて博多に向かっていました。

同じホームであること自体は非常に便利でありがたいですが、直通で博多駅がある九州新幹線とつながるに越したことはないかなという感が否めません。

博多と長崎との間の所要時間は、これまでの在来線特急では最速で1時間50分でした。今回、在来線特急と新幹線を乗り継いで最速1時間20分と30分短くなっています。一方、途中で入る“乗り換え”をどう捉えるかということにもなっています。

武雄温泉駅と博多駅がつながるめどは23日時点で、立っていません。福岡県と長崎県の間にある佐賀県が、「今の形の新幹線をつなぐとしても、あまりメリットがない」というスタンスだからです。

どういうことかというと、佐賀市などでは、現在の在来線の特急を使ったり、すごく本数が多い高速バスもあったりするので、博多に行くには非常に便利な状況がすでにあります。

それなのに、今の仕組みで九州新幹線とつなぐ路線の建設に同意すると、佐賀県が負担しなければならない建設費があります。それがあまりにも大きく、さらに、新幹線がつながった場合には、平行する在来線がJRから分離され地元の第三セクターで運営しなければならないといった負担も出てきます。そのため、全体として、佐賀県では「メリットが少ない。デメリットの方が大きい」という立場です。

■新たな観光列車「ふたつ星4047」デビュー 魅力は海沿いぎりぎりの景色とおいしい料理

このような状況の中、実はJR九州は新幹線開業と同じ日の23日、新しい観光列車の運行も始めました。「ふたつ星4047」という列車で、23日、こちらにも多くの人たちが駅に駆けつけていました。

パールホワイトの車体には、金色のラインが走っています。そのコンセプトは「西九州の海めぐり列車」です。車内には1両まるごとのラウンジもあって、有明海や大村湾を臨むことができる、海をめぐる観光列車です。

天気がいいと、車窓から海沿いのぎりぎりの所を走るので、素晴らしい景色を楽しめます。

「ふたつ星」は、23日に開業した西九州新幹線と同じ武雄温泉と長崎を結びますが、走るのは在来線です。西九州新幹線が最短23分で行く距離を、「ふたつ星」はあえて3時間近くかけて走ります。

午前中は有明海沿い、午後は大村湾沿いを走って戻ります。のんびり走って、海の車窓と沿線のおいしい食材を車内で楽しむことができるということです。

JR九州としては、西九州新幹線と片道ずつ乗って、旅の楽しさを広げることも提案しているということです。

   ◇

西九州新幹線は距離が短いので、どういう形で皆が盛り立てていくかというのを考えなくてはなりません。魅力的なスポットやおいしいものがいっぱいあるエリアで、ポテンシャルが大きいということはわかります。それでもなお、開業を手放しで喜べない現実も抱えています。これからいかに利便性や費用対効果を上げていくか、将来像を早く示すことが求められます。

(2022年9月23日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)