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【震災から12年】沖合に現れた4本の柱と大量のがれき...空から見る福島第一原発のいま 

2023年3月11日 10:30
【震災から12年】沖合に現れた4本の柱と大量のがれき...空から見る福島第一原発のいま 

事故から12年をむかえる福島第一原発。爆発した原子炉建屋は今、どんな状態なのか。2023年2月27日、ヘリコプターで上空から取材をすると、1号機にはいまだに大量のがれきが残されていました。また、沖合1キロの場所には今まで見たことのない4本の柱が海上から突き出ていて、その下では海底トンネルが掘り進められていました。

■上空から見えたのは…建屋に残る大量の“がれき”

水素爆発を起こした1号機の屋上には、いまだに大量のがれきが残されていました。今後、がれきを撤去する際に放射性物質が飛び散ることを防ぐため、新たに建屋カバーを設置する予定だということです。

1号機の使用済み燃料プールには392体の核燃料が残されており、2027年度以降に取り出し作業が行われる予定です。1号機では溶け落ちた核燃料"燃料デブリ"の取り出しに向けて原子炉格納容器の中に水中ロボットを入れて、堆積物を採取するなどの調査が行われています。この調査は去年8月に終わる予定でしたが、装置の不具合などにより難航しています。

2号機では2023年度後半に、2年以上遅れて燃料デブリの試験的な取り出しが行われる予定。2号機の燃料デブリは200トン以上あると言われていますが、今回取り出す量は耳かき1杯分の量と言われています。2号機にも615体の核燃料が残されており、核燃料の取り出しに向け、建屋周辺の改良工事が行われています。

■1,066基…まるで巨大コンビナート

福島第一原発を上空からみると、目に飛び込んでくるのがタンク群、巨大なコンビナートのようです。全部で1066基のタンクがあり、総量は137万トン、タンクの96%が埋まっています。

保管されているのは放射性物質トリチウムが含まれた処理水。国はこの処理水を夏頃にも海に放出するとの見通しを示しています。

処理水の海洋放出の手順は次のようになっています。

新たにつくられた測定・確認用のタンクにまず処理水を貯め、放射性物質の濃度を測定します。放出基準に満たしていると判断されると、大量の海水と混ぜ合わされ放水立坑と呼ばれるプールのような場所に送られます。そして、ここでも再び濃度を測定し、基準未満にまで薄まっていることを確認した上で海に放出されます。

■処理水は海底トンネルで沖合1キロの放出口へ

福島第一原発から約1キロ沖合の場所には柱のようなものが4本、海面から突き出ていました。実は、この場所が処理水を海に放出するポイントだということです。処理水は海底の岩盤をくりぬいた地下トンネルを通りここへ運ばれていきます。

海底トンネルは直径約2.5メートル。現在、岸から約800m進んだ場所まで掘り進んでいるということです。最終的に処理水は沖合1キロ、水深12mの場所に埋められたコンクリート製の放出口から海に流されます。

東京電力によると、コンクリート製放出口は縦9m、横12mの大きさ。上部にある4本の柱には、測量用の目印となるGPSの端末が付いているということです。トンネル掘削機であるシールドマシンはこのGPSの座標を目指して掘り進んでいきます。

現在、トンネルの掘削工事は別の工事を行っているため休止中で、4月以降に再開されるということです。処理水の海洋放出について漁業団体などの合意は、まだ得られていません。国や東京電力は安全性に問題がないと訴えますが、十分な理解と合意を得ることが求められます。