“無断生成AI”に声優らが「NO」 その一方で…がんで失った声、“AIで取り戻す”技術も
生成AIで人気声優の声を基に作られた「声」が無断利用されていることに、声優たち自らが呼びかけを行い話題になっています。13日、声優業界が集まって、新たな動きがありました。
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日本俳優連合 池水通洋副理事長
「声優たちは心外であります。(無断で)AIを使って歌わせたり、好きなことをしゃべらされている」
13日、強く訴えたのは、声優業界に関わる3つの団体。問題視していたのは、生成AIに無断で声優たちの声を学習させる「AIカバー」と呼ばれる動画などです。
会見では、音声生成AIの扱い方について、アニメや海外映画の吹き替えで使用しないこと、学習させる際は本人の許諾を得ること、生成物にはAIと明記することなどを求めました。
個人の声に著作権が認められていない中、いま、人気声優たちが自ら“呼びかけ”を行い、話題になっています。声をあげた1人、声優の梶裕貴さん。
「進撃の巨人」でエレン・イェーガー役など 梶裕貴さん
「作品を作ってきた身としては、やっぱり納得できないというか、残念な気持ちはありますね」
ただ、“音声生成AI”そのものを否定しているわけではありません。
梶裕貴さん
「向き合っていかなきゃいけないタイミングが来た」
梶さんが目指すのは、ルールを明確にして、AIと共存する未来。第一歩として、いま取り組んでいるのが、自身の声をAIに学習させた音声合成ソフトの開発です。
梶さん
「本人が公式として出すことによって、無断生成というものが良くないものだという認識に捉えていただけるきっかけにもなるのかなって。(生成AIは)使い方さえ間違えなければ、プラスに働くものばかりだと思う」
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その「音声生成AI」、いま“意外な場所”で広がっています。
『news zero』が出会ったのは、都内に住む北川充生さん(71)。喉にできたがんの治療のため、今年7月に声帯を摘出し声を失いました。そこで使っていたのが、生成AIアプリです。
「いいたいことは自身の声で十分伝えられます」
(スマホの生成AIアプリに)文字を入力して流れてきた声は、生成AIアプリに事前に北川さんの声を学習させ、再現したものです。
下咽頭がんで声帯摘出 北川充生さん(71)
「自分で話すことができないわけですから、自分の声がこれからも残っていくのはうれしいことです」
このAIアプリは民間のIT企業「CoeFont」が開発し、病気などで声を失った人たちに無償でサービスを提供、約650人が利用しています。
実は北川さんは50年以上、夫婦でバンド活動し、ボーカルを担当。
北川充生さん(71)
「(医師から)声帯摘出が必須で、声を失うことを知らされました。悪い夢なら早く覚めてほしいと願いました」
声を失うことには一時、絶望したといいますが、親戚からの紹介で音声生成AIに出会えたことで、前を向けたといいます。
北川充生さん(71)
「自分の声を残せたことは、本当に価値のあることだと思います」
息子・陽介さん
「コミュニケーションとる機会増えた。(音声AIは)1つになれるいいツールなのかなって思います」
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さらにいま、このAIアプリに“ある技術”を追加し、より使いやすくする開発も進んでいます。大阪大学で見せてもらったのは…
AI計測システムが専門 大阪大学大学院・御堂義博特任准教授
「口をパクパク動かすという自然な動きで声が発声できる」
口の動きをカメラで解析することで、話したい言葉を発声できる「読唇AI技術」です。
試しに学生が「手首が痛くて力が入りません」という口の動きをカメラに読ませると、約1秒で解析し再生しました。
現在は患者が病院で使う言葉を中心に開発を進めていますが、将来的には日常会話もできるようにしたいとしています。
大阪大学大学院・御堂義博特任准教授
「日常的に話している動作にできるだけ近い状態で、声を失ってしまった方々がお話しできる未来を実現できれば」
がんで声を失った北川さんも…
北川充生さん(71)
「ぜひ私も使ってみたいです。こんな時代にいられることを、私自身、本当に幸せなことだと思います」
(11月13日放送『news zero』より)