「逃げるのが供養に…」子どもたちに教訓伝える“避難訓練” 東日本大震災から12年
東日本大震災から12年。被災地では震災をしらない子どもたちが増えています。震災の教訓を子どもたちに伝えるため、緊急地震速報が鳴ったら津波情報を待たずに避難することを続けている家族を「news every.」の藤井貴彦キャスターが訪ねました。
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藤井貴彦キャスター(岩手・大槌町、2月25日)
「いや~久しぶりに来ました。内金崎さんのところの自転車屋さん。あっ!」
藤井キャスターが、この自転車店を訪れるのは5年ぶりです。
藤井キャスター
「啓太どうしたの?足?」
啓太くん
「骨折しました。ボールに引っかけて」
双子の内金崎奏斗くんと啓太くん、そして両親の大祐さんと加代子さんは、車の避難ルールがある町に住んでいます。
◆大槌町避難ルール
原則、徒歩 場所によって車避難も許可
車の中を見せてもらいました。
藤井キャスター
「すごい、こんなに充実していますか」
トランクには寝袋や非常食など避難グッズが積まれていました。
藤井キャスター
「震災から12年たって大きな地震に対する意識は内金崎家は変わりました?」
内金崎大祐さん(49)
「変わらず、ずっとそのまま。携帯が(緊急地震速報で)ビャッビャッって鳴りますがね、警報が鳴ったら逃げるんです、夜中でも何でも」
一家は緊急地震速報が鳴ると、津波情報を待たずに避難することを震災後、ずっと続けています。
東日本大震災で大正時代から続く自転車店は被災しました。店の再建も見通せず不安だった時に生まれたのが、双子の奏斗くんと啓太くんです。震災の7か月後に生まれました。
2人は復興する街を見て育ちましたが、津波の記憶はありません。被災した自転車店の周りは一度更地になった後、辺り一帯が2メートル以上かさ上げされ、少し離れた場所に店を再建できたのは震災から7年がたった時でした。
復興が進み、今、街に津波があったことが分かる場所はほとんどありません。双子にとって、避難することは津波を意識し、さらにもしもの時に備えた大事な訓練になっています。
藤井キャスター
「訓練を続けることによって子どもたちの意識も維持できる?」
内金崎大祐さん(49)
「地震きたら逃げるって植え付ける。それは当たり前」
避難を再現してもらいました。
「地震じゃない?」
できるだけ遠くに避難するため、すぐに車に乗り込みます。向かうのは山奥。海から10キロ以上離れた、車で避難が許可されている場所に20分かけて避難しています。
藤井キャスター
「ここまで避難する理由は何ですか?」
内金崎大祐さん(49)
「一番ここが遠い所かな、避難場所の。遠く遠く」
内金崎大祐さん(49)
「震災で亡くなった方とか、行方不明の方って、命を懸けて地震来たら逃げろよと教えてくれたと思うんです。逃げるのが供養になるかなって気持ちもあって」
藤井キャスター
「地震が起きたらどうしますか?」
双子
「逃げます」
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各地で防災を強く意識した復興まちづくりが進みましたが、いまだ、避難場所で困っている所もあります。
あの日、大津波が押し寄せた宮古市。津波は既にあった防潮堤を軽々と越え、多くの命を奪いました。
藤井キャスター
「かなり高い防潮堤がずっとつながっています。宮古湾に向かって防潮堤が街を守っているというのです」
震災後に巨大防潮堤が整備されました。しかし、日本海溝沿いなどで巨大地震が起きた場合、その防潮堤を越え津波が押し寄せる可能性が出てきました。
再び浸水する心配がある津軽石地区で、住民でつくる防災組織の会長をつとめる佐々木睦雄さんに話を聞きました。
佐々木睦雄さん(78)
「(避難所は)あそこの高台なんですけれども」
市が指定する避難場所は、自宅から見える高台にありますが、直線ルートはなく、歩くと15分以上かかるといいます。
佐々木睦雄さん(78)
「避難者にすれば、車を使って行かないと老年者とか要介護者は無理だと思います」
高齢者が多いこの地区では、逃げる時に介助が必要な人もいるといいます。車で5分、着いたのは…
藤井キャスター
「津波避難場所と書いていますけれども、ここから上がっていく?」
佐々木睦雄さん(78)
「ここから上がっていく」
さらに歩いて上らなければなりませんでした。
藤井キャスター
「上ると雪が残っている場所もあるでしょうから、これはお年寄りは上れるんですか?」
佐々木睦雄さん(78)
「大変でしょうね」
雪が残る上り坂を歩くこと5分。避難場所に着きました。佐々木さんの自宅周辺は最悪のケースで5メートルの津波が予想されています。
藤井キャスター
「ここまで来れば水は大丈夫?」
佐々木睦雄さん(78)
「大丈夫ですけど…」
短時間で逃げることができないことを心配していました。
そこで住民同士で話し合い、すぐに逃げることができる場所をつくることにしました。高齢者でも上れるようにコンクリートブロックを置いたりロープを張ったりして、住民自らでつくった道です。
佐々木睦雄さん(78)
「すぐ近くですので」
徒歩で比べると、指定の避難場所の3分の1の時間で避難することができる場所です。震災の経験から1秒でも早く逃げることが大切だといいます。
佐々木睦雄さん(78)
「どこでもいいから近くて自分の命が助かる道を選択しなさい。取りあえずは命が助かるのが一番だと」