×

遺族の父親が裁判で感じた“怒り” 高校生ら死亡の那須雪崩事故…30日に判決

2024年5月29日 20:21
遺族の父親が裁判で感じた“怒り” 高校生ら死亡の那須雪崩事故…30日に判決

7年前、栃木県で登山講習会中の高校生ら8人が雪崩に巻き込まれ死亡した事故の裁判が30日、大きな節目を迎えます。業務上過失致死傷の罪に問われた教師3人に判決が言い渡されます。息子を亡くした父親がいまの胸の内を明かしました。

雪崩事故で息子を亡くした奥勝さん(先月)
「やっぱり悔しさを感じますね、1年しか通えなかったんだと思って。息子は間違いなく学校を好きだったんだろうなと」

充実した毎日が続くはずだった息子の高校生活。雪崩事故は奥勝さんの息子・公輝さんの未来を高校1年生で奪いました。

雪崩事故で息子を亡くした奥勝さん
「応援団と山岳部と勉強と忙しそうに駆け回っていたな」

事故から約7年、公輝さんの名前は慰霊碑に刻まれています。

雪崩事故で息子を亡くした奥勝さん
「こんなところに刻まれちゃうんだという思いもありますし、やっぱり息子は高校にもっと通いたかったんだろうなと」

2017年3月、栃木県那須町。県立大田原高校の生徒7人と引率教師1人が登山講習会中に雪崩に巻き込まれ死亡しました。

遺族の1人で父親の勝さんは、事故に関わることを8冊のノートに書き残してきました。

雪崩事故で息子を亡くした奥勝さん
「(午前)10時20分に担任から電話があったんですね。事故があったのは8時43分で、電話あったときはもうすでに終わってるんですよね。本当に悔しいですよね…」

学校の管理下で起きた事故で講習会の責任者だった教師や県、高体連などには責任がないのか。教育現場での事故として「教訓」を正しく伝えたい。

こうした思いなどから、県や高体連などを相手に民事調停を行うも不成立に。県などを相手取った民事訴訟では、県の過失は認める一方、教師個人の賠償責任は認めませんでした。

雪崩事故で息子を亡くした奥勝さん
「本当に息子のことを考えていたら、いつのまにか裁判のことに変わっているというのは多かった」

休日返上で裁判の準備が続く中、3人の教師を相手に刑事裁判が始まりました。

そして、初公判で3人の教師から出た言葉は…

教師3人
「無罪を主張します」

雪崩の発生を予見できなかったと主張。中には謝罪をする教師もいましたが…

当時の勝さんのノートには「『お詫びした』←何に対して!!」「何をもって無罪だと言っている?」「血が沸き立つような怒りを感じる」などとつづられていました。

雪崩事故で息子を亡くした奥勝さん
「人生の中でこれほど怒った、怒りを感じたことはない。自分たちは何も悪いことはしていない。でも『すみませんでした』って何ですかそれって思います」

裁判の争点は雪崩が予見できたかどうか。検察側は「3人は登山経験が豊富で雪崩発生の危険があると知っていた」などと指摘。一方、弁護側は「安全な訓練区域を定め、その範囲で必要な情報は収集していて、事故は予見できなかった」などと主張。

被告人質問では教師の1人が…

「(生徒から)先に進みたいと言われた」
「生徒たちに押し切られた」

息子の公輝さんがいた「1班は崩壊していた」と主張。

雪崩事故で息子を亡くした奥勝さん
「うちの息子のこと知っているよね、その上で崩壊しているとまで言うのか」

3人の教師が“事故を生徒のせいにしている”と感じる場面もあったといいます。

1年半に及ぶ裁判は、検察側が禁錮4年を求刑。弁護側が無罪を主張し結審。

勝さんは、3人の教師への実刑判決を望んでいます。

雪崩事故で息子を亡くした奥勝さん
「最後のそこの結論に至るための助けになるよう私は動いてきたつもりなので、ようやくその集大成が出るんだなという安堵(あんど)感みたいなものを感じている」

その上で、期待するのは教育現場での事故としての「教訓」が残せる判決。

「『那須雪崩事故ではこんな判決が出たな』と思い出していただき、むちゃはしない・安全確認をすることが学校現場に根付くことを期待しています」

勝さんが書き続けてきたノートには、どんな結果や思いがつづられるのか。30日午後、判決が言い渡されます。