【#みんなのギモン】「生成AIが教師を救う?『チャットGPT』で働き方改革も」
■仕事の負担…「体感では10分の1に」
男性教師「体感では10分の1ぐらいの時間で仕事ができています」
仕事の効率アップと負担軽減を実感。では、『チャットGPT』を使って保護者との懇談会の日程をどのように作成したのでしょうか?その過程を見てみるとー。
男性教師のチャットGPTへの指示内容
「表に(保護者)26人がそれぞれ希望する日時のうち、どこか1箇所のみに名前を表示してください」
表にまとめるよう指示するとともに、保護者の名前(仮名)や希望日時などを入力。
すると。
『チャットGPT』の回答「26人の名前をスケジュールテーブルに配置してみます」
わずかな時間で日程表のたたき台が提示されました。これまでは保護者の希望を1件1件、希望日時が被らないように考えながら入力していたため30分ほどかけて行っていた仕事でした。
男性教師「いまは自動でたたき台を作成してくれるので時短につながっています」
男性教師はまた、国語のテストの採点に『チャットGPT』を活用できないか試行錯誤しています。記述式問題の模範解答案を作らせ、採点基準の参考にしているといいます。
文科省が去年行った「教員勤務実態調査(速報値)」によると、小中学校の教師が感じる負担感は、「授業」や「生徒指導」などよりも、テストの採点などの「成績処理」のほうが高いという結果が出ています。負担感が大きい「成績処理」に活用するなど、生成AIの導入は教師の働き方改革につながるのでしょうか?
男性教師「かなり期待感はあります。教師の仕事は正直かなり多いので。定時内で仕事を終えることはほとんど不可能だと思います。心の病にかかる人も多いし自分もそういう経験をしました。周りの先生もみんな忙しそうなのでなかなか自分の悩みを相談しづらい状況がある。AIには業務量の軽減だけでなく、悩みを相談できるよきパートナーとしても期待しています」
■「チャットGPT」で練習メニュー
生成AIを使った教師の働き方改革は部活動でも。
東京・品川区にある私立「品川翔英高校」。屋上でノックを打つのは創部2年目の野球部を率いる石田寛監督(35)です。
石田寛監督「練習メニューは『チャットGPT』をたたき台にして作っています。4月から使っていますが仕事量はだいぶ減りました。チャットGPTがない時は全部ゼロからつくっていたので」
以前は毎日の練習メニューづくりだけで20~30分。それが今では5分程度にまで短縮できるようになったといいます。
■「練習メニューを考えてください」
こちらは石田監督から『チャットGPT』への指示文。
「練習メニューを考えてください」と指示したうえで、グラウンドが工事で使えない状況や、学校にある設備、練習時間、部員数などの条件を入力すると…
『チャットGPT』からすぐさま回答が。部員を5つのグループに分けて、10~20分単位で区切られた練習メニューをローテーションさせるという、限られた環境の中でも効率よく練習できるメニューが示されました。
ただ、それをそのまま使うわけではありません。
石田寛監督「GPTは補助的な道具。内容もまずは疑ってみています。あくまでたたき台ですし間違いもあると思うので必ず自分で確認したうえで最終的な練習メニューにしています」
主将の髙木英寿選手は、「監督はいつも忙しそうにしているので、AIで仕事がラクになったのかは正直分かりません」と苦笑い。それでもその効果について、「プラスアルファの練習ができるようになった。練習のマンネリ化がなくなった」と前向きな声が聞かれました。
■「先生が元気じゃないと」
『チャットGPT』を使い始めて3か月。より効率的に仕事ができるようになったと感じています。
石田寛監督「チャットGPTのおかげで毎日1時間は使える時間が増えました。生活指導の担当として、これまで以上に生徒たちの登校指導や授業巡回の時間にまわせるようになりました」
学校では独自に生成AIのガイドラインを制定。
石田寛監督「校長も生成AIの有効活用を推奨していて、私たちにも、日が明るいうちに帰宅するよう話しています。先生が元気じゃないと生徒を元気にできないと」
■文科省「教師の働き方改革の一環として活用も」
文科省は今回のガイドラインで生成AIについて「教師の働き方改革の一環として活用することが考えられる」と指摘。
一方で個人情報や機密情報の保護に細心の注意を払うことや、誤った可能性のある回答も少なくないことなどからあくまで「たたき台」としての利用であり、最後は教師自らが真偽をチェックし、推こう・完成させる必要があるとしています。
ガイドライン作成にあたり文科省のヒアリングに協力した京都橘大学児童教育学科・池田修教授は自身の経験も踏まえ「教師の負担軽減につながる」との期待を寄せます。
池田修教授「例えば京都に遠足に行くとします。教師はまず観光地や名所を調べなければいけない。何年生の遠足で季節はいつなのか。それが決まったら今度はタイムスケジュール。どこをどういう順番でどのくらいの時間で回るのか。そうしてできた計画をもとに旅行代理店に連絡して、実際のスケジュールを組んでいく。負担は大きいし経験のない教師には簡単にはできない。それがAIを使えば7~8割はやってくれる。仕事の効率を考えると本当に大きいこと」
池田教授は、生成AIの活用は過酷な教育現場を改革する本丸になると期待しています。
池田修教授「教師の働き方はよくブラックだと言われるが、生成AIによって負担の軽減につながる可能性は高い。正直デメリットは、ほとんど思いつかない。ネットやスマホのように今後当たり前になるのではないか。心配する声も聞かれるが、大切なのはまず使い方を知ること。使い方を知ったうえで『使う・使わない』は各自判断すればいい。「今回のガイドラインで私が一番素晴らしいと思ったのは、タイトルを『暫定的なガイドライン』としているところ。注意点はあるけどまず使ってみよう、使いながらよりよい活用法を考えていこうという姿勢を感じる。早く効率的に仕事をするうえできっと教師の役に立つはずです」
生成AIによる教師の働き方改革。負担軽減のための工夫が各地で始まっています。