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どうなる日本の最低賃金 世界的に見てかなり低い「1000円」超えるか? 審議会で議論大詰め

2023年7月26日 22:14
どうなる日本の最低賃金 世界的に見てかなり低い「1000円」超えるか? 審議会で議論大詰め

26日午後1時から厚生労働省の「最低賃金」に関する審議会「中央最低賃金審議会」が都内で行われています。経団連など経営側の代表と、労働組合など労働者の代表が出席、まさに両者ガチンコで「最低賃金」の数字をめぐる議論が続いています。

この会議で決まる金額が、全国各地の最低賃金の「目安」となります。正規、非正規、アルバイト、外国人の労働者まで、すべての働く人に関わるのが最低賃金です。

●“大台突破”なるか?
●理想の最低賃金いくら?

以上のポイントを中心に詳しく解説します。

■最低賃金引き上げなるか… 岸田総理も言及「時給1000円」 実現しても「月給15万円」

26日の審議会で、注目されている数字があります。それが全国平均で「時給1000円」です。

この数字は政府の基本方針「骨太の方針」でも明記され、岸田総理も繰り返し「1000円超え」について言及しています。

現在の最低賃金の全国平均は「時給961円」。1000円を達成するには「あと39円」の賃上げ、史上初の4%という大幅な引き上げが必要です。

「時給1000円」を「月給」に換算すると、いくらくらいになるでしょうか。

労働時間を月150時間で換算すると「月給15万円」です。いまの日本の物価を考えると、疑問を感じる金額です。

■世界的に見てかなり低い 日本の最低賃金 韓国にも抜かれ…

「時給1000円」は、実は世界的に見ても、かなり低い数字です。

先進国と比較すると、日本は最低レベルです。最も高いオーストラリアは1000円どころか2000円を超えています。ドイツ、イギリス、フランスなどG7の国も1700円前後という高水準です。韓国も1023円と、日本は韓国にも抜かれてしまっています。(2023年7月時点 全労連調べ)

■時給で働く人にとって切実な最低賃金 アップしても物価高に追いつかない

最低賃金アップを切実に望んでいる女性に話を聞きました。都内のスーパーで13年間、非正規社員として働いている30代、一人暮らしのサイトウさん(仮名)です。スーパーで買い物をするサイトウさんに同行しました。

サイトウさん
「何か安い物があればと思って」

13年スーパーで働いてきたそうですが、ことし春の時点では時給1092円。東京都の最低賃金は1072円なので、最低ラインぎりぎりの水準で働いてきました。

サイトウさん
「とにかく(値札が)赤字の物を選びますよね。なるたけ安めに済ませたい」

――今は何で迷ってる?

サイトウさん
「入り数です。やっぱりちょっと多いですよね。10円違うとはいえ4パックあれば、こっちの方がいいのかな」

――10円の差は大きいですよね。

サイトウさん
「大きいですよ。それでこの枚数入っていればって思えば」

サイトウさんはことしの春、勤め先のスーパーと交渉して、時給を200円ほど引き上げてもらうことができました。ただ、ことしの夏、これだけ暑い中でも「エアコンをつけるのも躊躇する」というお話もされていました。

サイトウさん
「やっぱり(物価に賃金が)追いついていない状態なので、(時給が)上がれば(賃金も)上がる形にしてもらわないと、時給で働いてる人たちはたぶん大変だと思いますね」

■地方から人材流出も… 最低賃金が「地域格差」を生む現実

時給で働く人にとって、最低賃金のアップは切実な問題です。そこで、次に考えてみたいポイントが「理想の最低賃金がいくらぐらいなのか」ということです。

先ほど、最低賃金の全国平均は「時給961円」とお伝えしましたが、この最低賃金、実は都道府県別に決められています。

最高は東京の「時給1072円」。これに対して最低は、青森、秋田、愛媛、高知、九州5県と沖縄の計10県で「時給853円」。「219円」の格差があります。

こうした「地域格差」が、地方から都市部への人材流出を招いているという指摘もあります。

■全労連は「時給1500円」を主張 経団連は“中小企業への影響”を懸念

では、理想の最低賃金とは、いったいいくらなのでしょうか? 働く側、労働組合の全国組織である「全国労働組合総連合(全労連)」がかねてから主張しているのが「時給1500円」です。

これでも、月給に換算すると「22万5000円」(時給1500円×150時間)です。ただし、これはあくまで労働者側の試算です。

一方、経団連など給料を出す経営側の主張としては、「今年度の最低賃金を引き上げることの必要性は理解している」としながらも「大幅な引き上げとなれば、地方の中小企業を中心にコストが増えて耐えられなくなり、廃業や倒産が増える」という懸念があるということです。

■地方・中小企業の生産性を上げる支援が必須 「自動化」「IT化」の即効性に期待

では、現実的にはどうすればいいのでしょうか? 経済評論家の加谷珪一さんに聞きました。

加谷さんは、最低賃金を上げるメリットとして「低賃金で生活が大変だった人への支援、社会保障的な効果がある」といい、一方のデメリットとしては「地方企業の経営は苦しくなる」といいます。

地方企業の苦しさについて加谷さんは「政府側の支援で乗り越える努力が必要。特に、即効性があるのは『自動化』『IT化』で、地方の企業の生産性を上げていく支援」だといいます。

   ◇

最低賃金の目安が1000円を超えるかは、今まさに行われている審議会で決まります。日本の経済を元気にする、実りある議論を望みたいと思います。

(2023年7月26日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)
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