記録的豪雨から3か月 「この場所で再開したい」 みのう山荘で続く復旧作業
2023年の夏、九州北部を襲った記録的な大雨から、10日で3か月です。被害が大きかった福岡県久留米市にある人気の温泉施設では、今も復旧作業が続いています。同じ場所で元通り営業を再開できるのか、新たな課題も見えてきています。
■みのう山荘・安井那称子さん
「(客から)復帰を待っていますという声が多くて…。長い間愛されているみのう山荘だったんだなと知ることができてありがたい。」
九州北部が大雨に襲われた日から4日後、被災地で私たちの取材に応えてくれたのは久留米市の『みのう山荘』の店長、安井那称子さん(28)です。
みのう山荘は筑後平野を一望しながら入浴できる温泉施設で、20年にわたり多くの人に愛されてきました。
その癒しの場はあの日、一瞬にして失われました。
安井さんは今、みのう山荘の姉妹店である大分県日田市の温泉施設で働いています。よりよいサービスを客に提供したいという思いは変わりません。
■安井さん
「ここの温泉水でゆでると、木綿豆腐も絹豆腐みたいに軟らかくなって、お湯も白濁して豆乳みたいで。名物にする予定。」
ただ、常に頭にあるのは、みのう山荘のことです。
■安井さん
「毎日考えますね。スタッフ全員がみのう山荘のことが大好きで、絶対に復興したいという思いはみんなあるので、毎日思っている。」
仕事が休みだったこの日、安井さんはみのう山荘を訪れていました。
大雨の被害から3か月たち、復旧は少しずつ進んでいます。
■安井さん
「通路に全部土砂が入ってきていたので、こちら側には来られなかった。重機が入れないので、手作業でやってもらった。」
災害直後は土砂に埋もれ、人が通れる場所もほとんどありませんでした。
重機が入れず、どうやって土砂を取り除けばいいか途方に暮れていたとき、力になったのは連日訪れたボランティアの人たちでした。
これまでに協力してくれた人は100人を超えます。
少しずつ土砂が取り除かれていくと、次第にあらわになったのは浴槽への被害です。
■安井さん
「岩が見えているところが男湯の露天風呂、脱衣場、内湯、こちらが女湯の露天風呂、一番奥が内湯。」
施設を再建するにはこれらの解体作業が必要ですが、莫大な費用がかかります。
もともと商業施設への行政からの支援がなかったため、再建は厳しいと考えられていました。
しかし8月、久留米市は、全壊した建物20棟の解体費用を補助することを決定しました。みのう山荘の浴場の一部も全壊判定を受け、解体作業が行われることになりました。
再建に向けて希望の光が見えてきましたが、安井さんには気がかりなことがあります。
■安井さん
「一番は場所(が心配)。どれだけ行政が動いてくれてきれいになっても、ここが安全で建築許可が下りなければ、ここでやることはできないので、そこが一番不安。」
甚大な被害があったこの場所で、これまで通り営業することができるのか、そのための建築許可が下りるかどうかはまだ分かりません。
■安井さん
「この場所でやることに意味があると思っている。20年間みのう山荘として営業してきて、この場所を愛してくれているお客様たちがたくさんいるし、この辺りでもこれだけ筑後平野を一望しながら入れる温泉は本当にほかにないと思っているので。」
大雨から3か月がたち復旧は進んでいるものの、新たな課題も見え、再建への道は先行き不透明です。
それでも決して諦めず、安井さんはこの場所での営業再開を目指して前を向いています。