【熊本地震から8年】防災井戸に注目 断水でも生活用水を供給 福岡で井戸の調査に取り組む自治体も
最大震度7を2度も観測した熊本地震の本震から8年です。全国各地で地震が相次ぐなか、必ず課題になるのが「水の確保」です。福岡県内では、災害に備え「井戸」に注目する自治体も出てきています。
16日、福岡県遠賀町にある遠賀中学校を訪ねました。
■中村フィールドキャスター
「こちらが中学校の体育館で、すぐそばにポンプがあります。 看板を見てみますと、みんなのふれあい井戸、災害時の生活用水と書いてあります。」
ポンプ式の井戸が設置されていました。
■遠賀町 防災安全係・古野剛理 係長
「電気が通っている通っていないは別として、そのまま使えます。」
これは災害時、断水した時に上水道が復旧するまでの間、井戸水を応急用の水として使うもので「防災井戸」と呼ばれています。
飲み水としては使えませんが、洗濯やトイレなどの生活用水として利用できます。
■中村フィールドキャスター
「体重をぐっとかければ出せるくらいの力加減でいけます。身長がある程度ある子だったら使えると思います。」
この中学校は指定避難所になっていることから、災害時には避難者の重要な生活用水となります。
■古野係長
「トイレ問題をはじめとして、衛生的な問題も含め、生活用水の確保のためにも、こういった防災井戸の重要性は今後ますます高まるものと考えています。」
水は飲むだけではなく、生活のためにも欠かせません。最大震度7を2度も観測した8年前の熊本地震では、熊本県内で一時、最大43万2000戸が断水しました。
そこで、注目されたのが「防災井戸」です。
地震のあと、地域の給水拠点として活用できるよう企業などが「防災井戸」の設置を進めてきました。今では熊本市だけでも96か所の井戸が「防災井戸」として登録されています。
遠賀町では、井戸に着目した新たな動きもあります。
■古野係長
「こちらが井戸です。井戸の入り口になっていて、この手のものは手押しのポンプを使います。」
農業が盛んで井戸を利用している人が多いという地域の特性を生かし、災害時にも使える「井戸」の調査を始めました。
■古野係長
「ことし1月に発生した能登半地震で生活用水の不足というのが問題になったので調査をしたところです。」
調査はことし2月から始め、すでに41か所、見つかっています。日頃使っていない井戸や、個人宅のものなどをまずは把握し、所有者の了承が得られれば生かしていきたいとしています。
福岡市に本社を置くこちらの会社は、水処理システム装置を手がけます。
■ゼオライト・河村貴博 取締役
「こちらが井戸水をくみ上げて、飲料化までするシステムです。」
これは、飲み水にならない井戸水から不純物を取り除き浄化する装置です。最終的には飲み水として使うことができます。
■河村取締役
「災害対策で、水道が来なくなったときにバックアップとして井戸水を供給する目的です。」
県内では病院や商業施設、宿泊施設での導入が多く、福岡を中心に全国で広がっているといいます。熊本地震の際、断水した地域でこの装置が活用され、水の供給が行われました。
いつ起こるか分からない地震を見据え、備えの一つとして「井戸水」の活用がますます広がりそうです。
VTRにも登場した水処理システム装置を手がける会社によりますと、福岡県内にも、災害時に使うことも想定して井戸の設置を依頼する病院や商業施設があるということです。
福岡市での動きについてですが、市に聞いたところ「防災井戸」の数は把握していないということです。
ただ、市は別の方法で災害時の水を確保を進めています。災害時に人が集まりやすい施設の配水管の耐震化を進めています。例えば学校や公園、病院などで、今年度中には256施設の工事が終わる予定です。震度6強程度の地震にも耐えられる想定で、工事が進められています。