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【核のごみ最終処分場】玄海町長「お金目的ではない」文献調査受け入れに葛藤も 請願採択から2週間で決断 佐賀

2024年5月10日 18:41
【核のごみ最終処分場】玄海町長「お金目的ではない」文献調査受け入れに葛藤も 請願採択から2週間で決断 佐賀
脇山町長「議論を喚起する一石に」

原発から出るいわゆる「核のごみ」の最終処分場選定を巡10日、決断が下されました。佐賀県の玄海町長は、調査の第1段階となる「文献調査」について、受け入れることを表明しました。

■玄海町・脇山伸太郎町長
「これまでの町議会での意見や、議論、加えて国からの要請を熟考した結果、文献調査を受け入れる決断に至りました。」

玄海町議会は10日午前10時から非公開で全員協議会を開き、脇山伸太郎町長は、原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場を選ぶための文献調査を受け入れることを表明しました。

議会の前では市民団体のおよそ20人が反対の声を上げました。

脇山町長は「なし崩し的に最終処分場になることはないと考えている」と理解を求めた上で「国民的議論を喚起する一石になれば」と強調しました。

文献調査は北海道の寿都町(すっつちょう)と神恵内村(かもえないむら)に続き、玄海町が全国3例目で、原発が立地する自治体では初めてです。

文献調査の受け入れを表明した玄海町の脇山町長の記者会見は、多くの報道陣が詰めかけたなか1時間ほど行われました。

脇山町長は「思い悩んだところもある」と決断に至るまでの葛藤についても語りました。

脇山町長は10日午前11時半から記者会見に臨みました。

■玄海町・脇山伸太郎町長
「原子力発電事業に長年携わり、様々な形で国に貢献してきた立地自治体がさらに文献調査に協力することは、非常に重い決断であります。玄海町での取り組みが日本社会にとって欠かせない最終処分事業への関心が高まるのにつながり、国民的議論を喚起する一石となればとの思いであります。」

玄海町議会では4月、文献調査への応募を求める請願が賛成多数で採択されていて、5月1日には、経済産業省が町長に調査の実施を申し入れていました。

文献調査を受け入れた自治体には、最大で20億円が交付されます。反対派からは“金目当て”との声もあがっていましたが、町長はこれを強く否定しました。

■脇山町長
「お金目的で文献調査を受け入れるものではありません。交付金のこと考えていなかったので、国ともそんな相談もしておりません。だから、もし留保できるようだったら国のほうに留保して、ただ、もらわないって形をとると次に手を挙げるところが、玄海町がもらわなかったから自分たちももらえないという流れを作ってしまったらいけないなというところは感じています。」

また、決断に至るまでの多くの葛藤についても語りました。

■脇山町長
「やはり、住民の代表である議会の議決というのは本当に重いものだと思っておりました。板挟みで本当に、どうするべきかなっていうので、思い悩んだところもあります。」

■元木フィールドキャスター
「町長の決断を町の人はどう受け止めたのでしょうか。」

■町民
「仕方ないと思う。原発を造らせた以上、後の責任まで玄海町が負わないといけない。」
「私は反対ですね。若い人が住まなくなると大変だから。」

議会棟の前に集まり「決断が早すぎる」と声を上げたのは、原発に反対する市民グループです。

■玄海原発反対!からつ事務所・北川浩一さん
「拙速で、住民の安心・安全を無視した理不尽な決断だと思う。文献調査が第2段階に進まないように、周辺住民も巻き込んだかたちで考えていかなくては。」

一方、玄海町議会で調査の受け入れに最後まで反対していた議員は、町のイメージダウンを懸念しています。

■玄海町・前川和民 議員
「町民の方もまだ十分に理解されていない中での決断だった。よそから見ると交付金目当てという見方もされるので、玄海町のイメージがあまり悪くなるようになればいいなと思っています。」

玄海町の調査受け入れ表明を受け、佐賀県の山口知事は「かねてから一貫して申し上げているとおり、佐賀県として新たな負担を受け入れる考えはありません」とコメントし、改めて反対の姿勢を示しました。

また、福岡県の服部知事は「本県は玄海町から半径30キロメートル圏内の自治体がある。安全・安心を確保する観点からもしっかりと詳細に調査していただきたい」としてます。

そして、調査を申し入れた斎藤経産相が午後4時半すぎ、記者団の取材に応じました。

■斎藤経産相
「文献調査受け入れの判断をいただいたことに心から敬意と感謝を申し上げたい。最終処分という国家的な課題について社会全体で議論を深めて行く上で、非常に重要な一石を投じるものである。」

そのうえで、「この議論が全国で深まるように情報提供をしていきたい」と述べました。

改めて“核のごみ”の最終処分場が選ばれるまでの流れを確認します。建設地が決まるまでには3つの調査が必要です。

▽第1段階はデータなどの資料を元に調べる「文献調査」で2年程度かかるとされています。

▽第2段階はボーリングで地質などを調べる「概要調査」で4年程度。

▽第3段階が地下施設を実際に作って調べる「精密調査」で14年程度。

つまり、建設地が決定するまでには20年程度かかることになります。

また、調査に入ると交付金があります。文献調査は最大20億円、概要調査は最大70億円が国から交付されます。

さらにポイントは「概要調査」以降は、市町村長に加えて知事の同意がないと先に進むことはできません。

そして、文献調査はいつ始まるのでしょうか。玄海町と同じく国からの申し入れを受け入れた北海道・神恵内村(かもえないむら)では、およそ1か月後に始まりました。北海道のケースがそのまま当てはまるかは分かりませんが、早ければ6月にも文献調査が始まる可能性があります。

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