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「2024年問題」にどう対応? 路線バスの増便を目指す実証実験 人員不足解消へ!バス会社の取り組みを紹介 【長島カイセツ・テレビ派】 

2023年12月4日 16:27
「2024年問題」にどう対応? 路線バスの増便を目指す実証実験 人員不足解消へ!バス会社の取り組みを紹介 【長島カイセツ・テレビ派】 

広島テレビの長島清隆解説委員が、注目のニュースを分かりやすく分析・説明する「長島カイセツ」です。今回は、深刻さを増すバス運転手の人員不足や、減便について考えます。

広島市内を走る路線バスは、運転手不足や利用者の減少で、路線の存続さえ危ぶまれています。広島市が、同じ路線を運行するバス会社2社による共同運営の実証実験を、12月1日から始めました。広島市中心部に向かう「広島バス」と「広電バス」の運行が、重複した路線を一本化して、余裕が出来たバスを増便にあてる狙いです。

この実証試験では、安佐北区を出発した「広島バス」が、東区温品にある「広電バス」の停留所に到着。そこで乗客は「広電バス」に乗り換え、広島市中心部へと向かいます。そして、乗客を降ろした「広島バス」は、安佐北区のバス停に折り返します。この取り組みで、安佐北区から温品までの路線は往復5便を増便出来ます。

■利用者は…
「利用したい。助かるかな。」
「昼までは(便が)あるけど、昼からは全然なかった。続けてほしいです。」

■広島市公共交通政策部 森田 環 課長
「(バス)事業社が連携して、同じバス停をつかって乗り継ぎができる形で、解決することができました。バス事業の再構築を、着実に進めていきたいと考えています。」

この試みは、朝と夕方の通勤時間以外の時間帯に実施し、広島市佐伯区(地毛から東観音台、薬師が丘)での同様の実証実験を含め、12月28日まで続けます。

競合するバス会社の重複している路線を…?

「小河原車庫」から「広島バスセンター」までの間は、広島バスが運行しています。しかし、このうち「温品4丁目」から「バスセンター」までの区間は、広島電鉄と重複していました。

そこで、重複しているこの区間は、日中は、広島電鉄のバスに一本化します。広島バスの利用者の一部は、乗り換えが必要になりますが、広島バスは、浮いた車両を小河原車庫から温品4丁目で運行させることで、この区間の便数が可能になります。

競合するバス会社の連携する背景は、深刻な運転手不足

広島県バス協会によると、ピーク時の2016年には、3521人の運転手が在籍していました。しかし、2023年は、2870人にまで減ったと推定されています。理由は、定年退職などによって引退したり、コロナ禍による利用客減少に伴い、転職したドライバーが戻ってこないなどのためです。

ここで「2024年問題」です。2024年からは、ドライバーの1日の拘束時間の上限が、16時間から15時間に減るため、人数に換算すると、6パーセント不足するとされます。2024年度には、ピーク時の2016年度に比べて、862人減少すると推定しています。

若い運転手を確保する取り組みとは?

広島交通では、高卒の採用を積極的に始めています。その背景にあるのが、「2024年問題」です。2024年4月から、運転手の時間外労働の規制が強化されるため、人手不足の深刻化が懸念されています。そこで会社は、人材を確保するために、運転免許の取得も支援しています。

日常の移動手段として欠かせないバスのハンドルを握る、寺田琉憧(てらだ・るどう)さんは20歳です。高校を卒業後、「広島交通」に入社し、2022年、あこがれのバス運転手になりました。

■広島交通運転手 寺田琉憧(てらだ・るどう)さん
「会社の方ので、貸付金という形で(大型2種免許取得の)お金を全面的に出してくれる。ある程度の勤務期間働くと、(大型2種免許取得の)お金は返さなくていい。免除という形でお金を出してもらった。」

入社2年目の森田真(もりた・しん)さんは、19歳です。現在研修中の森田さんは、バスの運転歴30年余りのベテランの指導を受けながら、出発前の車体を点検していました。

■広島交通運転手 森田真(もりた・しん)さん
「一周回って、エンジンルームを見て、ベルトに異常が無いか、電気系統に異常がないか確認しています。」

指導するベテラン社員も、若い人材に期待を寄せています。

■広島交通 千早哲哉さん(62)
「全国的にみても、バス会社の乗務員不足が深刻な問題。(高卒入社)うれしいですね。会社の平均年齢が50歳過ぎている。やっぱり若い人の力がバス業界、大事になってくると思います。」

19歳の森田さんが乗務するバスには、ベテラン社員が同乗します。ベテラン社員が見守る中、乗客を乗せた大型バスを冷静、かつ安全に運転できました。

■広島交通運転手 森田真(もりた・しん)さん
「とにかく無事にお客様を目的地に送り届けて 帰ってくる」

■広島交通 千早哲哉さん(62)
「今まで教習でやってきたことを忘れず、自己流がでないように、今まで通りやっていけば大丈夫。がんばって、やってください。」

森田さんは、年末からは1人で運転することになります。人手不足解消の切り札としての責任は重大です。

「2024年問題」にどう対応していくか、様々なアイデアが出ています。運転手の待遇改善をして、運転手になりたいという人を増やすのは、もちろん大切です。法律の改正なども必要になりますが、外国人材の活用も一つの手段です。また、今回の実験のような路線の効率化、さらに、技術革新で自動運転という声も上がっています。

これらは、運賃の値上げが必要だったり、利用者の理解が必要なものもあります。今回の実証実験でも、乗り換えなどの一定の不便さがあります。「2024年問題」は、事業者の努力だけでなく、利用者の協力もなければ解決できない問題といえそうです。

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