【密着】急増するインターネット犯罪を取り締まるスペシャリスト 広島県警サイバー捜査官
今や、私たちの生活に欠かせないインターネットですが、関連する犯罪が急増しています。ネットを使った「サイバー犯罪」。それを取り締まる広島県警のスペシャリストを取材しました。
広島市内で、ネット犯罪を身近に感じるかどうかを聞いてみると、「今のところ感じたことはない。」という返答がありました。しかし、「メールで荷物が届きますとか、あなたの支払いが終わってませんとか、そういう感じ。」「メールは来るがスルーですね。怪しいと思うので何もしない。」と、見知らぬ人からメールが届いた経験があるようです。今、企業や金融機関などを装ったメールで、クレジットカード番号などを入力させ、預金を盗む犯罪が急増しています。2023年、被害者が不正に送金された総額は、全国でおよそ87億円に上り、過去最多となりました。
広島県警は3年前から「特別サイバー捜査官」を置き、インターネットを悪用した犯罪の中で、特に複雑な事案に当たらせています。新たに任命された大原巡査部長は、合格率わずか5.9パーセントの上級試験に合格しました。
■広島県警サイバー犯罪対策課 大原成一巡査部長
「特別サイバー捜査官として、県警を引っ張って行く人材になれるように、努力していきたいと思っております。」
機密情報を扱う解析室には、限られた捜査員しか入ることができません。今回初めて、カメラが入ることが許されました。特別サイバー捜査官は、犯罪に使われた携帯電話やパソコンの解析を行い、証拠をつきとめます。
■広島県警サイバー犯罪対策課 大原成一巡査部長
「英数字ばかりなので目は疲れるが、これが解析の基本。ここから読み解いていくのを意識してやっている。」
この日、大原さんは盗撮事件の解析依頼を受けました。
■広島県警サイバー犯罪対策課 大原成一巡査部長
「ちなみにこの事件の盗撮は、普通のカメラアプリで撮影したんですかね?」
■署員
「いえ、無音カメラのアプリです。」
大原さんは念入りに、当時の状況を確認します。
■広島県警サイバー犯罪対策課 大原成一巡査部長
「事件の証拠は、犯人に裁判で刑を償ってもらうためにも重要な証拠なので、大変だがやりがいを感じて仕事をしている。」
小さな見落としも許されない緊張感。それを解きほぐすことができるのは、仲間と過ごすひと時と、大原さんの妻がつくってくれる愛妻弁当です。
■広島県警サイバー犯罪対策課 大原成一巡査部長
「ありがたいです。」
■広島県警サイバー犯罪対策課 杉山健太郎 警部補
「歴代もったスタッフ(部下)の中でピカイチ優秀な人間で、できることなら、僕が退職するまでずっと部下でいてほしい。」
大原さんは、幼いころから警察官を目指してきました。
■広島県警サイバー犯罪対策課 大原成一巡査部長
「大人から子どもまで、インターネットで他者と交流できるようになってきた時代なので、サイバー犯罪対策課に入りたいなというふうには思っていた。」
夢を叶えた大原さん。今、戦っているのは「ランサムウェア」と呼ばれる企業を狙ったサイバー攻撃です。2024年2月、広島市に本社をおく「イズミ」がこの攻撃を受け、システム障害が発生し、配達サービスなどの一部が使えなくなりました。「ランサムウェア」攻撃を受けると、データが暗号化されてしまいます。その復旧を条件に犯人が求めるのが身代金です。
■広島県警サイバー犯罪対策課 大原成一巡査部長
「警察としては、絶対に身代金は払わないようにというふうにお願いしている。不審な動きをしている箇所を見つけるのが仕事。」
国内だけでなく、海外にも及ぶ解析捜査は、長いものでは数年かかるといいます。
■広島県警サイバー犯罪対策課 大原成一巡査部長
「今後、もっと高度な犯罪が増えてくると思うので、犯人の一歩上を行く知識を常に身につけていくことができたらと、勉強を今後も継続していきたいと思います。」
技術が発展し、便利になる一方で巧妙化する犯罪。被害を一つでも減らすため、大原さんは今日もネット空間で目を光らせています。
【2024年4月15日放送】