旧陸軍が開発進めた薬剤「虹波」菊池恵楓園の臨床試験で入所者9人が死亡 中間報告
菊池恵楓園歴史資料館に残されていた記録映画にハンセン病による症状のためか、握力が低下しうまく食事ができない男性が映っています。
しかし、次の場面では茶碗や箸を器用に使いこなしています。
この記録映画は戦時中の1943年、「虹波」と呼ばれる薬剤の臨床試験に携わった医師らが旧陸軍に報告するために制作しました。実はこの映画、虹波の効果を実際より大きく偽った疑いがあるとされています。
「虹波」は写真の撮影や焼き付けに使う感光材を合成した薬剤です。心臓の機能を高める効果が期待されるとして、戦時中、国民の体質向上を目的に旧陸軍が研究に関わりました。菊池恵楓園では、ハンセン病の治療名目で1942年12月から1947年6月まで臨床試験が行われました。
菊池恵楓園歴史資料館は、入所者自治会の依頼を受けて去年4月から「虹波」の臨床試験に関する園内の資料などを調べていました。24日の中間報告によりますと、少なくとも入所者472人に内服や注射、吸入などの方法で投与されたとみられ、22.2%に発熱や倦怠感、めまいなどの副作用が出たことがわかりました。そして臨床試験を受けた9人が死亡し、そのうち2人が虹波の投与との因果関係が疑われるとしています。ほかにも370人が臨床試験に参加した可能性があるということです。
それでも臨床試験が続けられた背景には何があったのでしょうか。
■菊池恵楓園歴史資料館 原田寿真学芸員
「入所者は療養所の外での生活基盤や社会関係がはく奪されている。入所者が療養所の中で安寧な生活を送るためには、療養所の方針に対して基本的に従わざるをえなかった」
歴史資料館は今後、倫理上の問題についても明らかにする考えです。