服役後の再審で無罪「松橋事件」国と熊本県に賠償求めた訴訟が結審 判決は来年3月
裁判を起こしているのは、2020年に87歳で亡くなった宮田浩喜さんの遺族です。
宮田さんは、1985年に現在の宇城市松橋町で男性が殺害された「松橋事件」で犯人とされ、懲役13年の判決を受け服役しました。しかし、証拠とされたのは自白のみで、宮田さんは服役後、「自白は強要されたもの」として再審=裁判のやり直しを請求しました。
やり直しの裁判で弁護団は、宮田さんが取り調べで「刃物の柄に巻き付けて犯行に及んだ後、燃やした」と自白させられていたたシャツの袖が、実際には熊本地検で保管されていたとして無罪を主張。熊本地裁は2019年、「犯人と示す証拠がない」として無罪を言い渡しました。
その翌年、宮田さんは、「警察官がウソの自白を誘導し、検察官は無罪を証明する証拠を裁判に提出せず隠した」と訴え、国と熊本県に8400万円あまりの賠償を求めて提訴。その後、宮田さんが亡くなったため遺族が裁判を引き継ぎました。
裁判では事件の捜査に当たった元検察官と警察官の証人尋問が行われましたが、2人はほとんどの質問に対して「記憶にない」と答えました。
13日の裁判で、弁護団は「松橋事件は、証拠隠しなど冤罪を生む問題の全てが含まれている。冤罪を生まない“しるべ”となるような判決を望む」と述べました。
一方、熊本県は「自白の誘導はしておらず、取り調べも適正だった」、国は「裁判所から命令されていない証拠を開示する義務はなく、違法ではない」と主張し、請求棄却を求めました。判決は来年3月14日に言い渡されます。
【スタジオ】
この裁判の大きな争点がこちらです。
①自白を強要する長時間の違法な取り調べがあったのか
②検察が宮田さんに有利な証拠を隠したのか
弁護団は13日の記者会見で、次のように話しました。
■弁護団共同代表 三角恒弁護士
「警察だけではなくて、検察も一緒になってそういう違法な取り調べを行った。かつ、起訴する権限がある検察官が、あえてそういう証拠隠しというか証拠を明らかにしないで、その上で公訴を提起した非常に特徴的な事件ではないか」
冤罪を繰り返さないためには、その原因を検証することが不可欠です。宮田さんが亡くなり、当時の捜査関係者が「記憶にない」と証言する中で、熊本地裁がどのような判断を下すのか、来年3月の判決が注目されます。