世界王者になった母親 家庭も仕事もアームレスリングも「なりたい姿に」
腕相撲を競技化したアームレスリング。世界チャンピオンになった熊本の女性を取材しました。
■熊本市・中垣内隆久副市長
「あ~強っ!あー!…ありがとうございました」
熊本市の中垣内副市長を軽々と打ち負かし…畑中香保里キャスターを対戦するまでもなく体ごと持ちあげた女性…熊本市で暮らす添田夏美さん、アームレスリングの選手です。
添田さんは去年9月からギリシャで行われた世界選手権・女子40歳以上の「マスターズ部門」無差別級で左手優勝。右手も準優勝に輝いたんです!一見、力勝負と思われがちなアームレスリング。しかし、全身の筋肉を使うため単純に腕の力が強ければ勝てるというものではありません。
■添田夏美さん
「いかに自分の体重をどの方向でどのスピードでかけていくか」
■山内紘一朗コーチ
「指一本一本の動かし方だったり、意外に繊細な競技」
実際に腕を組み見せてもらいました。相手の肘を伸ばして、力が入りにくくする『吊り手』や、
相手の手首を巻き込むようにして、力を入らなくさせる「噛み手」など…戦術も様々です。
輝かしい成績をあげる添田さんは社会人から高校生の3人の子どもがいるお母さんです。中学時代から吹奏楽をしていて、アームレスリングを始めたのはたった7年前、40歳の時でした。
■添田夏美さん
「普通に主婦でした。OLしながら。あんまり悩みみたいなのはなかった。ただなにか半分人生来たと思ったら、打ち込めるものがなかったので、それで思いついちゃいました」
アームレスリングに魅力を感じる女性は添田さんの他にも!
■富樫祥子選手
「格闘技の一種だが痛みがないので女性にも趣味としてもいい」
■本田志穂選手
「ダイエットで始めました。面白いんですよ。どっぷりハマりました」
中には、74歳から始めたという人も!
■溝口悦子さん
「他のスポーツはけっこう好きであれこれしたんですけれどアームレスリングは未知の世界なんです。新しい世界に突入するのは割と不安よりも期待が大きいタイプ」
一方で、女性の競技人口はまだまだ少なく全国で60人ほどしかいません。去年12月の熊本オープンに集まった女性選手は11人。互いに対戦相手を求めて、九州だけでなく遠くは島根からも参加してきました。なぜ、女性の競技人口が増えないのか?
■藤本美香副理事長
「妊娠出産を機に子育てもあって練習できないからっていう人とかいっぱい見てきました。やはり皆で助けてもらってやるしかできないですね」
■本田志穂選手
「自宅の方で親の介護をしています」
■添田夏美さん
「私は(アームレスリングを)始めたタイミングが子どもがけっこう大きくなって手を離れてから始めているので、20歳くらいから始めたとして間に出産をしたら続けていたかな…」
同じアームレスリング仲間でも競技との向き合い方は様々です。
■石田彩選手
「(アームレスリングで)目指しません一番は。(子どもを)預かってもらって練習にも行けるし、旦那がごはん作ってくれる時もあるし、比較的自由にはさせてもらっているけれど、そこから先もっと頑張って(アームレスリングで)上を目指すかっていったら、それ以上また家族に負担をかける事になるから、今以上の練習はできない。(上を)めざせるんならめざしたいですけどね」
女性の中には出産や子育てだけでなく家庭での家事や介護の負担が大きいという人もいます。最近は「ジェンダー平等」という言葉を聞きますが、現状は追い付いていない面も…。
■添田夏美さん
「ヌルっと、家事全般、私?みたいなのがあると不満じゃないですか。だからそこらへんを(夫婦で)ちゃんと話す(必要が)」
■畑中香保里キャスター
「今、(男女同権への)過度期ですよね!」
■添田夏美さん
「過度期だとは思ってます。いつまで過度期なんだよと思ってますけど(笑)」
そんな中、添田さんは子育てが一段落してからとはいえ、家庭と仕事に加えてアームレスリングに挑戦、しかも世界タイトルまで取った…なかなかできる事ではありません。
■石田彩選手
「練習を一緒にしてきたので見ているんですけど家の事ちゃんとやって練習に来て、遅くなっても次の日子どものためにお弁当作ってっていうのは正直私にはできないかなあっていう」
仕事と子育てでいっぱいになっている私には自分のしたい事も両立できる秘訣が何なのか、ぜひとも知りたいところでした。
■添田夏美さん
「あー…そんなに偉そうな事を考えている訳ではなくて、なんで続いてるかなって思ったら楽しいから。そんなに(自分に)ハードルを上げる必要はないと思っていて、これ絶対せなんという事はあると思うんですけど、そうはいっても、(力を)抜く所は抜いていいし、したい事ももっと大事な事がある時は、我慢すればいいし、あんまり自分を責めすぎない方が何でもできると思います」
そんな添田さんの姿に、息子の陽樹さんは。
■息子・陽樹(ようじ)さん(19)
「(アームレスリング)始めてからの方が生き生きしてるっていうか、今まで以上に話す事が増えて、スポーツ頑張っている母親を見て自分もスポーツ頑張ろうと、自慢の母親です」
去年の熊本オープン・女子無差別級で左手と右手のダブル優勝を果たした添田さん。世界チャンピオンの名に恥じない強さを見せてくれました。これからの目標は?
■添田夏美さん
「決して自分の事は強いと思っていないので、一つ一つ課題をクリアしながらなりたい姿になっていきたいと思っています」