「2人産みたかったけど1人で止めておく」への危惧 厳しさ増す出産環境 富山県の人口100万人割れを検証
富山県の推計人口が4月時点で100万人を割り込んだことを受けて、エブリィでは人口減少に関する課題をシリーズでお伝えしています。2回目は、少子化の影響で厳しさを増す、出産をめぐる環境についてです。
医師と妊婦のやりとり
「背中は ママの左側で 心臓が動いている」「ほんとだ」
入善町の「あわの産婦人科医院」です。
新川地域で40年以上にわたり、これまでに1万人ほどの命の誕生に携わってきました。
現在、町内で唯一出産ができる施設です。
エコーを受けた女性「住んでいるところがここなんで、近いし助産師さんも看護師さんもいい人たちなので」
一方、県内では分娩施設の減少が続いていて、この10年あまりでおよそ3割減りました。
背景にあるのは歯止めのかからない少子化です。県内で去年生まれた子どもの数は5859人、ピークだった1972年の3割あまりに留まります。
子どもの数が減るのに伴い「子どもを産む場所」もなくなりつつあるのが現状です。県内ではすでに半数以上の市町村に分娩施設がなく、新川地域では2か所だけです。
受診している女性「選択肢がなかったので、ここか黒部市民病院かって感じで、ここで産んでいる人が多かったのでこっちにしました」「お産ができる産婦人科が全然この辺ないので、もうちょっとあったらいいなと思います」
あわの産婦人科には新川地域だけでなく、一時は分娩施設がなくなった新潟県の糸魚川市などからも妊婦が訪れます。生まれる子どもの数は減っても、産気づいた妊婦への対応は昼夜休まることがありません。
八十島邦昭院長「黒部に自宅があって通っているんですけど 、結局早いお産の時は泊まり込むしかないんで、基本お酒は飲まず 、ずっと待機です。先生いつ休んでいるんですかってよく言われます」
出産を巡る環境は年々厳しさを増しています。国の調査では、2022年度の公的病院での出産費用は46万円を超え、5年連続で増加しました。
こうした中、国は去年、経済的負担の軽減のために出産時に支給する一時金を42万円から50万円へ増額しました。
その一方で、県内では出産費用を値上げした病院が相次いでいて、中には50万円以上に引き上げたところもありました。
スタッフの人件費や物価高騰などが理由で、あわの産婦人科も去年、1割ほどの値上げに踏み切りました。
安全な分娩のためには人員を大幅に減らすわけにはいかないと訴えます。
八十島院長「病院はある程度スタッフを維持しなきゃいけなくて、数が減れば収益は下がるはずで。どんどん医療は進歩するので、ある程度レベルを維持するためには設備投資も必要で、そういう意味ではお金はかかりますよね」
八十島院長は、医師の負担を減らすため人材を基幹病院へ集約させる流れに理解を示す一方、地域で出産ができる病院の必要性を指摘します。
八十島院長「それこそ守備範囲が広いんで新川地区は、だからコロナみたいな感染症がいつ起こるかもしれず、この病院とかは完全に閉じては非常事態に備えられないと思うんですよ。集約化の流れは流れ、それはしょうがないところなんですけど、結果、地方人口が減少して遠くまでお産しなくてはならないのは、だったらもう2人産みたかったけど1人でやめとくわみたいになる気がします、近いところにあるというのは大事だと思います」