【奮闘】アカムツ(ノドグロ)を富山ブランドに 世界初 水槽で産卵育成
ノドグロの名前で知られる高級魚”アカムツ”。
県内でも水揚げがありますが、その量は全国的に見ると多くはありません。
そんな中、県水産研究所が、資源量を増やし、アカムツの一大産地を目指す研究を進めています。
水槽の中を泳ぐ「ノドグロ」。
正式名称は「アカムツ」と言い、主に北陸や山陰地方に生息しています。
脂が乗ってうまみが強いのが特徴で、市場では1キロあたり1万円を超える値がつくこともあるという高級魚です。
国内だけでなく近年は海外でも人気です。
このアカムツの一大産地を目指す取り組みを県水産研究所が進めています。
■福西主任研究員
「我々が卵から稚魚まで育ててそれを富山湾に放流することでアカムツの資源量を増やそうとしています」
県内での年間漁獲量はおよそ10トンから20トンで全国的には多くはありません。
県水産研究所は地元漁師らからアカムツの量を増やせないかとの要望を受け、2011年から水槽内で稚魚を育てる研究を始めました。
しかし、研究は難航します。
アカムツの”繊細さ”に直面したためです。
■福西主任研究員
「非常に神経質でデリケートな魚なので、生かして持ってくるだけでも極めて難しい魚でした。うろこが剥げてるだけでも、そこから弱ってしまって、長期の飼育ができなかったことがあります」
その後、試行錯誤を経て、新潟県の水族館、国の研究所と合同で水揚げしたばかりのアカムツに船の上で人工授精させ、稚魚を育てることに成功しました。
しかし、課題はまだありました。
稚魚を富山湾に放流しましたが、採卵期が台風シーズンと重なり、船の上で安定して人工授精の作業ができないうえに、メスから人工授精に適した卵を採れる確率が低かったためです。
水槽内での自然産卵への挑戦
そのため県水産研究所は再び、水槽内での天然魚の自然産卵に挑みました。
光に敏感だというアカムツ。
生息する水深100から200メートルの環境に近づけるために、黒いカーテンを用いて光の調整を行ったほか、富山湾でとれたホタルイカを与えるなどエサも工夫しました。
そして去年8月。
■福西さん
「ネットの中の海水をカップですくってですね、卵が入ってるか見るんですけど、たくさんの受精卵がカップに浮いててですね、もうすぐ上司に電話して産みました!と」
その後、その受精卵をふ化させ稚魚を育てることに成功しました。
県水産研究所は世界で初めてといいます。
「こちらには去年水槽内で天然魚が産卵した卵から育てた稚魚が入っています放流した稚魚と同じ兄弟になりますね」
稚魚は放流に適する5センチほどにまで育ち、福西さんらは今年1月におよそ1400匹を富山湾に放流しました。
■福西さん
「より安定的にですね、この水槽内で産卵させた受精卵を得ることができれば、今後、事業化に向けてですね、前進すると考えています」
ブランド化へ
事業化に向け残る課題の一つがオスとメスの比率を均等にすることです。
「人工飼育魚では98パーセントがオスということで非常に偏ってしまっているそのため大豆イソフラボンを利用して本来の天然に近いオスメスが1対1になるように試験をしています」
県水産研究所では女性ホルモンと似たような働きをする大豆イソフラボンをえさに混ぜることで、メスの比率をおよそ2パーセントからおよそ10パーセントに上げました。大豆イソフラボンの濃度や与える期間を延ばすなどしてさらに研究を進めています。
■福西さん
「このアカムツの栽培漁業の研究を通してですね、全国の皆様に富山のアカムツのことを知っていただいて、それを目的にですね、富山県に来る人が増えてくれたら非常に嬉しいと思っています」
富山をアカムツの産地にー。
県水産研究所の挑戦が実を結び、「富山名産」のアカムツが店頭に並ぶ日もそう遠くないかもしれません。