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「本当は壊したくない」揺れ動いた公費解体への決断 富山市東蓮町地区 地震から8か月

2024年9月9日 19:59
「本当は壊したくない」揺れ動いた公費解体への決断 富山市東蓮町地区 地震から8か月
能登半島地震で被災した建物について、自治体が解体を請け負う「公費解体」を富山市は9月中にも始めたいとしています。

一方で、公費解体が決まっても土地の地盤改良や固定資産税の増加など負担があり、住民は今後が不安だと話しています。

山田記者のリポートです。

東由貴子さん
「(地震発生時は)部屋でテレビをみていたんですけど、海の上にボートに乗って、ボートが沈んでいく感じ。下から砂が噴き出して、庭が全部川になるんですよ。泥の川に」

富山市の東由貴子さんです。

東蓮町地区にある実家が地震による液状化で「大規模半壊」と判定されました。

生まれ育った家は日を追うごとに傾きや基礎部分の亀裂が拡大。

悩んだ末に「公費解体」を決断しました。

10月から解体工事が始まる予定です。

東さん
「もうね、どんどん、まだいっぱいあるでしょ。ここにも。棚にもまだいっぱいあって、もう本当に大変ですわ」

Q片付けが進んでいない

東さん
「断水だし、トイレはできないし、手は洗えないし、水も飲めない、電気も止まっているので毎日暑くて」

高齢の両親に代わって家を片付けるため、東さんは仕事を辞めざるを得なかったといいます。

東さん
「保育園の時に買ってもらったオルガンとか、捨てていくしかないというか、地震さえ来なかったらこんな思いもしなかったんですけど、なんかね、ほんとに…いろんな物がでてきて、つらいですね」

地震の発生時から時が止まったままの家には、思い出の品々がそのままに、行き場を失っています。

東さん
「捨てるしかないですね。こんなにいっぱい県営アパートに持っていけないし、将来もし小さな家を建てると言ってもこんなに大きな棚が入るような家は建てられないので」

東さんの両親、堀勇さんと、かほるさんです。現在は県営住宅で生活しています。

自宅から持ってくることができたのは、一部の家具や神棚だけ。

東蓮町地区にもう一度、家を建てたいと考えています。

堀勇さん
「なかなか決断が厳しかった。ここ(県営住宅)に来るのも。私らにしたらやっぱ向こうに帰りたいわ」

しかし、家の再建には解体後の地盤調査と地盤改良の費用がかかり、自治体からの支援はあるものの数千万円が必要だということです。

堀かほるさん
「もう嫌になった。まだあそこで死んだ方がよかった。地震で。こんなこと考えたくなかった」

また、解体の後、家を建てずに土地を更地のままにしておくと、固定資産税が高くなってしまうという問題もあります。

富山市によると、土地に家が立っていない場合、課税額が土地の大きさによって3倍から4倍に増えるということです。

半壊以上の家を解体した更地は申請すれば「家がある」とみなして増えた分は課税されない特例はありますが、能登半島地震の被災地では現状2025年度までとなっています。

東由貴子さん
「本当は壊したくないですよね。土地を買って家を建てるって何千万じゃないですか。屋根はずれて雨漏りもするし、畳はもう波打ってるし、床はパカパカだし、いまだに水道はでないし、そんな不安を抱えながら、家を直して住むっていう私は勇気というか、決断はできなかった」

堀勇さん
「住み慣れた東蓮町で住みたいです。それにはやっぱり地盤改良に1千万、2千万、口でいうのは簡単だけど、行政の支援もないとできないと思います」

「東蓮町に戻りたい」その一心で決めた公費解体。

しかし生活再建に向けては解体後の支援も必要と住民は話します。
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