「出荷できないのに…」 牧場経営者の苦悩 長引く断水で搾乳機の洗浄もままならず 牛舎は大きく傾き、牛は“脱走”状態
長引く断水の影響で珠洲市にある牧場では生乳の出荷ができていません。牛舎も被害を受け、手塩にかけた牛の売却も検討せざるを得ない状況です。経営者の苦悩を取材しました。
いまだ被害の爪痕が色濃く残る珠洲市。山間部を進んでいくと…。
見えてきたのは雪の中を縦横無尽に歩き回る牛です。
近くの牛舎を訪れてみると…。
松田牧場 松田徹郎さん
「柱も全部傾いちゃってます。もういつ崩れるか分からないような状態」
およそ35ヘクタールの敷地で130頭の牛を飼育する松田牧場では、4棟ある牛舎のうち「能登牛」の母牛である黒毛和牛を飼育していた1棟が地震で大きく傾く被害を受け、中にいた30頭を外に放つ決断を下しました。
ただ、停電の影響で敷地を囲う電気柵を牛たちが壊してしまった箇所もあり、コントロールできていないのが現状です。
松田牧場 松田徹郎さん
「放牧しているというよりも、脱走しているような状態です。どこにいったか分からない牛もひょっとしたらいるかも知れません」
牛舎は取り壊さざるを得ないと言いますが、再建には資金的な課題もあり先は全く見通せていません。
追い打ちをかけるように断水の影響も出ています。乳牛の健康のためには、定期的な搾乳が必要ですが、水道水による機材の洗浄ができていません。代わりに山の湧き水を使っていますが、衛生の関係上、生乳としての出荷はできません。子牛にあげたり、一部は捨ててしまうしかないと言います。
松田牧場 松田徹郎さん
「出荷できないのに何やってんだろうみたいな…。心配というのもありますけど。どうしたらいいんだろうって。本当に参っています」
断水の解消が見通せない他、人手がかかるとして乳牛を全頭売却することも検討しています。
地震の影響で牛舎が倒壊し、牛が下敷きになってしまった牧場もあり、今後、経営を続けるためには資金的な援助も必要になってくると訴えています。
松田牧場 松田徹郎さん
「牛舎が1棟壊れてしまいましたので、規模は縮小せざるを得ないと思う。牧場の経営を諦めるつもりは全くなくて、これからも継続して経営していきたいと思っています」
以前の日常を取り戻すため、模索の日々が続いています。