【4月施行「改正DV防止法」】『身体的』暴力だけでなく『精神的』暴力からも被害者守る形に改正 その背景とは?
物流業界の働き方改革やおよそ3000品目の値上げなど、様々な変化が見られた4月。
新たに施行されたのが、「改正DV防止法」=配偶者暴力防止法。
身体的暴力だけでなく、精神的な暴力からも被害者を守る形に改正された。その背景を探る。
ハーティ仙台・八幡悦子さん
「みんなDVというと、身体的暴力だけをイメージする人がまだまだ多いです。現実的には、精神的、経済的、性的暴力が大変という人がほとんどです。それで、自分は対象ではない、DVといわないんじゃないかと思っている人がまだまだ多い」
DV被害にあう女性らを支援するNPO団体「ハーティ仙台」の代表 八幡悦子さん。
支援を続ける中で、「身体的な暴力」よりも「精神的」・「経済的」暴力に関する相談が増えていると言う。
宮城県警によると、毎年2000件前後のDVに関する相談が寄せられていて、傷害・暴行などの検挙は150件前後にのぼる。
DV被害の現状を知ってもらおうと、八幡さんたちが作ったのが被害者の実体験を基にした「紙芝居」。
<以下「紙芝居」の内容>
『最初の出会いは学生時代のグループ交際でした』
『親しく付き合うようになると、私の友人やアルバイト先にも口を出し、私が従わないと不機嫌になりました』
『そして、「女性は大学を出たって、子育てや家のことができなければ価値がない」と否定され、私はどんどん自信を失って大学を中退』
『紆余曲折を経て彼と結婚しましたが、生活に必要なお金を渡されず、機嫌が悪いと物を壊したり家の外に引きずりだされることもありました。虐待は子どもにも及びました』
ハーティ仙台・八幡悦子さん
「精神的暴力は、もう日々ひどい言葉を言われる。人間としてなっていないとかちゃんとやっているのに、家事や子育てがうまくいっていないと些細なことをずっとあげつらう。それから経済的暴力。生活費を入れないというのはわかりやすいかもしれないけど、土下座しないと渡さないとか」
「改正DV防止法」は去年5月に国会で成立し、4月1日から施行された。
法改正では、加害者との距離を取るための「接近禁止命令」について、これまで身体的暴力を対象としていたが、4月からは自由、名誉、財産に対する脅迫などの精神的・経済的暴力も対象になるほか、命令の期間を6か月から1年に拡大し、罰則も厳しくなる。
今回の法改正に対して、政府の委員として携わった仙台の小島妙子弁護士は、改正には次のような背景があったという。
小島妙子弁護士
「これまでの法というのは、身体に対する暴力っていうのが中心だった。これでは被害の現状に合わない。行為についても接近禁止命令の対象行為についても、どんな被害を受けたのかということについても、拡大していかないと被害の実態に合わない」
小島弁護士は、今回の法改正が広く知られることで、まずは被害者自身が精神的、経済的暴力を受けていると自覚すること。
そして、支援体制を整備することが重要と指摘する。
小島妙子弁護士
「被害者の方、自分がDV被害を受けているっていうことがわからない人がいっぱいいるんですね。自分が被害者だってことがわかるってことがスタートだし、そこから逃げ出せるために様々な支援が必要です」
自治体や民間組織など様々な形で支援の受け皿が準備され始めているなか、支援に携わる八幡さんは被害に悩んでいる人に対して、1人で抱え込まず一歩を踏み出すことを呼びかけている。
ハーティ仙台・八幡悦子さん
「簡単ではないけれど、必ず相談してそこから方法を見つけていくことはできる。1つの窓口に行ってダメであきらめないで、いろんなタイプ、公的な相談、民間、ほかに特別な公的機関、いろんな相談につながって、ここに話したらわかると思ったら何度も行くことです」
DV被害について悩む方の相談窓口は、県や仙台市が電話相談を受け付けているほか、「ハーティ仙台」では電話以外にもメールなどの相談も受け付けている。
暴力など危険を感じる場合は、各警察署の生活安全課で相談を受け付けている。