夢は横綱そして母国へ希望を!ウクライナから避難の男子高校生 力士目指して奮闘《長崎》
ウクライナから長崎に避難してきた男子高校生。
夢は横綱、大好きな相撲に打ち込む奮闘の日々を取材しました。
体を大きく使った四股。
柱に向かって突くテッポウも、力強く打ちます。
(エゴール・チュグンさん)
「私の名前はエゴール・チュグンです。16歳です。ウクライナ人です」
▼ウクライナ人留学生 将来の夢は日本の国技「相撲」
エゴール・チュグンさん16歳。
出身は、ロシアによる侵攻が続くウクライナ。
幼い頃から相撲が大好きで、日本で力士になるという夢を抱いています。
去年11月、家族と離れ、一人で日本に渡ってきた留学生です。
長崎市にある長崎鶴洋高校の相撲部。
チュグンさんは、インターハイにも出場したことのある県内屈指の強豪校で、稽古の日々を送っています。
(長崎鶴洋高校 相撲部 髙橋 修 監督)
「涼しい顔にならない。妥協するなよ、妥協」
指導するのは、顧問の髙橋 修教諭 35歳。
全国教職員相撲選手権で優勝経験もあります。
チュグンさん、アマチュア相撲トップクラスの先生を相手に力いっぱいぶつかり、土俵際に押し切ります。
身長は188センチ。体重は165キロ。体格をいかした寄り切りが得意です。
▼パワーは申し分なし 基礎的な動きがこれからの課題
(長崎鶴洋高校 相撲部 髙橋 修 監督)
「組んだ時は日本人よりも強いんじゃないかという感じは受けた。この2か月の間でも、立ち合いのスピードであったり角度だったり、当たる強さも格段に地力がついてきた」
パワーは申し分ありませんが、脚運びやふんばりなど、相撲の基礎の動きは「まだまだ」なんだそうです。
今は、基礎稽古をひたすら繰り返し、強い力士になるための土台作りに励む毎日。
(エゴール・チュグンさん)
「稽古は慣れた。立ち合いのスピードが上がってきている」
ひたむきに稽古に臨む姿勢に他の部員たちも刺激を受けています。
(長崎鶴洋高校 相撲部 中村 龍 主将)
「先生たちと残って(稽古を)していて、そういうところは自分たちも見習いたい」
(同級生 西山 瑛太さん)
「自分で何かしようと周りを見て考えていて、自分も見習いたい」
▼関取の名前をすべて言えるほどの相撲好き少年は やがてウクライナ代表に
(長崎鶴洋高校 相撲部 髙橋 修 監督)
「一番びっくりしたのは、相撲が大好きなところ。大相撲の関取の名前もすべて、これは誰だ、これは誰だと答えられるぐらい」
チュグンさんが相撲に出会ったのは、5歳の時。
ウクライナで家族が連れていってくれたイベントがきっかけでした。
(エゴール・チュグンさん)
「(相撲の)スピードとパワーの組み合わせが面白くて。練習をやめられなくなった」
相撲の面白さに魅了され、13歳の時にはアマチュア相撲のウクライナ代表に選ばれるまでに成長します。
将来は、日本で力士になりたい。
夢を追い続ける日々を過ごしていましたが・・・。
▼ロシア軍の侵攻で兄は徴兵 友人はかえらぬ人に
ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、生活が一変しました。
(エゴール・チュグンさん)
「家の近くに原子力発電所があって非常に危険な地域で、攻撃を受けたらウクライナ全土で被害が起こるような場所。私の友人は戦争で亡くなりました」
ウクライナ南部の都市、故郷・ミコライウ州もミサイル攻撃に。
18歳年上の兄、ユルヤさんも徴兵されたそうです。
そんな中、母タマーラさんの尽力で、日本への避難が実現しました。
▼日本へ導いてくれた母や祖国への思い
(エゴール・チュグンさん)
「とても心配で、毎日家族のことを考えている。(日本で生活できて)私はとても幸せで、両親の期待に応えたい」
来日して2か月。
最初は慣れなかった日本食ですが、今はほかの部員に負けじと、たくさんほおばります。
(友達)
「宿題フィニッシュ?」
(エゴール・チュグンさん)
「終わり、終わり」
(友達)
「嘘だろ、絶対」
仲間や先生と会話しながらの食事が、好きな時間だそうです。
そして、日本語の勉強も続けています。
(エゴール・チュグンさん)
「なくします、なくして」
先生「なくさない」
(エゴール・チュグンさん)
「あ、なくさないだ」
1日4時間の授業を、週に4日。
体も頭も目一杯使う努力の日々です。
(エゴール・チュグンさん)
「学校に入学ができて、とてもうれしい。先生も、生徒もすごく大好き」
(長崎鶴洋高校 相撲部 髙橋 修 監督)
「20秒を3セット」
(エゴール・チュグンさん)
「将来の夢は横綱になりたいです」
戦争が続く母国へ希望を届けるために。
きょうもまた、自身の相撲道を突き進みます。