提訴から13年あまり 伊方原発運転差し止め訴訟 あす判決…争点は?

滝口記者:
愛媛県の住民らが四国電力に対し、伊方原発3号機の運転の差し止めを求めている裁判で松山地裁があす判決を出します。
松岡キャスター:
提訴から13年あまり。まず、どのような裁判なのか、振り返ります。
この裁判は、2011年の福島第一原発の事故を受け伊方原発でも地震や津波などによって重大事故が発生する危険性が高いとして、同じ年の12月に愛媛県の住民など300人が原発の運転を停止するよう求めて訴えを起こしたものです。
薦田伸夫弁護団長:
「福島でああいう事故が起きて(国の)新指針では原発事故が防げないと。安全が確認されない限り運転はしないというのが当たり前だと思いますけど」
福島から愛媛に避難 渡部 寛志さん:
「人の手で作られた原発によって人々の生きる場が奪われるなんてことは、二度とあってはならないことだと思ってます」
これまでに6回の提訴を経て現在、原告団の数は県内在住者を中心に1500人余りとなっています。
住民らは、現在稼働している伊方原発3号機は「具体的危険が認められるため運転は差し止められるべき」などと訴えているのに対し、四国電力は「安全確保対策を講じて万全を期している」などと主張しています。
伊方原発の運転差し止めを求める集団訴訟は広島や大分などでも行われ…
広島高裁は地震や火山への対策が不十分だとして、運転の差し止めを命じる仮処分の決定を2度出しましたが、いずれも異議審で覆っています。
また、去年3月と今月5日に行われた大分地裁と広島地裁の判決では「具体的な危険は認められない」として裁判所が住民の訴えを棄却しました。
提訴から13年あまり。松山地裁の判決はあす午後2時半に言い渡されます。
松岡キャスター:
今回の裁判での争点は?
滝口記者:
様々な争点があるのですが、きょうはその中でも、主な3つの争点について説明します。
まずは「地震」についてです。住民は、伊方原発3号機の沖合を通る中央構造線について、四国電力は、地震動が強くなる「逆断層」の可能性があるにもかかわらず、考慮しておらず、南海トラフ巨大地震で想定される揺れの試算も低いとして、「四国電力の基準地震動は余りにも過少である」などと主張しています。
これに対し、四国電力は伊方原発への影響が大きいと考えられる地震を選定し、多数のケースで基準地震動を策定していて、「適切に評価している」などと反論しています。
争点の2つ目が「火山」です。住民は、阿蘇山で過去最大の噴火が起きた場合、火砕流が3号機に到達する可能性が十分小さいとはいえないなどと訴えています。
一方、四国電力では調査の結果、阿蘇では伊方原発の運用期間中に「巨大噴火の発生可能性は十分小さい」とした上で、仮に起きた場合でも、火砕流については、シミュレーションの結果、原発の敷地には到達しない。
火山灰については、過去に発生した大規模噴火で、15センチの堆積を想定し、安全対策をしているなどとしています。
争点の3つ目は「避難計画」です。
住民は伊方原発が位置する佐田岬半島の地形などから、地震による土砂災害などで道路が寸断したり、ヘリポートなどが機能しなくなったりする可能性があり、「特殊性を考慮した避難計画が策定されなければならない」が、現在の県の避難計画は実行性が欠如していて「地震による原発事故時には、避難も屋内退避もできず、住民が被ばくを強いられることになる」と主張しています。
これに対し、四国電力は「実効性のある避難計画が策定されていて、毎年実施されている県の原子力防災訓練を通じて計画の検証・改善が重ねられ、実効性の向上が図られている」などと反論しています。
松岡キャスター:
“地震に対する安全性”“火山に対する安全性”“避難計画”3つの大きな争点、どれも、住民側と四国電力側は対立しているということですね。
あすの判決で差し止めが認められると、伊方原発は止まるということになるのでしょうか。
滝口記者:
松山地裁で運転差し止めが認められた場合でも、判決が確定するまではその効力は生じません。
松岡キャスター:
提訴から13年あまり。長期間にわたり争われてきた裁判に、どのような司法判断が下されるのか。判決は、あすの午後2時半に言い渡されます。