卒業制作は“料理のフルコース” 46人が挑む3年間の集大成!高校生コンテストの舞台ウラ
こちらの美味しそうな料理。全て、高校生作ったものです。松山市で料理の道を志す高校生が、料理コンテストに挑みました。想定外の連続…料理人のタマゴたち、ドタバタな舞台裏に密着しました。
10月21日、松山学院高校で文化祭が行われました。大勢のお客さんで賑わう中、ひと際、注目を集めていたブースが…
来場者:
「すご!」
「これかわいくない?」
「かわいい!」
芸術作品のような、魚のポワレ。和洋中、46のフルコースが並んだ料理の‟展覧会”です。
手掛けたのは、調理科の3年生、46人。
来場した女性:
「たった3年間で上手に作っとるなと思ってね。明日から頑張らないけんっておばあちゃんも」
来場した男の子:
「ようかんがすごいなと思いました。料理の勉強もしてみたいなって」
調理科では毎年、卒業制作として3年生が、文化祭で1人1つ、フルコースを作ります。
さらに、来場者の投票などで金・銀・銅の作品が選ばれるコンテストでもあるんです。
テーマは自由 食材やラインナップ、テーブルの装飾まで全プロデュース
文化祭3週間前。調理科の3年E組の生徒がコース料理の試作に追われていました。
Q.何を作る?
女子生徒:
「レンコンとひき肉のミルフィーユ」
男子生徒:
「(タイの)塩釜です」
テーマは、自由。それぞれが春頃から構想を練り、使う食材や料理のラインナップ、さらには、テーブルの装飾まで、全てをプロデュースします。
新拓真さん:
「趣味なんですよ、魚さばくのが 趣味だったんで」
ひたすら魚をさばいていた新さんの、卒業制作のテーマは?
「自然をテーマにしています。自分自然が好きなんで」
細かい作業が得意で、一切の妥協を許さない男、仙波さん。
仙波大和さん:
「秋の海、港みたいな感じでやろうと思ってます。金は無理でも銅ぐらいはいきたいなと思ってます」
試作では調理科の同級生や後輩が厳しく評価
料理の道を志し、野菜の切り方や魚のおろし方など数々の実技検定を受けてきた3年生。文化祭のコンテストは、3年間で学んだ技術や料理への思いを込めた、真剣勝負の場でもあるのです。
コンテストで評価されるのは、見た目とアイデア。
調理科の3年生:
「自分に自信がなくなるくらい、みんなすごい上手になってます」
「色合いがめっちゃ綺麗やなと思いました」
コンテストに向けた試作は毎週行われ、完成した料理を調理科の同級生や後輩が評価します。「改良の余地あり」と判断された作品には×がつけられます。
この日、コースのデザート「紅葉ようかん」を作った仙波さん。作品には、×が4つ付いてしまいました。
仙波さん:
「今からちょっと手直しします。単純にサイズが大きすぎたんで、ちょっと小っちゃくしただけですけど」
仙波さん、お皿に対して、ようかんが大きすぎたようです。
「小っちゃくした状態のやつを見たかったんで(すぐ手直しした)」
2年前の創立130周年に「松山城南高校」から「松山学院高校」となった通称‟マツガク”。
現在、全校生徒は普通科や福祉科など4学科5コースでおよそ760人。
調理科3年 田中里菜さん:
「病院のご飯を作る就職先に決めてるんですけど。小さい頃に自分も病院で入院した経験があって、自分も今度は作る側の人間になって患者さん助けたいなと思ったので」
卒業と同時に調理師免許の取得が可能な調理科では、およそ170人が学んでいて、これまでの卒業生で飲食関係に従事している人のうち半数が、県内のレストランや宿泊施設などで‟愛媛の食”を支えています。
コンテスト1週間前。ミスター魚さばきの新さんがこの日作っていたのは…
新さん:
「鶴です。途中なんですけど、翼の部分です。こんな感じ」
「何か違う、何やろ」
タイの刺身で、鶴を表現しようと試みます。
高須賀満先生:
「白に白(の皿)はちょっと…鶴やりたいのは分かっとんやけど」
松田芳仁先生:
「かなり仕上がっている子と逆に不安になってる子が何人かいるかなって。周りがどんどん出来上がっていくので、できるかなとなってる子がいる」
文化祭開始1時間前までが勝負!ドタバタの舞台ウラ
いよいよ迎えたコンテスト当日。生徒達、朝6時からコース料理の準備に取り掛かっていました。
新さん:
「だいぶ考えたんで、たぶんいけます!」
松田先生:
「時間は十分あるから焦らんでいいから」
生徒:
「はい!」
作品の締め切りは文化祭が始まる1時間前の午前11時。それまでに、料理はもちろんテーブルのセッティングなど全てを仕上げます。
クラスメイトが実習室で黙々と調理にとりかかる中…
仙波さん:
「火使うやつはある程度終わってるので、結構急がんといかんですけど、配置してからの方が何かと楽なんで」
仙波さんの姿は、展示室に。先にテーブルセッティングを完了させておく作戦です。
仙波さん:
「カツオの船盛に関しては何もできてないんで、内心焦ってます」
これが、吉と出るか、凶と出るか。
Q.何探してるんですか?
新さん:
「作ってきたやつがない。やばいやばい。ありました」
と、安心したのも束の間…
新さん:
「白菜、家に忘れた!」
Q.何に使う?
「鍋です。巻いておこうとしよったんやけど忘れたんで。白菜に見えるかな?レタス」
厳しい試作評価を受けた「紅葉ようかん」に「タイの鶴盛り」は
試作で、×が4つついてしまった紅葉ようかん。
Q.全然形が違いますね
仙波くん
「(ようかんを)めちゃめちゃに変えました!」
紅葉、丸、正方形の3種類に。
そのころ、コースのメイン料理、「タイの鶴盛り」の仕上げにとりかかった新さん。
高須賀先生:
「もっと舞う形にせんと。ボディのとこは黒い足をつけてあげる、目もちゃんとつけてあげる」
辻村先生:
「きょうは鶴に見える!」
新さん:
「教えてもらうんがいいっすね、いろんな人の意見も取り入れていかんと」
高須賀先生:
「さあ、時間切れがくるぞ、時間切れが!急がず焦らず焦れ!!」
みんなが、最終仕上げに入る中、仙波さんは…
仙波さん:
「どうしよこれ…もう無理、時間ない!」
メインのカツオの船盛がほぼ手付かず。
「マジで泣きたくなるくらいほんとにへたくそすぎる!これで、まあ色はある!」
それでも。
仙波さん:
「よし、これでいいや!」
無事、時間内に46人の力作が出そろいました。
田中さん:
「予想以上に綺麗にできたのでとても満足しています」
新さん:
「練習よりは出来栄えが良くて、 ほんとにうまくできました」
新さんは、タイで鶴を、ヒラメで鯉の寿司を作ってテーマとしていた、自然を見事、表現しました。
そして、時間ギリギリで完成した仙波さん。
仙波さん:
「50点ですね。いろんな失敗がこの中に隠れてるので」
旬のカツオを使った船盛やレンコンの挟み揚げで「秋の海」を表現しました。
来場者の投票で46作品中、見事金賞に輝いたのは…
コンテストでは、来場者が、見た目で「いい!」と思った作品を3つ選びます。その票数と、先生たちの5段階の評価が加わり、金・銀・銅賞が決まります。来場者からの投票を受け、見事、金賞に輝いたのは…?
調理科の3年生が集まり、投票結果の発表です。
まずは銀賞と銅賞を発表。残すは、金賞1人のみです。
松田先生:
「金賞…E組仙波大和!」
仙波さん、46作品中、見事1位の金賞に輝きました。
仙波さん:
「ほんとに光栄だと思ってます。親にはすぐ報告しようかなと思ってます」
3年生1人1人が、学んだ技術をいかし、自分らしさを表現して完成させた今回のフルコース。
奈良県のホテルに就職希望 新さん:
「10年以内の料理長になれたらいいなと思ってます。みんなに慕われるような、優しい料理長になって、料理を 食べた人がもう一度食べたいな と思うような料理を作りたいです」
料理の専門学校へ進学予定 仙波さん:
「修行して自分の店もつか、愛媛戻ってきて父が経営している店を継ぐか、そこは未来の自分にまかせる。料理作るのも食べるのも好きなので、料理のことを一生かけてずっと続けていけたらなと思ってます」
料理人の卵たち、卒業まで残り4か月あまりです。