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『シリーズ人口減少➉閉校した津野町の精華小学校のその後』今も続く地域に根付いたスポーツ文化【高知】

2024年9月12日 18:58
『シリーズ人口減少➉閉校した津野町の精華小学校のその後』今も続く地域に根付いたスポーツ文化【高知】
人口減少が進む高知県で未来の社会の在り方を考える人口減少シリーズ。

10回目の今回は今年閉校した津野町の小学校のその後についてです。

今年3月、惜しまれながらも150年の歴史に幕を下ろした津野町の精華小学校です。
3月に行われた閉校式には卒業生や住民など250人を超える人々が参加し、長年親しんだ学び舎に別れを告げました。

一方で、児童の数が少なく複式学級などで学んできた子供たちは葉山小学校への統合に期待を膨らませていました。
あれから半年。子どもたちは新しい学校を楽しんでいるのか、葉山小学校を訪ねました。

旧精華小学校から葉山小学校に入学した子どもは2年生から6年生までのあわせて33人。毎朝2台のスクールバスで登校しています。
葉山小学校の全校児童は137人。

1学年1クラスずつで複式学級はありません。
集会では子供たちが互いの良いところを褒め合うなど、つながりを大事にする教育が行われていました。

旧精華小の子どもたちは。

■旧精華の子供たち
「みんなでグラウンドでサッカーしたりとか新しい仲間が増えたりとかして良かった」
「精華小ってどんな感じやったが?とか聞いてくれる人がおった」
「精華も良かったけどこっちも人数が多いから遊ぶのが楽しいです」

統合から半年が経ち環境にも慣れて、葉山小学校の生活を楽しんでいるようです。

■葉山小学校 校長
「もうほんとにね子供たち同士が一緒に遊んだり一緒に勉強する、自然な感じでほんとに前から一緒に過ごしてるような雰囲気です。お互いに学校の良いところがありましたので、それで刺激をもらって双方が良いように子供たちが成長しあってると思う」

互いの学校の良いところ。そのなかのひとつは閉校になった精華小学校で生まれたスポーツ文化がいまも続いていることです。

下校時刻の午後4時すぎ。葉山小学校に通う児童たちが乗った帰りのスクールバスは、閉校した精華小学校で停まりました。
バスから降りた7人は正面玄関で着替え始めました。彼らは旧精華小学校で何を始めるのでしょうか?

3月で閉校した精華小学校グラウンドで活動しているのは旧精華小の少年ソフトボールチーム「精華ファイターズ」。
平日は午後4時半から6時までいまも旧精華小のグラウンドで練習をしています。

監督の中山出(いづる)さん(69)。
精華ファイターズは約30年ほど前、学校近くに住む中山さんが保護者などに頼まれて作ったソフトボールチームです。
この30年の間には、発足当時のコーチが病気で亡くなるなどの困難もありましたが、多くの保護者の支えがあり活動を続けてきました。

■中山監督
「これらも保護者やきねこの時の。自分の子供が卒業しても2年くらいはコーチをやってくれゆう」

精華ファイターズは過去には県代表として全国大会に出場したこともあるそうです。

■中山監督
「全国大会で一勝したことかな。ジャパンに入った子もおるし」

なんと精華ファイターズに在籍した児童の中にはいま日本リーグで活躍する選手がいるんです。写真の少年は現在、トヨタ自動車に在籍し去年「U23ワールドカップ」で準優勝した西森亜夕夢選手。

また女子リーグのトヨタレッドテリアーズに在籍し、今年のワールドカップで優勝した下山絵理選手もいます。

日本を代表する選手も輩出してきた津野町の精華ファイターズ。支えているのは、中山監督をはじめとする地元ボランティアの大人たちです。

大型免許を持つ中山監督は、運転手の仕事をしながら監督をこなしています。今は町内で、スクールバスの運転や介護施設の送迎を担い、平日、練習が始まる直前まで仕事をしています。

この日もグラウンドでは2年生の保護者でコーチを務める森野さんが先に子供たちの練習を見守り、監督が到着した後、本格的な練習を始めます。平日は月曜を除く毎日、土日も練習をして子どもたちは腕を磨いています。

精華ファイターズにとって盛り上がるのは地元、葉山での大会です。26回目の今年の大会は7月に開かれました。
ピッチャーは6年生の片岡郁歩さん。そしてキャッチャーは同じく6年の高野航汰さんと山本百華さんが務め、今年は旧精華小の3人がチームを引っ張っています。

精華ファイターズは、いま窪川小と梼原小のメンバーと合同でチームを編成していて、この日は総勢23人で挑みました。
閉校してから初めての大会で旧精華小の子供たちにはそれぞれ思いがありました。

■片岡郁歩さん
「精華小学校の名前がなくなったとしてもチームの名前が残っているということはすごい嬉しい」
■高野航汰さん
「精華小学校がなくなっても精華ファイターズは強いということを皆さんに知らしたいです」

中山監督も期待を込めます。
■中山監督
「上にいかんといかん。向こうチームも強い、いい試合すると思う」

地元の大会とあって、選手の家族や、地元の人も観戦に訪れていました。
大会では中山監督が檄を飛ばす中、子どもたちは懸命に連携して得点を稼ぎ、1勝することができました。

人口減少で子供の数が減ったこともあり、県ソフトボール協会によりますと県内の小学生ソフトボールチームは現在8チームしかありません。精華ファイターズがこの先存続し続けられるかも未知数です。

■中山監督
「預かった以上この子らが6年までやったら、チームをやらしてもろうたらえいかなと思いゆう」

学校が閉校した場合、そこでスポーツチームが活動を続けるのは難しいことですが、津野町教育委員会が旧精華小学校のグラウンド使用を許可したことや地元の大人たちの支えで活動は続いています。

■葉山小学校 校長
「やはり精華のソフトボールチームも地域の一つの大事なチームとしてずっと伝統的に頑張ってきたので、それは応援していきたいと思っています」

この日も閉校した旧精華小学校のグラウンドでは精華ファイターズの練習が行われ、すがすがしい打球音が山里に響きます。

■山本百華さん
「高校生まで(ソフトを)続けたい」
■片岡郁歩さん
「練習をして強くなってから試合に勝てたらいいな、という思いでやってます」

人口減少の中、学校の閉校はやむをえない事ですが、精華地区では子供たちの才能を育む場が今もしっかりと守られています。
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