東日本大震災から3月11日で14年となります。その翌年には南海トラフ地震の新たな被害想定が発表され、高知県内でも様々な対策が進められてきました。
今回はこの14年でどこまで進んだのか、専門家の話を交えて振り返ります。

2011年3月11日午後2時46分、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生。東北の沿岸部を大津波が襲い、多くの命が奪われました。

東日本大震災発生の翌年、国は南海トラフで起きる巨大地震での新たな震度と津波の高さの推計を発表。県内の最大震度は高知市など30の市町村で7と予測し、津波は黒潮町で34.4メートルという衝撃的な数字でした。

東日本大震災大震災から14年、高知県内ではどこまで対策が進んだのでしょうか。

「いのちを守る」対策として県内で整備が進んだのは「津波避難タワー」です。
東日本大震災があった2010年度の段階で、県内には高知市・四万十市・東洋町の3つの市と町にわずか4か所しかありませんでした。震災以降、県の沿岸部に次々と建てられ、2017年には黒潮町に国内最大規模の高さ22メートルのタワーが整備されるなど126基に増えました。

この十数年の対策について高知大学防災推進センターの岡村眞客員教授に聞きました。

去年発生した能登半島地震の被災地で、倒壊した木造家屋が避難路をふさぐ状況を目の当たりにした岡村教授は、あらためて耐震化の重要性を指摘します。

■岡村眞 客員教授
「古い空き家であるとか古い家の耐震をしていかないと、避難タワーまでルートが確保できない。つまり逃げられないということが見えてきている。作ったで終わりではなくて、それを活用できる体制をこれからむしろやっていかなければいけない、という状況かなと思う」

県内の住宅の耐震化率は2023年度末時点で推定で89パーセントまで進んでいますが、空き家への対策など課題があるのが現状です。

そのほかハード整備で国と県が進めているのは、津波の勢いを弱めて被害を軽減するために「高知新港沖」「浦戸湾の入り口」「湾内地域」を3つの層として防波堤や堤防を強化する、いわゆる「三重防護」事業を進めています。

高知新港の沖や桂浜の東に延びる防波堤が第1ラインです。第1ラインの防波堤は、高知新港内の波を抑えて船舶の航行の安全性を高めようと整備された港湾施設です。これまでに巨大なケーソンを据え付ける延伸工事が行われ、津波による倒壊を防ぐための補強工事が進められています。

そして津波の侵入の防止や低減を目指すのが第2ラインです。陸側では高知新港から種崎にかけてと、浦戸から長浜・御畳瀬にかけての堤防の強化を進めています。

三重防護事業は2016年度にスタート。去年10月からは浦戸湾の入り口に津波防波堤を設置する工事に着手しています。

すでに南の浦戸側には約1800トンのケーソンを2基設置しています。ケーソンの上には高さ6メートルほどのコンクリート構造物をのせ、浦戸側から81メートルの津波防波堤を整備していきます。
北の種崎側からも順次ケーソンを6基設置する予定で、128メートルの津波防波堤になる計画です。

この二つの津波防波堤によって浦戸湾内に入ってくる津波の量を減らす効果が期待されています。

ハード面の整備が進むのと並行して、県内では自主防災組織の数も増えていきました。去年4月1日現在で自主防災組織の数は3084。組織率も15年前の64.9パーセントから97.3パーセントにまで広がりました。

ただ年月が経つにつれて高齢化や少子化といった問題が生じてきていると岡村教授は指摘します。

■岡村教授
「少子高齢化で今度は若者がいないという状況が来ているので、災害の予防・防災ということに関しては大変厳しい状況に高知県が入りつつあるということは言えると思う。とにかく地域で命を守っていくということをもう一度はっきり自覚していただいて、訓練などに実行していただきたいと思う。」

そうしたなか、次世代の防災リーダーを育成する取り組みが各地で行われています。高知市の愛宕中学校では中学生が主体的に動く避難所開設訓練を行っていて、このときはいくつかのチームに分かれて体育館の安全確認をしたあと、小学校区ごとに避難者エリアを分けるなどの作業を進め、避難してきた地域の人たちを受け入れていました。

東日本大震災から11日で14年。いのちを守る対策は着実に進んでいますが、油断は禁物です。

■岡村教授
「もう前回の南海地震から80年経ったわけで、いよいよそこに迫っているということをまず理解していただきたいと思う。」

いまの自分ができることを常に考え、南海トラフ地震に備えることが大切です。