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南海トラフ地震臨時情報から2か月 浮かび上がった課題【高知】

2024年10月8日 18:53
南海トラフ地震臨時情報から2か月 浮かび上がった課題【高知】
「とにかく不安だった」「避難路を意識するようになった」
初めて発表された南海トラフ地震臨時情報から10月8日で2か月。街では、様々な声が聞かれます。
今回の臨時情報では市町村で対応がわかれる場面がありました。そこで浮かび上がった課題とは。

今年8月8日に発生した日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震。宮崎県で最大震度6弱。宿毛市で震度3の揺れを観測し、土佐清水市では30センチの津波を観測しました。

気象庁は、初めて南海トラフ地震臨時情報の「巨大地震・注意」を発表しました。

■8月8日 気象庁会見
「南海トラフ地震の想定震源域では、新たな大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まっていると考えられます」

あれから2か月。臨時情報について街の人は。

■街の人
「(臨時情報に)不安と疑問がいっぱいありました」
「非常食を買い足し水も買い足して持ち出し袋の確認をし直した」
「今どうやって避難するかは意識するようにはなった」。

とまどったとの声がある一方で、地震への備えを見直すきっかけになったという人がほとんどでした。

南海トラフ地震臨時情報は、2019年から運用が始まりました。臨時情報には、地震への備えの再確認や、少なくとも1週間の事前の避難を求める「巨大地震・警戒」と、地震への備えのみを再確認する「巨大地震・注意」があります。

国の指針では「注意」のときの対応は市町村に判断を委ねていて、事前の避難を出す決まりはありません。今回の臨時情報では、この指針がもとで自治体ごとに対応が分かれました。

高知県内では、4つの自治体で高齢者等避難が出されたほか、20の市町村で避難所が開設されました。
臨時情報を受けて黒潮町が開設した避難所で、担当者に話を聞いてみました。

■担当者
「当日はこちらの部屋を避難所として使わせてもらった。2人が避難していた」。

黒潮町は全域に高齢者等避難を出し、避難所32か所を開設。少なくとも8人が避難しました。

■担当者
「黒潮町としては、巨大地震・注意であろうが巨大地震・警戒であろうが、普段よりも相対的に地震が起こる可能性が高まったという情報に臨時情報がなるので、高齢者等避難を町内全域に発令して避難所を開設することを事前に決めていた」

しかし、利用者が少なかったことを受け町は方針を変更。「巨大地震・警戒」の場合はこれまでと同じ対応とし、「注意」の場合は、避難情報を出さず避難所を開設しないよう見直しました。

■担当者
「今回の町民の避難行動を見たときに避難所を一斉に開けるような状況ではないなと感じた。ただ、心配で避難したい人は一定数いるかもしれないので、役場の方に連絡をもらえれば順次対応することにしている」

複数の避難所を開設した市町村がある一方で、別の判断をした自治体もあります。

高知市では「臨時情報・警戒」の場合、指定避難所の23か所を開設することにしています。今回の「臨時情報・注意」では収容人数が最も多い鴨部地区の1か所だけを開設。その後、利用者が増えれば新たに開設することにしました。

■防災対策課・野村和秀さん
「たくさん(避難所を)開けてしまうと、それだけ危機感を煽るような形にもなってしまうので。避難所開ける開けないとか、市町村あるいは県ごとにも差が出ましたので、統一的な指針なんかを(国が)策定していただいていれば、市町村間の違いは生まれなかったかなと思う」

全国的にも対応が分かれた事前避難の判断。初めての臨時情報では、他にも課題が見つかりました。
そのひとつが通常業務との両立です。高知市防災対策部では今回、職員4、5人を1グループとし12時間交代で対応しました。
ところが、臨時情報では目に見える災害は起きていないものの、対応のために人員を割く必要があり、通常業務と両立することが負担になりました。

■防災対策課・野村和秀さん
「職員が24 時間ローテーション組んで 1 週間対応したんですけれども、そのローテーションの組み方なんかは、その場でちょっと決めました。発表されてから決めましたので、職員が疲弊していては対応力も下がってしまいますんで、そういったことはならないように、どれだけ職員の疲労感が少ないローテーションっていうのが必要かなと思ってます」

高知市防災対策部では、対応する職員を半数にできないか検討を進めています。

県内では別の課題も浮き彫りになりました。
香南市の赤岡保育所です。津波注意報と臨時情報が発表された8月8日。保育所では園児や職員など、45人が近くの小学校へ避難しました。
海抜13メートルほどにある避難所。震度5以上を感知すると、自動で開く鍵のボックスを設置しています。

ところが、今回、香南市では震度5を超える揺れは無かったため鍵が解除されませんでした。臨時情報では鍵が自動で開かないことに改めて気づかされたのです。

■香南市防災対策課・中岡俊雄 課長補佐
「防災ボックスが地震が起きてないので使えなくて、保育所の近くの小学校に避難するんだったんですが、それがその行った段階で中に入れなかったというような事象も発生してますので。当面はまず鍵をもうそこの保育所には預けるという形にはしています」

今回のことを受けて市は、来年4月から赤岡保育所と沿岸部にあるもう1か所の保育所の園児を津波浸水区域外にある別の保育施設にも預けられるよう検討しています。

一連の課題について県は。

■江渕副部長(統括)
「高齢者等避難を出した出さないということで、確かに市町村内で違いがありましたけども。他の都道府県で言えば、そういったバラバラな対応はどうなのか、より統一的な方針を国が示すべきではないのかといったような意見がある。改めて県内市町村の皆さんと協議しながら、その見直しについて協議してまいりたい」

県は認知度が低かったことも県民に不安を与えた要因だとして、今後、臨時情報を組み入れた防災訓練を周知したいとしています。

初めての南海トラフ地震臨時情報発表から2か月。それぞれの自治体で対応の見直しが進められています。
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