【解説】“最強ハリケーン”「カテゴリー5」に…フロリダ州に上陸へ すでに非常事態宣言も
メキシコ湾に発生したハリケーン「ミルトン」が、5段階のうち一番強い「カテゴリー5」に急速に発達した。これまでに死者230人以上が確認されているハリケーン「ヘリーン」の被害全容がわからない中、新たなハリケーンの上陸が予想されている。フロリダ州ではすでに非常事態宣言も。気になる今後の進路と影響は?(NNNニューヨーク支局長・気象予報士 末岡寛雄)
■“最強ハリケーン”「カテゴリー5」に発達…最大風速80メートル
国立ハリケーンセンターによると7日午後、ハリケーン「ミルトン」の中心気圧は905ヘクトパスカル、最大風速は80メートルと猛烈な風を記録した。アメリカメディアによると、「ミルトン」はわずか5時間ほどで「カテゴリー2」から「カテゴリー5」へと急速に発達したという。これは史上3番目の早さで、アメリカの気象の専門家は、「ここまで急速に気圧が下がるのは“前代未聞”」、「驚愕だ」と評する。
ハリケーンや台風は、暖かい海水からエネルギーをもらって発達する。「ミルトン」が急速に発達したのは、10月に入ってもメキシコ湾の表面温度が、摂氏およそ30度と平年よりおよそ2度高いことが原因である。CNNがアメリカの非営利研究団体「クライメイト・セントラル」の分析として伝えたところによると、気候変動の影響で記録的なハリケーンが発達する海水温になる可能性が、400倍から800倍に高まった可能性があるとしている。
■すでに非常事態宣言も…現地時間水曜午後から真夜中にかけ上陸予定
現在の進路予想だと、「ミルトン」は現地時間火曜の朝、勢力がピークに達したあと、水曜日の午後から真夜中にかけて勢力を「カテゴリー3」に落とし、アメリカ南部フロリダ州に上陸し半島を縦断する見通しだ。
フロリダ半島西岸はこれまでに何度もハリケーンに襲われていて、2022年9月末のハリケーン「イアン」では100人以上が高潮などの影響で犠牲になっている。西岸の都市タンパは、高潮に脆弱だとされているが、ここ100年間大型ハリケーンの直撃を受けていない。このため地元市長は、これまでにない災害だとして、住民にできるだけ早く避難するように呼びかけている。
バイデン大統領は、「ミルトン」の接近を前に非常事態宣言を出し、連邦レベルの支援を命じた。先月、南部の広い範囲を襲い死者が230人以上出たハリケーン「ヘリーン」への対応が続く中、次の災害に対応できる職員の数も限られているため、“最強ハリケーン”の今後の進路と影響が懸念される。
■末岡寛雄NNNニューヨーク支局長
「news every.」「news zero」のデスクやサイバー取材などを担当し、災害報道にも携わる。気象予報士。趣味は音楽鑑賞。