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『シリーズ人口減少⑧担い手不足の医療現場はいま』閉校する看護専門学校の事情や大病院で進むチーム医療を取材【高知】

2024年7月4日 18:57
『シリーズ人口減少⑧担い手不足の医療現場はいま』閉校する看護専門学校の事情や大病院で進むチーム医療を取材【高知】
人口減少が進む高知県で未来の社会の在り方を考える人口減少シリーズ。
7月4日は担い手が減少している医療現場のいまを特集します。

高知市朝倉にある国立病院機構高知病院附属看護学校です。
1963年に開校し、これまでに2200人以上の看護師を世に送り出してきたこの学校は来年度末、長い歴史に幕を下ろします。

閉校理由について先山正二学校長は「必要な学生が確保できないという実情がおそらく将来に渡っても続くであろうということでこれは本部とも協議して最終決定した」

高知病院附属看護学校の定員は1学年40人ですが、年々応募者数が減少していました。

先山正二学校長
「(定員割れの要因について)大きいのは少子化、それから看護大学4年制の看護学部看護学科いうのが全国的にも増えていてやはりそちらの方の志向が強まったんではないかいうような分析」

少子化で看護を志す若者が減るとともに、大学より1年短い3年間の学習で看護師になれるものの実技を中心とした専門学校に人が集まりにくいというやむ負えない実情がありました。

しかし県内で学ぶ場が減るということは、県内で働く看護の人材を失うことにも少なからずつながります。

看護師の確保などに取り組む県医療政策課は、これまで看護師の養成に向けて県内の高校生を対象にした進路説明会の開催や奨学金制度の紹介、また県内の医療機関への就職説明会などを企画してきました。

県内の看護専門学校などで学んだ学生の3割程が県内へ就職していない現実があり、県は今年度これまで以上に周知啓発の工夫や新たな調査を行うとしています。

看護師の確保について高知市の大病院も危機感を持っていました。近森病院は救命救急センターを中心に地域医療支援病院として大きな役割を担っていて、医師や看護師・そのほかの医療スタッフなどを含めると1460人が働いています。

管理部門を統括する常務理事・管理部長の寺田文彦さん
「ドクターの方は全国規模で募集しているのでなんとか定数には足りているが、看護師と看護助手の方が県下を探しても、どこの病院も不足をしている状況ですね」

またこの状況に加えて、4月から国が導入した医師の時間外労働の上限規制で全体の働き方を変えざるを得なくなりました。

寺田管理部長
「ドクターの仕事は早期診断早期治療するのが仕事だが、それ以外のドクターでなくてもできる仕事があり、その部分を看護師さんに、看護師さんの仕事を看護助手にっていう形で業務の移譲していかないとドクターの時間外労働の上限が賄いきれない」

看護師の慢性的な不足と医師の働き方改革、この2つの課題に対応するため、近森病院がいま強力に進めているのが「チーム医療」です。

急性期の患者に対する処置や投薬を判断する「ラウンド」と呼ばれる日々の業務でも、近森病院は担当医師だけでなく、薬剤師や看護師、栄養士、理学療法士など多くの職種のスタッフが一緒に周って意見交換します。

「チーム医療」を行う事でその場で情報共有が完了し、それぞれが専門分野で迅速な対応がとれるようになります。

また近森病院は7月1日、看護部にいた看護師3人を初めて麻酔科医局へ配属しました。
配属された3人は「特定看護師」という特別な研修を受けた看護師です。

麻酔科の医局員となった特定看護師の一人立石修久さんは2022年に特定看護師の研修を受けました。

特定看護師は医師の業務の一部を担うための看護師特定行為研修を受けた看護師を差し、県内では近森病院、高知大学、国立病院機構高知病院の3か所で養成していて、麻酔・集中治療・救急など7つのコースから選んで研修を受けるものです。

立石さんは元々手術室勤務の看護師でしたが、2年前に半年かけて特定行為研修の麻酔コースで学び、いま麻酔科医の仕事の一部を担っています。
近森病院では立石さんのような特定看護師が各分野で34人活躍しています。

医師の仕事の一部を特定看護師が担うようになると、その分の看護師業務を担う看護助手が必要になります。
近森病院は7月に初めて外国人材の採用にも乗り出しました。

7月2日。来日したばかりのインドネシア人9人が、近森病院で日本の生活習慣や看護助手としての病院での働き方について研修を受けていました。

19歳から20歳というインドネシアの若者たちに抱負を聞きました。

インドネシアからの研修生
「近森は大きな病院。研修で血を採ったり、体重を測って健康診断の結果を記録した。日本で介護の仕事をやりたい」

「介護の仕事を学びたい。(将来)インドネシアで老人ホームを建てたい。それに大学に入るために、私は貯金したい」

それぞれの夢を叶えるために5年間、近森病院で働きます。
こうした外国人材の存在は人口減少の今、県内で担い手を確保できる時代が終焉に向かいつつあることを示唆しています。

医療現場の課題と対峙してきた寺田理事は少し先の高知の未来について、
今の医療体制は維持できなくなるだろうと語りました。

寺田管理部長
「今の病院の数とかいうのはこの5年くらい、5年以内くらいで確実に賄いきれない状況になると思う。病院は最終的には集約化して集約化と淘汰を繰り返して高知県で確保できる医療職の人材で最終的な地域医療を賄っていく。10年ぐらいのスパンでいくとたぶんそういう形になろうかと」

私たちの生活に欠かせない医療が近い将来、身近なものではなくなるかもしれない。
今の社会の在りようを大きく変えてしまう人口減少問題に私たちはもっと危機感を持ち、 取り組みを進めなければなりません。
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