【袴田さん再審】3回目公判…検察は “5点の衣類” ねつ造を否定「袴田さんが犯行時に着用したもの」と主張(静岡地裁)
袴田巌さんの再審=やり直しの裁判の3回目の公判が静岡地裁で行われました。20日は、検察側がねつ造の可能性を指摘された「5点の衣類」について、袴田さんが犯行時に着用したものであると主張しました。
(宮下 楽 記者)
「再審の3回目の公判に向けて、袴田さんの弁護団が裁判所の中に入っていきます」
事件から57年、袴田さんの再審の3回目の公判が、20日、静岡地裁で開かれ、一般傍聴席27席に対し108人が並びました。
20日朝、取材に応じた姉ひで子さん。寝ていた袴田さんを起こして、静岡地裁に向かったと言います。
(袴田 ひで子さん)
「(袴田さんは)うすうす分かっていると思う、たぶん、何か言うわけではないが」「何時間かかるか分からないが、長くやると思う。5点の衣類、肝心なものですから慎重に聞いております」
1966年、旧清水市で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん。10月27日から始まった再審公判で、検察側は「犯人はみそ工場関係者の袴田さんで、犯行着衣はみそタンクに隠した」などと、袴田さんの有罪を主張。
一方、弁護団は「事件は強盗殺人ではなく、犯人の恨みによる殺人で、複数人による犯行」などと指摘し、無罪を主張しています。
検察はこの再審公判を通じて
①犯人がみそ工場関係者であり袴田さんがその行動をとれたこと
②5点の衣類は袴田さんが犯行時に着用した後、みそタンクに隠された
③袴田さんが犯人であるその他の事情が存在することを主張する方針で、改めて「5点の衣類は袴田さんが犯行時に着用した後、みそタンクに隠された」と主張しました。
検察側は「5点の衣類」が袴田さんのものである理由について、従業員の供述などから、袴田さんが事件前に着用していた衣類と特徴が一致することなどから、袴田さんのものであることが推認されると主張。さらに、ズボンの「ともぎれ」が袴田さんの実家から発見されたことなどから「5点の衣類」は袴田さんのものであることを決定付けていると説明しました。
また、半そでシャツの右袖にある2か所の損傷と、袴田さんが負傷した右腕の位置が概ね整合するとして「5点の衣類」は犯行時に袴田さんが着用していたと説明。さらに、袴田さんがみそタンクに衣類を隠したことについて、袴田さんの業務内容から衣類を隠すことは極めて自然で、新しいみそが仕込まれるまでに衣類を隠したと主張しました。
2023年3月、東京高裁が再審の決定をした際「ねつ造の可能性」まで指摘された「5点の衣類」。これについて検察側は冒頭陳述で「捜査機関がねつ造したとすれば、公訴を維持できない」「ねつ造が公になれば信頼が失墜する」などとして、ねつ造は非現実的で実現が不可能であると反論しています。
争点となっている血痕の色問題などについては、年明けから議論される見通しです。