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【袴田さん再審】次週結審へ…最大争点・犯行着衣とされる“5点の衣類”などポイントを若狭弁護士とひも解く(静岡)

2024年5月17日 18:04
【袴田さん再審】次週結審へ…最大争点・犯行着衣とされる“5点の衣類”などポイントを若狭弁護士とひも解く(静岡)

袴田巌さんの再審=やりなおし裁判が来週、結審となります。最大の争点とされているのは犯行着衣とされている“5点の衣類”。結審のポイントをこれまでの公判から若狭弁護士とひも解きます。

浜松市に住む、袴田巌さん88歳。58年前の事件をきっかけに今も死刑囚です。

1966年、旧清水市でみそ製造会社の専務一家4人が殺害されその自宅が放火されました。強盗殺人などの疑いで逮捕されたのは住み込み従業員だった袴田巌さん当時30歳。

(当時の取り調べ録音テープ)
「あんたがね、ほんとうに自信をもっていってるけれどね、ほかに犯人が挙がったらどうする」「ほかに犯人が挙がったら?ないよ上がりっこないよ「いや、必ず挙がる」

取り調べは連日、長時間に及び繰り返し自白を迫られます。逮捕から20日、袴田さんは自白しますが裁判では一転、無実を訴えます。

当初、犯行時の着衣は「パジャマ」とされていましたが、血痕がほとんど付着していないなど疑問が浮上し、犯行の決め手となる証拠とはなりませんでした。しかし、事件から1年2か月後に突然、現場近くのみそタンクから“5点の衣類”が発見されます。検察は犯行着衣を“5点の衣類”に異例の変更。これが袴田さんを犯人だとする最も重要な証拠となり、1980年に死刑が確定しました。

長年再審を求めて2023年、ようやく開かれた再審の扉。検察側は「犯人はみそ工場関係者の袴田さんで、犯行着衣の5点の衣類をみそタンクに隠した」などと袴田さんの有罪を主張。弁護側は「事件は強盗殺人ではなく、怨恨による殺人で、犯人は複数犯」などと指摘し、無罪を主張しています。事件を一から振り返る中、最大の争点とされているのは袴田さんの犯行着衣とされている“5点の衣類”。

(小川 秀世 弁護士)
「そもそも犯行着衣であるということがはっきりと裏付けられていない」「血がついている、損傷がある、発見された場所が現場に近い、ことで感覚的に判断されてしまった」

こう話すのは、弁護団で事務局長を務める小川弁護士。弁護側は「5点の衣類」について衣類についた血痕に「赤み」が残っていて不自然と主張。独自のみそ漬け実験や専門家の鑑定書をもとに、「血痕は1年以上みそ漬けすると黒くなる」と訴え、赤みのある血痕がついた衣類は、「袴田さんを犯人にするためにねつ造された証拠」と訴えています。

一方、検察側は新証拠として7人の法医学者による共同鑑定書を示し、「血痕に赤みが残る可能性がある」と主張。弁護団の専門的知見については、「血痕におこる化学反応を具体的に検討していないため根拠を伴っていない」と反論しました。

3月には“5点の衣類”の血痕の色について科学的知見を直接確かめようと専門家を法廷に招き証人尋問を実施。裁判官が検察側と弁護側の証人へ同時に尋問する「対質」も行われ先月、すべての審理が終結しました。

2014年、静岡地裁で再審を認め、袴田さんを釈放した裁判官の1人 村山浩昭元裁判官が、16日 結審に向けて思いを語りました。

(村山 浩昭 元裁判官)
「きちんとした形で結審してほしい」「それぞれの立場でいろいろ言うことはあると思うが、それも含めて」「ひで子さんが陳述すると思うがきちんと法廷で言えたという形で終結してもらいたい」「冷静に見守りたいと思う」

2024年3月、88歳になった袴田巌さん。長年、拘置されていた影響で拘禁症の後遺症を患い、今は自分の意見をいうこともままならず、再審の法廷にその姿はありません。事件から58年、22日、静岡地裁で結審を迎えます。

【スタジオ解説】
(徳増 ないる キャスター)
いよいよ来週22日に袴田さんの再審が結審となりますが、結審とは、裁判でどのような段階のことでしょうか?

(伊藤 薫平キャスター)
結審とは、すべての審理を終えて判決を待つ段階になるということです。この日は検察側が「論告」、「求刑」を行います。これは、検察側が袴田さんに対してどのような罪名で、どのような刑罰を課すべきかを最終的に述べ、「求刑」つまり判決に求める刑の程度を主張します。これに対し、弁護側が「最終弁論」、これまでの審理を踏まえて最終的な主張をします。今回は、これに検察官が、被害者夫婦の孫が処罰感情などを書いた文書を読み上げ、弁護側としては、被告人の袴田さんに代わって、姉で補佐人のひで子さんが意見を述べることになっています。

(津川 祥吾 アンカー)
検察はやはり今回も「死刑」を求刑することになるのでしょうか?

(若狭 勝 弁護士)
死刑求刑は間違いないと思います。すでに死刑判決が確定しているんですね。そのうえ今回の裁判を見ても、検察が死刑以外の求刑をするということは、まずありえないと思います。

(津川 祥吾 アンカー)
確定はしていますが、再審であってもやはり主張は変えないと?一方で、弁護側の最終弁論はどのようなことが予想されますか?

(若狭 勝 弁護士)
弁護側はもう徹頭徹尾「無罪」ということを強く主張すると思います。

(津川 祥吾 アンカー)
これまでの再審公判のなかで、全体通して、今回の結審のポイントをあげるとするとどのようなことになりますか?

(若狭 勝 弁護士)
結局ですね、無罪判決というものはですね、「真白無罪」というものと「灰色無罪」というのがあるんですね。少なくとも弁護側はいままでの経緯をたどると「真白無罪」だと、「5点の衣類」がどうのこうのというのは、これはねつ造で出てきた証拠だから、これはねつ造している以上は「真白無罪」だということを強く主張すると思います。検察の方は、死刑判決が確定していることもあって、これは間違いなく袴田さんが犯人なんだということを強く主張する。だからまさしく「灰色無罪」になるか「真白無罪」になるかを分けるのが「5点の着衣(衣類)」がねつ造されたものなのかどうか…というところが、今後、判決でどう書かれるかのポイントだと思います。

(津川 祥吾 アンカー)
判決の中で「5点の衣類」がそもそもねつ造であるとまで言われれば、これはもう完全にこの人は犯人じゃないというとろまで言うけれど、そこまでふれなかったとしたら、犯人とは言い切れないから「無罪」というような、いわゆる「灰色」の形になるのではないかと…そのあたりがポイントになるのではないかということですね。結審してから実際の判決が出るまで、どれくらいの時間がかかるのでしょうか?

(若狭 勝 弁護士)
結論的に言うとですね、結審してから判決書きを書き上げるまでに3か月くらいは少なくともかかると思います。当然、結審の時に裁判所は心証は決めていると思います。これを無罪にするのかどうなのかとか、心証は決めてはいるものの、それを今度は文書化すると、この文書もやはり歴史に耐えうるような文書を書かなければいけないということで、それに相当の力を入れ込んで、3か月くらいはかかるのではないかと思います。

(徳増 ないる キャスター)
袴田さんの再審裁判は、来週22日 結審します。大詰めを迎えています。

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