【パン考】本州では売れない?北海道では激アツ「豆パン」 丸パンに甘納豆…そのルーツを探る
柔らかい丸パンに甘納豆が入った北海道民おなじみの「豆パン」。
実は北海道外ではほとんど販売されていません。
いったいなぜなのか、「豆パン」のルーツを探ります。
北海道のスーパーで人気NO.1「豆パン」
(記者)「きょうのパンは何パンですか?」
(児童)「豆パンでーす!おいしい!」
(児童)「甘い!」
札幌市内の小学校の給食でも人気の豆パンです。
スーパーのパンコーナーを覗いてみても、豆パンだけで5種類も扱っていました。
(コープさっぽろ広報 森ゆかりさん)「こちらが贅沢豆パンといって、お店で焼いているパンの中で人気NO.1となっています」
店にとっても豆パンは欠かせない主力商品です。
(コープさっぽろ広報 森ゆかりさん)「組合のみなさんに喜ばれているのと、それだけ需要があるということ」
どさんこにとって、子どものころから慣れ親しんだ味・豆パンですが…
(コープさっぽろ広報 森ゆかりさん)「私は北海道の出身ではないので、お店にこんなに豆パンがあるのが衝撃でした」
実は豆パンは、北海道以外であまり販売されていないんです。
その事実を知った買い物客は…
(北海道民)「えっ!そうなんですか!え、給食とか子どものころから出てましたよ!?えーー!それはびっくりです!」
(北海道民)「うそ!?本当!?へ~知らなかった、貴重だね」
限定と聞けば道民「ウソ⁉」気になるそのルーツは…
にわかに気になる豆パンのルーツ。
「パンのことはパン屋さん」に…
道内の老舗パンメーカー「ロバパン」を訪ねました。
ロバパンでは1日におよそ7万個のパンがつくられますが、豆パンだけで実に1万個といいます。
まさに「メイン商品」です。
200℃のオーブンで焼き上げること13分。
ただ、おいしさの秘密はこれより前にあるのです。
(宮永キャスター)「ロバパン名物の豆パン、豆を練りこむ作業は手作業なんですね。この作業は何年くらい?」
(女性)「もう6年くらいですね」
(宮永キャスター)「ベテランですね。どんなところが難しい?」
(女性)「豆を浮かせるようにきれいに丸めるのが難しいです」
薄皮でギリギリ隠れるように豆を集めて生地に練り込む…
これがおいしさの秘密です!
ただ、これは機械ではできない職人技で、習得までに長い時間がかかります。
(宮永キャスター)「うわぁやわらかい!この豆の甘さが絶妙ですね」
93年前の1931年に創業したロバパン。
ロバで移動販売していたことから、その社名が付きました。
このロバパンが「豆パンの元祖」とも言われています。
(宮永キャスター)「豆パンは創業当初からつくっていた?」
(ロバパン商品企画課 桜庭智洋さん)「いえ、10周年の記念として何かできないかということで、北大の農学部の先生と生徒と相談して、当時は小豆を使った甘納豆を使ってやってみたらどうだと始めたのがきっかけと聞いています。北海道は赤飯も甘納豆。甘納豆は道民が大好きなので、豆パンも大好きなのではないかと」
(宮永キャスター)「本州のパンメーカーでは豆パンはあまり見ないですよね?」
(ロバパン商品企画課 桜庭智洋さん)「向こうで販売してもあまり売れないのが現実」
(宮永キャスター)「独特な北海道のパン文化ということですか?」
(ロバパン商品企画課 桜庭智洋さん)「そうだと思います」
ロバパンによりますと豆パン誕生のきっかけは、北海道大学の教授などからの提案でうまれたということです。
また、北海道民は甘納豆が好きという文化が重なったことも人気の理由のようです。
北海道は小麦王国・生産量日本一 支える“パン文化”
北海道独特のパン文化を支えるのは、原材料の「小麦」です。
いま新たなパン文化を生み出そうと、北海道産の小麦を使う店が増えています。
実は、道産の小麦の中で「幻の小麦」と呼ばれ注目されているものがあるんです。
札幌市内の製粉所です。
1日製粉する小麦はおよそ200トン。
(横山製粉 横山雄紀さん)「ほとんどが北海道産の小麦を使った小麦粉になります。20年前くらいから栽培の量が増えてきて、今では年間60万トンから70万トンくらいの小麦が北海道で生産されています」
85%を輸入に頼る小麦。
ただ、国内産の65%が北海道産なんです。
北海道は日本一の小麦の産地です。
道産小麦はもちもちとした食感が大きな特徴で、パンにはもってこい…といいます。
8種類ある道産小麦の中でも…
(横山製粉 横山雄紀さん)「道産小麦のなかでも流通量は少ないが、“キタノカオリ”独自の甘みや香りがあって、一部のお客様に底堅い需要がある。キタノカオリは生産自体が難しい、難易度が高いと聞いているが、一方で市場の需要は高い小麦となっている」
生産量1位は岩見沢市です。
その岩見沢市のパン協議会によりますと、市内のパン店は少なくとも17店。
駅周辺だけでも8店あります。
これは、人口比で見ても全国的にも突出した多さです。
駅前通りに2022年オープンしたお店です。
連日このにぎわいですが、地元の買い物客に話しを聞いてみると…
(岩見沢市民)「食べたいものがその週で違うので、岩見沢は結構パン店が多いので、食べたい店のパンを買いに行くって感じですね」
(記者)「岩見沢市内はパン店が増えている?」
(岩見沢市民)「すごい多いですよね」
さらに、駅前で市民に愛され10年。
こちらのパン店は50種類のパンが毎日並びますが、なかでもフランスパンのようないわゆる「ハード系」のパンが人気です。
厨房をのぞいてみると、「キタノカオリ」の文字が!
キタノカオリが「幻の小麦」と言われるゆえん、
それは、雨や病気に弱く、質の高い状態で出荷するのが難しいため、流通量がとても少ないのです。
しかし、この小麦に魅了された人は…
(パン工房 こんとれいる 寺林弘美さん)「味と香りが他の小麦粉よりも際立って良くて、パンにするととてもおいしくなる。シンプルなパンをつくるとおいしさがよくわかる。北海道産小麦にこだわっていたので、岩見沢の小麦粉を使えるのはうれしい。キタノカオリが一番好きです」
コメどころでありながら、小麦どころでもある北の大地。
「食の王国・北海道」の魅力発信の一翼を担う力を道産小麦は秘めているのです。
パン文化は、北海道ならでは形で広がっています。
その代表格が北海道発祥といわれる「豆パン」。
そしていま、道産小麦を使ったパンが次々うまれています。
なかでも幻の小麦「キタノカオリ」。
パンそのものだけではなく、小麦に着目した新たな北海道のパン文化が、今後発展していくかもしれません。