「心から反省していると感じられない」タイヤ女児直撃 父親の怒り 検察審査会への申し立て検討
2人の被告はうつむきながら「間違いないです」と認めました。
札幌市西区で2023年、走行中の軽乗用車のタイヤが外れ、当時4歳の女の子に直撃した事故。
車の運転手と所有者の男2人の初公判が開かれました。
被害者の父親はSTVのカメラに強い怒りを語りました。
(父親)「許せないという気持ちが大きいのと、事故に対して向き合ってくれているのか、どういう風に考えているのかを聞きたいです。言葉だけじゃなくて態度で示すのが大人かなと」
事故から1年2か月でようやく迎えた初公判。
娘はあの日以来、目を覚ましていません。
何の落ち度もない子どもに、車から外れたタイヤが直撃するという、あまりにも痛ましい事故。
(百瀬記者)「西警察署から出てきました。身柄が検察庁へ送られます」
(若本豊嗣被告)「間違いないです」
(百瀬記者)「事故を起こした車の所有者の男が捜査員に連れられ、西警察署に入ります」
(田中正満被告)「間違いないです」
16日に開かれた初公判で、車を運転していた男、そして車の所有者の男、2人は起訴内容を認めました。
女の子の父親は裁判の後、初めて会見を開くことを決意。
ある思いを伝えるためです。
(父親)「とても心から反省しているとは感じられない。今後は被告人質問もあるので、 被告人の言葉を聞いた上で意見陳述で私の思いを伝えたいと思います。私たちは本当につらい思いをして過ごしてきましたが、多くの人に支えられて生活してきました。 感謝するとともに二度とこのような被害がないように社会全体の問題として訴えていきたいと思います」
2023年11月。
札幌市西区で走行中の軽乗用車のタイヤが脱落し、歩道を歩いていた当時4歳の女の子に直撃。
女の子の意識はいまだ戻っていません。
事故からおよそ1年。
札幌地検は2024年10月に、車を運転していた若本豊嗣被告を過失運転致傷と道路運送車両法違反の罪で起訴。
起訴状などによりますと、車を不正に改造し車両の点検を怠った結果、ナットの緩みに気付かないまま運転したのです。
これは事故を起こすおよそ10分前の若本被告の様子です。
ぐるぐると敷地内を走り回り、左前のタイヤを入念に確認する様子がー
このとき、なぜナットの緩みに気付けなかったのか。
わたしたちは、若本被告に直接話しを聞くことができました。
(若本豊嗣被告)「あまりにも初歩的すぎて、先入観で違うところだと思った。タイヤの改造後にフロント部分を自分が改造していて、そこが調子悪いと思っていた」
事故直後の混乱のなか、何もできず立ちすくむ男の姿が映像に残っていました。
田中正満被告です。
事故を起こした車の名義は、田中被告。
田中被告は不具合を感じて、「車に詳しい」という理由で、若本被告に車を預けました。
事故を起こす直前の若本被告運転の車の、そのすぐ後ろを走っていたのが、田中被告運転の車。
田中被告自身も、当時現場にいたことが映像を精査してわかったのです。
高校の同級生で、ともに車を改造していたふたり。
16日、法廷に姿を現し、「間違いない」と起訴内容を認めました。
検察は「ナットの締め付けが不十分だったことがタイヤ脱落の原因」と主張。
「不正に改造したことは脱落の直接的な要因ではないが、不正改造が不具合を感じにくい状況にしていた」とも指摘しました。
STVの取材に対し、涙ながらに若本被告はー
(若本豊嗣被告)「タイヤは誰が最後に締めたか覚えていないです。言葉では言い表せないが、女の子に会って謝りたい。申し訳なかったです」
事故が起きたのは、幼稚園からの帰り道。
あの日、家族で交わしていた「お寿司を食べに行く」約束。
(父親)「ここの坂を上っていくんですけど、娘2人と歩いていて、上の子が前を歩いていて下の子と手をつないで。事故が起きたと」
父親は女の子と手をつなぎ、前を歩く姉と3人で歩道を歩いていました。
そのおよそ70メートル先で軽乗用車の左前のタイヤが外れ、女の子に直撃したのです。
(父親)「そのときはちょうど、下の子と話をしていて、体はこっち向いて話していて。一瞬で、何が起きたかわからなくて、娘が飛んでいくところは覚えています」
気付いた時には、数メートル先のガードレールまで、小さな体は吹き飛ばされていました。
(父親)「息もしていないと思って危ないと思って、そこから園の中に連れて行って」
(父親)「これがやっぱりいつも、姉妹で遊んでいた遊具ですね。よくここで遊んでいましたね。頸髄を損傷しているので、そのダメージが大きくて。一度受けた損傷は治らないと聞いていて、何かしらどこかで再生医療とか期待して探してみたんですけど、なかなかなくて。もう意識が戻ることは、ないというふうに言われている」
(記者)「いま煙草に火をつけ、車の所有者の男が出てきました」
事故の後も普段通りの田中被告。
警察は2024年6月、田中被告も過失運転致傷と道路運送車両法違反の疑いで逮捕。
車を運転していない者を過失運転致傷の疑いで逮捕することは極めて異例。
しかし、札幌地検はこれを不起訴にー
父親は到底納得できません。
(父親)「1年以上経っている中で、罪を償っていない状況で、娘が病院でずっと意識不明なのに、どうして普通に生活しているのだろうと不満はあります」
田中被告の処分について、検察審査会への申し立てを検討していて、オンラインでの署名活動を15日から始めました。
(父親)「無責任な趣味で人生を奪っておいて、その程度の責任しかとられないのは間違っていると思います。検察審査会への申し立ても考えています。弁護士と相談して申し立ての準備を進めていきたいと思います」
引き起こされた結果はあまりにも重大。
司法はどんな判断を下すのか。
ただ、父親や家族の苦しみや憎しみが変わることはないのです。