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51歳で若年性認知症と診断された女性 「人生を悔いなく」 歌やライブが生きる支えに…

2024年9月29日 9:29
51歳で若年性認知症と診断された女性 「人生を悔いなく」 歌やライブが生きる支えに…

9月は認知症への関心と理解を深める「認知症月間」です。

なかでも全国に3万人以上の患者がいるとされるのが「若年性認知症」です。

当事者はどのように病気と向き合っているのか。

認知症とともに生きる女性を追いました。

若年性アルツハイマー型認知症 症状は徐々に進行

北海道江別市のスーパーです。

(横山光紀さん)「おれたまご買ってくるから、アルミホイル探してきてくれない?」

(横山弥生さん)「行ってくる、わかるかな」

江別市の横山弥生さん54歳。

夫の光紀さんと何度も来たスーパーでも、ひとりで店を回るのは簡単ではありません。

(夫・光紀さん)「カレーヌードル買っとくか」

(横山弥生さん)「2つね」

カップ麺を2つ、弥生さんがかごに入れますがー

レジに来ると…

(横山弥生さん)「カップラーメン2個買ったの?私が入れた?」

(夫・光紀さん)「うん」

弥生さんの病名は若年性アルツハイマー型認知症。

診断されて3年、症状は徐々に進行しています。

(夫・光紀さん)「これはトースターの横に置いてほしい」

(横山弥生さん)「トースターの横…言われたことができているかわからない…」

(夫・光紀さん)「これ、トースターの横に置いておいてねって」

(横山弥生さん)「言ったっけ?言ったね。なるほどね」

「何も考えずにやればいいことかもしれないですけど。何が正解か、正解もないのに正解を探そうとしちゃう。逆に考えすぎちゃう」

「自分の行動に自信が持てないことが1番つらい」

今は札幌市内のオフィスにも勤めています。

建物の中に入った弥生さん。

(横山弥生さん)「あ、またやっちゃったかも、また鳴らしちゃった、どうしよう」

ビル中に、セキュリティーのアラームが鳴り響いてしまいました。

会社の中に入るいつもの手順を忘れてしまっていたからです。

すぐに警備会社に電話をしようとしますが…

(横山弥生さん)「すみません、ダイヤルを押してもらってもいいですか」

突然のことに慌ててしまうと、電話など普段できることもできなくなってしまいます。

(横山弥生さん)「慌て具合が今までと違って、何かあると頭が真っ白になってなかなか回復しない。ずっとドキドキしている状態。鍵を閉めたかとか、以前より日常的なことに対して、自分の行動に自信が持てないことが1番つらい」

自分にしかわからない苦しみと向き合っています。

4人の子どもを持つ母でもある弥生さん。

子育てをしながら、札幌のシェアサイクル「ポロクル」の立ち上げに携わるなど仕事にも打ち込んできました。

認知症と診断されたのは、弥生さんが51歳の時でした。

(夫・光紀さん)「仕事で大きなミスをして、こんな大事なことを忘れるのかなってことを、どうしたもんだろうかと感じた」

(横山弥生さん)「自分自身に起こることとは思っていなかったので、認知症という病名がついてすごく複雑な、納得感と困惑があった」

国内の患者は3万5千人以上と推定される若年性認知症。

ただ、抜本的な治療法は確立されていません。

うつうつとした日々のなかで、光紀さんとの会話に光を見出します。

(夫・光紀さん)「(認知症は)感情が残るということだったので、楽しいことはなんだろうねって聞いて、歌を歌うことかなって話になったから、ライブをやろうかって言った」

(横山弥生さん)「音楽は学生のころから好きでやっていたことだったので、たぶん言ってくれたんだと思う」

大好きだった歌が、生きる支えに

弥生さんのいまを支えてくれるものー

それは「歌」です。

(横山弥生さん)「今のうちに好きなことをして悔いなくしておきたいと、歌いたいと思った」

2か月に1回ライブも開催。

本番を4日後に控えたリハーサルでも笑顔が弾けます。

歌は弥生さんの生活を大きく変えていきました。

英会話教室の助手を担うなど積極的に外に出るようになり、持ち前の「笑顔の場面」も増えています。

(横山弥生さん)「英語楽しい?」

(園児)「うん!」


江別市のライブハウスで迎えた「本番」当日。

(横山弥生さん)「歌の歌詞を残念ながら覚えていられなくて、歌詞を見ながら歌うスタイルでやってます」

歌詞を指でなぞりながら歌います。

会場には、光紀さんの姿も…

(横山光紀さん)「これがずっと続くといいなと本当に思ったし、いちばん素の笑顔がでるステージの上が(弥生さんの)居場所だなって」



この日、歌ったのは13曲。

そのうち最後の1曲だけ弥生さん本人が選びました。

「白いページの中に」ー。

(横山弥生さん)「アルツハイマーになるなんて思ってもいなかったですし、みなさんもやりたいこと、おいておかないでやってください。そしたら私みたいに何回目だ?3回目だか4回目のライブを開けるようになります」

(バンドメンバー)「5回目です!」

自分の人生を悔いなく生きたい。

認知症とともに歩む弥生さんがいま、歌に込める思いです。

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