【特集】開業10周年「北陸新幹線」 上越妙高駅では“飲食店が足りない”など不満の声も…街へ繰り出してもらうため地元の思いは⦅新潟》

開業10周年を迎えた「北陸新幹線」について。
県内の停車駅のひとつ上越妙高駅ではいま、飲食店が足りないなど地元では駅周辺の開発に不満の声もあります。石川や富山への乗り換えで利用する人が多い上越妙高駅。街へ繰り出してもらうために…地元の思いを取材しました。
子どもたちの元気な声に、上杉おもてなし武将隊。上越妙高駅では北陸新幹線の開業10周年を祝うイベントが開かれました。改札口には利用者からメッセージが寄せられました。
<メッセージ>
「祝10周年・これからもがんばれ」
「いつも帰省するときに迎えに来てくれてありがとう」
夫婦の思い出の1ページにも……
<メッセージ>
「開業の日、夫が上越妙高から富山駅まで新幹線に乗って来てプロポーズしてくれました」
いまから10年前、上越新幹線に続く県内2つ目の大動脈として北陸新幹線はデビューしました。
<記者リポート>
「いま上越妙高駅のホームにはくたか東京行きの1番列車が到着しました」
<小林幸子さん>
「北陸新幹線開業に……乾杯!」
東京駅から上越妙高駅までは最速で1時間49分。糸魚川駅まではおよそ2時間で結ばれ人の流れは大きく変わりました。北陸新幹線、開業の年、高田城百万人観桜会は過去最高となる133万人以上を記録。夏の謙信公祭も24万3200人と過去最多の動員となるなど北陸新幹線の開業効果が見られていました。翌年の2016年には、大型コンテナを利用した飲食店や事務所を展開する「フルサット」がオープン。マンションやアパートなど住宅施設も建設されるなど街の開発が進みました。
あれから10年、現在は飲食店やコワーキングスペースとして営業しています。代表の平原匡さん。上越妙高駅前の開発を見守ってきました。
<フルサット代表・平原匡さん>
「ここが上越妙高、妙高の玄関としてふさわしいものになっているかとか、北陸の玄関としてふさわしいものになっているかというとまだまだやれることはあるし、もっとみんなで議論しないとこのままではいけないと思いますね」
平原さんが課題と感じているのは駅前の発展です。上越市によりますと駅周辺の商業業務用地はおよそ8割が埋まっているといいます。しかし、その多くが住宅やアパート、駐車場です。
一方、商業施設はホテル3軒にコンビニは1軒。徒歩圏内の飲食店はフルサットやホテルに併設したレストランのほかは数軒です。街が「新幹線バブル」に乗り切れなかった理由が……。
<フルサット代表・平原匡さん>
「コロナの最中は静かで、最近になって少しまた人が動いてきて、去年の冬に比べるとことしの冬はよかったし、2019年ぐらいが境目で、もう一回2019年をやっている感じです」
<上越妙高駅を訪れた人>
「コンビニがない。ほんとや」
「初めて来たんでわからなくて」
<地元の人>
「ここら辺で子どもが遊ぶところが増えてほしいです」
「周辺施設、もうちょっと娯楽施設が増えたらななんて思います」
最寄りのスーパーまでは車で10分ほどと車がなければ不便な状況です。
駅前で居酒屋を営む池田哲也さんです。4年ほど前、コロナ禍の中、店をオープンしました。
<居酒屋 傍 池田哲也さん>
「何もないねってっていうのが一言目なんですよね。お客さんにコンビニ近くにないのって言われるんですけど。新幹線駅だったので大変魅力に感じました。地元メニューもありますのでそれは一番最初に勧めて」
店では出張や観光で訪れる人に上越の名物を食べてもらおうとサメのフライなどを提供します。駅周辺には居酒屋が少ないため、満席でやむを得ず入店を断ることもあるといいます。
<居酒屋 傍 池田哲也さん>
「食べるところもなくて、ゴールデンウイークとか3連休とかはやっぱり食事難民的な感じで食べるところを探している人も多いですし、そこはもうちょっと盛り上げていきたいと思いますけど」
上越妙高駅はここで乗り換えて富山や石川へ向かう人たちであふれています。一方で駅から出る人は少ないのが現状。地元の不動産関係者によると日中の利用客が見込めず、小売店は出店に二の足を踏む状況だといいます。
<駅周辺の店舗の人は>
「なにかできてもらえれば、もう少し駅から降りて外に出てこれるかなと思っているので」
「もっと降りてきて観光に広がればいいかなという気持ちはあります」
<上越市交通政策課・勝山浩幸さん>
「オフィスビルも建設されたので、そういったところに企業に入っていただいて、昼間に働く人の人口を増やすことで飲食店が出店しやすいような環境を整えていきたいと考えています」
さらに北陸新幹線の存在意義として期待されるのが、外国人観光客を迎えるインバウンド需要です。
<外国人観光客>
Q)ここまでどうやって来ました?
「新幹線で。北陸新幹線は素晴らしかったです」
妙高市では上越妙高駅とスキー場を結ぶシャトルバスも運行されました。そしていま、県内の誘客アップに期待されるのが妙高で進むリゾート開発。高級ホテルやスキー場など一年を通して集客できる大型リゾートを建設する計画です。計画を進めるシンガポール人投資家のケン・チャンさんは東京から直結する新幹線の存在は大きいと話します。
<シンガポール人投資家 ケン・チャンさん>
「新幹線の駅、長野、飯山、それから上越妙高の3駅に囲まれて、30分前後で来られるところ。しかも(スキー場が)一か所に集中して来られるところは、ほぼ妙高高原しかないですね」
インバウンドに関するマーケティングの専門家は……
<movインバウンド支援事業部 川西哲平さん>
「どういうものが足りないのか店舗だけで考えるものではなくて自治体、街全体で考えていくものになりますけど。住民の方も含めた生活圏に海外の方が入ってくるのでなにが一番適切なのかを踏まえて検討していく必要があると思います。新潟はこれからもっと可能性がある地域だと思っています」
上越妙高駅前の商業施設フルサットの平原さんは、住民と自治体が一体となった議論が必要だと訴えます。
<フルサット・平原匡さんさん>
「官民協働、官民連携のもとでテーブルを作って、きちんと議論しないといけない状況というのがこの10年なんじゃないかと思います。コロナもあって世の中が混乱してしまったというのもありますので、ここからもう一度作り直していく必要があると思います」
北陸新幹線を地域のにぎわいにどうつなげていくのか……次の10年へ向けて試行錯誤が続きます。