東大を卒業し博士号を取得した男性が岩手県大槌町に移住し漁師に
シリーズでお伝えしている「移住者LOVEいわて」の2回目です。東京大学を卒業し博士号を取得した男性が大槌町で漁師として活躍しています。三陸の海への思いなどを遠藤記者が取材しました。
午前6時前の大槌町吉里吉里漁港。ぽっかりと浮かんだ月の下番屋から灯りが漏れています。
番屋の主は中本健太さん33歳。海中にかごをつるしそこに入ったタコを獲るタコかご漁の準備をしています。
埼玉県出身の中本さんは東京大学を卒業後大槌町にある東大の研究施設で海に潜って生物の生態を研究し博士号も取得していました。しかし肺に穴が開く肺気胸を患い研究者生活を断念。
それでも大槌町に残り、IT企業に就職する傍ら地元漁協の組合員の資格も取り漁師になりました。
中本さん
「まずちょっとやってみようかなって思って気楽な気持ちでやったらおもしろかったという感じですね」
Q.ITで生計を立てて漁師で生活を立てようとまでは思っていなかった?
「そうですねそうは思っていなかった」
Q今はいかがですか?
「今はおもしろいなって思っています 生計を立てられるかどうかはわかりませんけどまあ楽しんでやっていられればいいと思っています」
日が昇ってあたりが明るくなったころ漁が始まります。海中につるしたかごを次々に引き揚げていきます。
かごを引き揚げてはタコが入っているか確かめる。単調な作業に見えますが中本さんは海の仕事はいつも変化があって単調ではない。おもしろいと言います。
昨シーズンはあまりタコが獲れませんでしたが今年は豊漁です。
中本さん
「2キロはあるな、 2.5キロぐらい 3キロはあるかなないかなくらいですね。もっと大きいのも獲れた。タコは南の方で獲れるんですよね。これはマダコ。マダコは南の方のタコ、ミズダコは北のタコでマダコが獲れるのは海水温が高いからですね」
中本さんは、大槌の海にはたくさんの魚が住んでいることに気づき、それを紹介しました。海の魚類図鑑です。中本さんが確認し撮影した大槌の154種類の魚を大きなポスターにしました。
中本さん
「南の方は魚種が多いんですけど、大槌は比較的北の海でそれでもこれだけの魚がいるというのは個人的には驚きでしたね。小さいころに3歳くらいの時に父親に海釣り公園かな連れて行ってもらって、そこから魚釣りが大好きになり、その頃ですかね魚が好きになったのは」
魚が大好きな中本さんは番屋に水槽を置いて海の生物を飼っています。これは真っ白なナマコ。知り合いの漁師がくれました。
そしてこちらがヒラメ。もう1年も飼っています。色が底の色と同化したみたいになっているので分かりにくいですが
これは中本さんが撮影したヒラメの写真です。ヒラメに、さっきのタコ漁で獲ってきた小さなドンコをやってみました。
中本さん
「いいですかはい(エサを)あげます」
Q.ずいぶん獰猛なんですね?
中本さん「手袋も噛まれましたよ素手でやらなくてよかった血まみれになります」
中本さんは漁師に本腰を入れ始めました。今はホヤの養殖にチャレンジしています。この日はホヤの採卵をしました。新おおつち漁協の斉藤誠志さんも手伝いにいてくれました。ホヤは雌雄同体で卵も精子も同じ個体から放出されます。
中本さん
「白いのがもやーっと出てくるんですよ。それが出れば成功なんですけど、お見せできれば一番いいんですけど」
前の月は採卵に失敗しました。
中本さん 斉藤さん
「これも吹いていますね。こっちも吹いている吹いている。産卵しているということですか産卵していますね」
「来ました来ました斉藤さん。あーよかった。ガンガンやっているっすねこれは全然いけると思いますよ」
ホヤの受精卵はカキ殻をつるした水槽に移します。ホヤの成長は早く翌日にはふ化してカキ殻に赤ちゃんがくっつくそうです。魚を獲るのも観察し撮影するのも大好きな中本さん。漁師になって海の変化を実感しています。
中本さん
「漁師になって3年ですけど、その中でも獲れる魚種は明らかに違っているので、毎年毎年明らかに違うので変化していると思いますね。北の魚というか例えばサケとかそうですし、海藻が減ってきていますね」
Q.地球温暖化ということを感じるんですが、中本さんはどう感じますか?
「人間がやらかしたことだから仕方がないですね。仕方がないんでそこにどう適応していくかということしかないと思います」
中本さん
「一番の魅力は人が温かいところだと思いますよ。元々関東圏にいて隣と話はするけどその程度だったんですけど、話をしていてウエルカム(歓迎)してくれる感じはあってそこは一番の魅力かなって
2023年、中本さんのお父さんは定年退職したのを機に夫婦揃って埼玉から大槌町に移住してきました。埼玉の家を売却して家も買ったそうです。親子そろっての移住生活。海の幸がそれを支えてくれます。