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【特集】不来方高校音楽部ファイナルコンサート 4月に高校統合で校名変更「不来方」の校名では最後の演奏会

2025年3月26日 9:45
【特集】不来方高校音楽部ファイナルコンサート 4月に高校統合で校名変更「不来方」の校名では最後の演奏会
特集です。4月に盛岡南高校と統合する不来方高校。伝統の音楽部は、東日本大震災の被災地をたびたび訪れて歌声を届けてきました。
学校の名前がなくなる前に合わせて5回ある「ファイナルコンサート」が、2月から東京や県内で開かれています。

1月下旬。不来方高校音楽部は、ファイナルコンサートに向けた練習を始めていました。総勢およそ30人の部員たちがパートごとに分かれ、まず音階の確認をします。

男性パート
「ことばをもてー、うたーをー」
男性ピアノ合わせ
「合ってるよね?」「たぶん」

部長の吉田倫さんは、ソプラノパートの担当です。

女声パート音合わせ
「さんはい!」「ドレミ~~」

パートごとに練習していると・・・

村松先生
「これは(楽譜が)ちょっと小さくて見えないでしょ。自分のパートじゃないところが見えないといけないんだからさ」「ましてやすぐに書き込めないでしょ」

顧問の村松玲子先生。熱のある指導で、生徒の気持ちとやる気を高めます。

村松先生
「言葉がいま全然ツルンツルンで何言ってるかわかんないから、もっと言葉の頭を掘ってください」「はい」

不来方高校音楽部は、全日本合唱コンクールの全国大会で金賞23回、最高賞となる文部科学大臣賞を8回受賞している全国屈指の実力校です。しかし、生徒の減少が見込まれることから、県は2021年5月、不来方高校と盛岡南高校の統合を発表。音楽部自体は存続しますが、来年度から「南昌みらい高校」に名前が変わるため、「不来方高校」としては最後のコンサートになります。

音楽部で30年以上、指揮をとり続けてきた村松先生。部員たちに繰り返し説いてきたのは、「逆境のとらえ方」についてでした。

村松先生
「ピンチはチャンスなので」「この統合の時にあたったっていうのは、すごいことじゃないかな」「新しい一歩を踏み出すチャンスを自分たちがもらったって考えてもらいたいなと」

歌詞の意味に共感しながら、思いを込めてハーモニーを奏でる歌は、「不来方サウンド」として語り継がれています。「不来方らしい合唱」とはなにか。その変化が14年前にあったといいます。

村松先生
「音楽は悲しみでフリーズしてしまった(被災者の)心を揺り動かす力があるんだなということを感じました」「自分たちのためではなく、誰かのために歌うということで不来方サウンドは変わっていったと思っています」

被災地でのコンサートを重ねるにつれて、吉田さんにも、ある思いが生まれました。

吉田さん
「歌に対する思いが変わったのかなと考えていて」「これまではただ楽しく歌っていたが、実際に被災地を訪問して、歌は楽しいものだけではないんだなと感じていました」

コンサートで歌う曲のひとつに、「群青」があります。震災後、福島県南相馬市の中学生が作詞にかかわった曲です。ふるさとや離ればなれになった仲間と、またいつか会おう。そんな希望が込められています。

村松先生
「(歌詞に出てくる)「たくさんの」「思い抱いて」「頭、頭をもうちょっと心の底から・・・」

「くちびるに歌を」は、「もう一度立ち上がろう」と勇気や希望を持つ大切さを歌う曲です。震災以降、不来方高校では改めてこの歌詞の意味を見つめ直し、被災者に思いを寄せながら歌い続けています。

村松先生
「全然嵐が吹いてないよね。やっぱりニコニコしてるからね。人生って言うのは嵐が吹いているときがあるわけでしょ。そういう声で歌ってほしいんだけど」

今月上旬。3回目となる陸前高田市でのファイナルコンサートまで残り1週間。

吉田さん
「子音がよくわからないので、hとかkとかの子音をもっとはっきりとお願いします」「はい」

部長の吉田さんです。練習を重ねるうちに曲の細かな部分にまで気を配れるようになり、友人に声をかけて励ますなどリーダーシップも発揮できるようになりました。
この日は、音楽部のOG・OBがかつての学び舎に集い、コンサートに向けた合同練習を行いました。

部長を務めたOG
「(不来方高校としては)これが最後になってしまうので、一音一音大切に歌いたいという気持ちでいっぱいです」

不来方の校舎で過ごした日々を胸に、全員が心をひとつにしていきます。

3月15日。陸前高田市で開かれたファイナル・コンサート。会場の外には長蛇の列ができました。開場と同時に、部員たちはきれいなハーモニーで観客をお出迎えします。

出迎え歌
「いい日になる、いい日になるのさ~」

被災地を励ます歌から、みんなの笑いを誘うメドレーまで。コンサートには不来方高校音楽部の魅力がたくさんつまっていました。

群青
♪あの日見た夕陽 あの日見た花火 いつでも君がいたね当たり前が幸せと知った

くちびるに歌を
♪嵐が吹こうと 吹雪が来ようと 地上が争いに満たされようと くちびるに歌を持て 心に太陽を持て ひとのためにも言葉を持て

観客感想
県立高田高校の教員。陸前高田在住。震災時盛岡。大船渡高に勤務経験。
「とても感動的だし、高田にすごく思いをこめて歌って下さっているのがすごく素敵」「私たちも頑張れるなという気持ちになった」

小学生
「自分の心の中に不来方高校は残っているので、その声や今までのことを忘れないでいたい」(Q、自分も合唱やってみたい?)「はい、憧れです」

吉田さん
「不来方高校の名前がなくなるのはさみしいことではあるのですが、「南昌みらいだからこそ挑戦できることもたくさんあると思うので、挑戦する気持ちを忘れずに、これからもたくさんの方々に祈りを届けられるように歌っていきたいと思います」

村松先生
「復興の支援をはじめ、いろいろな災害で苦しんでらっしゃる方とか、世界中で色々なことがあるわけですけれども、自分たちだけではなくて、誰かのために歌うということを続けていってくれたらなと思う」

たくさんの人の思いがつまった不来方高校音楽部。学校の名前が変わっても、「不来方サウンド」は生き続けます。

全5回の最後となるコンサートは、3月29日、矢巾町で開かれます。
最終更新日:2025年3月26日 9:54
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