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【新時代】フードロス取り組むパン店 岩手県奥州市

2025年3月20日 19:59
【新時代】フードロス取り組むパン店 岩手県奥州市

 新たな取り組みにチャレンジする人などを紹介するシリーズ「新時代」です。

 2回目は独自の方法で「フードロス」の削減に取り組む岩手県奥州市のパン屋を紹介します。

 店主
「ハード系のパンが9割くらいを占めているんですけど、水分いっぱい入ってる生地なので、食べやすいし中はすごく柔らかいパンになってます」

 奥州市役所の裏に去年10月にオープンした「メゾン デュ ラミティエ」。

 午前10時の開店を迎えると、店内には自慢のパンを求めて多くのお客さんが…

 客
「香りが良かったりとか、硬さがすごく私好みなので」

 客
「前にもらってすごくおいしかったので、自分もみんなにあげて食べさせたいなと思い、買いに来ました」

店を切り盛りするのは、奥州市出身の佐藤睦(むつき)さん。

 妻の愛理(あいり)さんと共に焼き立てのパンを提供しています。

さらに、お店には外国人の姿が…

 店主
「うちでアルバイトで入ってもらってるレジスさん。ベルギーから日本に来ました。今ちょうどディスプレイされてる、サンドイッチ最近出し始めたんですけど、中に入ってるザワークラウトはレジスさんのオリジナルで作って」

 レジスさん
「いっぱい新しいこと勉強しました。面白いです」

 店主
「専門学校、東京だったんですけど、学校の半分が海外の人だったので、とても慣れているのと、僕が海外の方と話すのが好きなので、むしろありがたかったですね」

 佐藤さんは製菓学校で基礎を学び、その後、東京や仙台のパン屋で腕を磨きました。

 そして、去年10月、Uターンし、店をオープン。

 新たなスタートを切るに当たり、佐藤さんはパンの店ならではの課題点に目を付けました。

 店主
「やっぱりパンのロスはどのパン屋さんもすごく課題だと思います。例えばよくあるパン屋さんの菓子パン、アンパンとかクリームパンとか。ああいう生地って結構2日目になるとパサつきやすかったりするので、当日でロスにしているパン屋さんは未だに結構多いと思います」

 パンは日持ちが限られているため、フードロスが課題に。

 すると佐藤さん、営業時間内にもかかわらず、売り場からパンを下げていますが…

 店主
「『いつでもいいよ便』というのを商品で販売してまして。通販でパンを発送しているんですけど、お客さんの受取日の指定はできないんですが、その分、ちょっとお得になったパンの詰合せを販売しています。やはり天候等で今日お客さんの来店が少ないなどあったりするんですけど、そういう時には前もって売り場のショーケースからパンを引っ張って発送に回す形を取ってます」

 その日の状況に応じて対応できるため、オープン以来パンの廃棄はゼロ。

 実はこのサービスを実現するために活用している秘密兵器が…

 店主
「『sacri』というアプリを活用してるんですけど、これが実際の店頭の商品の取り置きと、通販の2パターン用意しています。その日の注文が見れたり、お取り寄せの注文が入った日には自動で通知が来るようになっています。(アプリの活用は)岩手だと多分うちだけで、東北でも数店みたいです」

 注文状況が見えることで、作りすぎを防げるメリットが。

 買い物をするお客さんにとっても、このアプリはとても助かっているようです。

客 
「アプリを初めて使ってみたんですけど、数日前に欲しい分だけ注文して。早い時間に来ないと買えないこともあったので、事前に注文したら、指定した時間に取りに行けるのがメリットだなと思って」

 他にも佐藤さんは、フードロスを減らすためのこんな取り組みも。

 やってきたのは、一関市にあるカフェレストランです。

 店主
「うちの店では業販も行ってまして、パンの卸しですね。やはり安心してパンを仕込めるというのと、店売りでさばけない分も卸しの方にうまく回したりもできるので、フードロスにも繋がってると思います」

 シェフ
「実際に僕たちの所では、前菜の盛り合わせの所に使わせて頂いたり、サラダの一部に使わせて頂いたりしてるので、すごく助かってますね。おいしいパンなので」

 さらに、奥州市水沢にあるこちらのカフェでは、佐藤さんが提案したパンをメニューに取り入れています。

 店員
「バケットと山食です。うちのカレーがお水を使わない無水カレーなんですけど、(佐藤さんに)カレーに合うパンを教えて下さいというお願いをしました。お店も近いので極力その日の焼き立てのパンを仕入れて、こちらでも提供するようにしています。やはり今までいらっしゃってたお客さんと客層が変わって来てるので、そういうのもきっかけになってるのかなとは思います」

 アプリなどのサービスを利用しつつ、地域とのつながりも大切にする佐藤さん。

 その根底には、今後の飲食業界の在り方と、地域を盛り上げたい思いがあります。

 店主
「すごく大きいくくりで見ると、多分大きい企業とか大きい工場とかのフードロスを1%でも減らす方が、こういう小さい店が何店舗も頑張るよりも効果は大きいと思うんですが、お客さんに伝えていきやすいというのは、個人店のメリットだと思うので、個人店一人一人がしっかり取り組んでいくことは大事だと思います。今後店としては、町づくりの一環になるように色々取り組んでいきたいなと思っています」

 店名の「メゾン デュ ラミティエ」とは、フランス語で「友情の家」という意味。

 佐藤さんの取り組みは、地域と人に優しい、新たな時代の形態なのかもしれません。


最終更新日:2025年3月21日 14:38
    テレビ岩手のニュース