戦争でPTSD 精神疾患と診断された元兵士のカルテや家族の体験記見つかる 史料館で展示へ
太平洋戦争などで過酷な体験をした山形県内などの旧日本軍兵士が、戦後もPTSD・心的外傷後ストレス障害とみられる症状に苦しみ続けた実態に関する、国の調査結果が12日、東京で報告されました。精神疾患と診断された元兵士の家族の体験記などが今後、公開されることが決まりました。
東京で開かれたのは、厚生労働省が所管する戦傷病者史料館「しょうけい館」の有識者会議です。会議では、元川崎医療福祉大学教授の福田孝雄氏が座長を務め、研究者や医療関係者らが出席しました。
厚労省の担当課長「ことしは戦後80年という節目の年。戦傷病者やそのご家族の労苦を伝えるしょうけい館の役割もいっそう重要になってくる」
東京都内に住む鶴岡市出身の黒井秋夫さん。ホームビデオに映るのは、生前の父・慶次郎さんの姿です。
ホームビデオ「おじいちゃんピースしてくれ。早くしてくれよ」
黒井秋夫さん「反応しない」「年々こういう状態が進行」「何かの意思感じられない」
兵士として旧日本軍に従軍していた自分の父は戦後、PTSD・心的外傷後ストレス障害などの心の病に苦しんでいたのではないかー。
その思いを抱いた遺族たちは近年、交流会や証言集会を重ね、国による実態調査を求めてきました。
黒井秋夫さん「父は戦後、抜け殻のようなかたちになって孫に反応もできないような人生を終えた。PTSDの兵士の76歳の姿どうしてこうなったんだ誰の責任なんだ」
戦時中、かつて千葉県にあった国府台陸軍病院では精神疾患の兵士およそ1万人を秘密裏に収容。このうち8002人分のカルテの写しが現在も保管されていますが、戦争によって心に傷を負った旧日本軍兵士に関する実態の全容は未だ明らかになっていません。
こうした中、厚生労働省は今年度から、心の傷を負った旧日本軍兵士の実態調査に国として戦後初めて乗り出し、「しょうけい館」が、当時の資料の収集にあたりました。
有識者会議では、厚生労働省の担当者が、これまでの調査で精神疾患と診断された元兵士のカルテや、家族の体験記などが見つかったと報告しました。
そしてこれらの資料は、「しょうけい館」で来年2月ごろから常設展示されることが決まりました。また、常設展示に先駆け、戦後、心の病に苦しんだ元兵士の数や兵士の救護や治療に関する資料が、ことし7月から10月にかけて展示される予定となりました。
有識者会議・福田孝雄座長「現在残っている資料は数少ない。きょうの話を聞くと資料の収集はかなり進展していると思う。いろいろ調査されているので。展示は皆さんに理解できるようなものになるのではと期待している」
国による調査は、今年度で終了となります。厚労省の担当者は「しょうけい館」での展示を通して、心の病に苦しんだ元兵士やその家族のことを多くの人に知ってもらいたいとしています。