×

凶作水準「6月下旬なのにサクランボがない」 山形県内のふるさと納税や贈答用など影響広がる

2024年6月27日 18:33
凶作水準「6月下旬なのにサクランボがない」 山形県内のふるさと納税や贈答用など影響広がる

出荷量日本一を誇る山形県産サクランボ。しかし6月の暑さの影響で、収穫量は過去最低の水準となる恐れが出ています。園地では収穫されずに実が傷み、スーパーや、ふるさと納税の返礼品にしている自治体は、商品を提供できないなど影響が広がっています。

27日、天童市内のサクランボ畑です。多くの木で実が黒く変色したり、日に焼けてしぼんでいます。畑の所有者によりますと、6月に入ってからの高温により、佐藤錦と紅秀峰の生育が急速に進み、収穫が追いつかず、実が傷んでしまったということです。収穫量は例年の半分になる見通しです。畑の人は「こんな事態はめったにない。おいしいサクランボを届けられない」と肩を落とします。
県産サクランボは今シーズン、去年夏の猛暑の影響で2つの実がくっついた「双子果」が多く発生。双子果は売り物にならず、県は5月に実施した作柄調査で、今シーズンの予想収穫量を、平年より「やや少ない」1万2100トンと見込んでいました。
しかし、JA山形中央会によりますと、6月の高温の影響で、実が熟して柔らかくなる高温障害が発生。サクランボの収穫量は、当初の予想をさらに下回る可能性があり、春先の霜の影響で収穫量が過去最低の9160トンとなった2021年を下回る恐れが出てきましたです。

山辺町でサクランボ園地を営む沼尻淳さんです。

沼尻淳さん「温かくて水分がギュッとなって、これは完全に出荷できないし、売り物にもならない状態」

この園地では高温障害の影響で、今シーズンの出荷量が去年の3分の1程度に落ち込む見通しです。周辺の園地でも収穫の前に熟してしまった実が多いといいます。

沼尻淳さん「非常に今までの中でサクランボの収穫は難しかった。収穫した時は硬いなと思ったが、詰めている間に柔らかくなっちゃって」

山形市内のこのスーパーマーケットでは店頭からサクランボが消えました。

ヤマザワ松見町店青果バイヤー 石山諒さん「例年ですと、この売り場一面にサクランボが並んでいる状態ですが、ことしは入荷がなくて、モモやブドウなど夏果実で売り場を埋めている状況」

この店では6月上旬に販売用のパック詰めのサクランボの販売を始めましたが6月10日ごろから徐々に入荷が少なくなり、20日には、とうとう店頭に出すことができなくなりました。27日現在、贈答用も含めて商品が全くない状態です。

ヤマザワ青果バイヤー 石山諒さん「現時点ですと、どこの店もサクランボがない状態。10数年働いているが、こういった状況はない」

影響はふるさと納税の返礼品にも。寒河江市では返礼品として申し込みがあった3万3000件のうち、現時点で4割近いおよそ1万2000件が提供できない見通しです。
山形市も6万2000件の申し込みのうち、現時点で1万2000件に対応できないということです。東根市は6万5000件の申し込みのうち、およそ4000件が。また、天童市もおよそ2万7000件のうち、少なくとも4700件に送付できないということです。
影響が出ているのは主に佐藤錦と紅秀峰で、各市では、提供できない納税者に対し、代わりの返礼品を送ることや、今年の分のサクランボを来年に送ることを提案しているということです。

こうした状況を受け、JA山形中央会の折原敬一代表理事会長と県内サクランボ主産地のJAの代表らが県庁を訪れ、吉村知事に緊急の要望を行いました。

吉村知事「県としても由々しき事態だと思っている。きょう皆さまからいただいたご意見を踏まえ、いろいろとお話をお聞きしながらしっかりと対応していかないといけないと思っている」

要請書では、ことしの県産サクランボの予想収穫量が過去に例を見ない「凶作水準」になっているとして、園地の気温を下げるための水をまくスプリンクラーの導入など、高温対策への支援のほか、被害を受けた生産者の農業継続などに向けた県単独の無利子の資金創設など緊急の対策を求めています。

JA山形中央会折原敬一 代表理事会長「現時点で収穫量は例年から見て半分だろう。現状、大変厳しい数字になっていると言わざるを得ない。こういった状況に耐えられるような資材の提供が必要だろうし、人材確保の関係も含めた対応も大きな課題」

県は28日、緊急の対策会議を開き、現状の把握や今後の対策について協議する予定です。

    山形放送のニュース