鶴岡市内の循環バス路線再編で利用客5倍増 車両も小型化しバス停も増加 優良事例で国から表彰
乗客の減少や運転手不足を背景に近年、全国的に路線バスの廃止が相次いでます。こうした中、山形県鶴岡市内を走る循環バスがおととし、路線を再編した結果、利用者数がおよそ5倍に増えました。国から地域公共交通の優良事例にも選ばれた取り組みを取材しました。
鶴岡市内各地を走る循環バスは「庄内交通」が運行しています。庄内交通はおととし10月、鶴岡市と連携して循環バスのダイヤを再編成しました。その結果、ことし3月までの半年間のバス利用者は2年前の同じ時期と比べ5倍に増えました。
利用者「1週間に1回か2回利用凄く助かってます」「1時間に1便ぐるぐる回っているから最高に便利」
庄内交通が再編に向けて動き出したきっかけは4年前にバスの利用が低迷したことです。
庄内交通専務 髙橋 広司さん「路線バスは利用者が少なくなっている。全国的にそういった傾向がある。この地域でも同じようなことがあった」
国土交通省によりますと、利用者の減少や運転手の人手不足を背景に、バス路線は2020年度からの3年間で全国であわせて4628キロの区間が廃止されました。
庄内交通は市の協力のもと地域住民にバス利用についてアンケートしたところ、運行上の課題が浮かび上がったといいます。
庄内交通 髙橋さん「『生活にバスの時間帯が合わない』とか『運賃がわからない』『いろいろな部分で不安で乗れない』という声があり便利になれば利用してもらえるという考えのもと再編に取り組んだ」
再編前、循環バスは2つのコースでそれぞれ朝と昼、夕方の時間帯に2便ずつ運行していました。再編にあたっては住民の声を踏まえ、1時間に2便を目安に1コースにつき1日16便に増やしました。
また、65歳以上の単身の住民の割合が半数を占める区域を調べ、家からバス停まで歩ける距離にするためバス停を21か所増やしました。
これに伴い行ったのが車両の大きさの見直しです。
庄内交通 髙橋さん「再編の一番の特徴は車を小型化、ダウンサイジングして居住地、住宅街によりきめ細かく入っていけるような形にしたこと」
中型バスから12人乗りの小型車両に変更し、これまで入ることができなかった高齢者の多い住宅地を走れるようになりました。現在は再編前に比べコースを1つ増やして運行しています。
利便性を高めるため路線図にバス停の場所と付近にある医療機関やスーパーなどの施設を明記したほか、これまでは距離で変わっていた運賃をわかりやすくするため一律300円にしました。
利用者「小型の方が良いんじゃないですか。目的地まで行ける。観光物産館、役所、病院も通るしとても便利です」
土日の運行も始め、便数が増えたことで運転手の人件費や燃料費などの経費は増えましたが、利用者が増加し売り上げが増えているということです。
庄内交通 髙橋さん「利用者目線で分かりやすい移動手段を提供していくということが公共交通事業者としては必要なものだと考えている」
また、小型車両は中型バスに比べて経験が少ない人でも運転しやすく、導入後、新たに3人が運転手に採用されるなど乗務員不足解消につながることも期待されています。
この再編事業は今回、国土交通省から地域の模範となる優良事例に選ばれました。表彰式は12月16日に行われる予定です。