東北唯一 山形大学の重粒子線がん治療施設 「メディカルツーリズム」でも注目
山形新聞・山形放送が輝かしい功績を挙げた個人と団体をたたえる「山新3P賞」、ことしの受賞者の横顔を紹介しています。最終回は、進歩賞を受賞した山形市の「山形大学医学部東日本重粒子センター」です。
2004年に開発プロジェクトがスタートし、16年間の工事を経て、2020年12月に開所した「山形大学医学部東日本重粒子センター」。
東北唯一の重粒子線がん治療施設で、内部は「宇宙船」をイメージしています。
東日本重粒子センター岩井岳夫 センター長「帰ってくる必ずがんから生還するんだというメッセージを込めてこういうキャッチコピーでデザインしている」
「重粒子線治療」はX線などと比べてピンポイントで照射することが可能で、がん細胞を強力に死滅させ、周囲の正常な細胞や臓器へのダメージが少ないという特長があります。
2022年には「回転ガントリー」が稼働しました。従来は重粒子線をがん細胞に当てるため患者自らが体を動かす必要がありました。新たに導入した「回転ガントリー」は装置そのものが動くため患者への負担が減るのに加え様々な部位のがん細胞に重粒子線を当てることが可能となりました。
東日本重粒子センター岩井岳夫 センター長「患者も体を傾けた状態のまま10分20分は結構つらいこともあって基本的にあおむけかうつ伏せのまま治療を受けてもらえる」
センターでは2020年の開所から去年11月末まで、累計の患者数が2000人を突破しました。
前立腺がんの治療を終え現在、経過観察中の山形市の70代男性が「重粒子線治療」を受けた時の様子について答えてくれました。
重粒子線治療を受けた男性「2~3分くらいで照射が終わった。短時間の間に治療が終わってなんの苦もなかった。当たっているという感じはしない分からなかった」
およそ150億円を投じ整備されたセンター。維持管理していくには安定した治療実績が必要です。センターでは継続して患者を受け入れるため主に県外を対象にした積極的なPRが重要と考えています。
東日本重粒子センター岩井岳夫 センター長「県内での認知度はものすごい高い。これが一歩県をこえるとあまりまだ知られていない。秋田でセミナーを開催してその後青森でも開催した」
そしていま、注目され始めているのが、医療と観光を融合させた「メディカルツーリズム」です。おととし(2023年)には、先進医療を受ける人とその家族を対象にした旅行プランなどが観光庁の事業に採択されました。
「病気を抱え慣れない土地への移動宿の手配・食事など調べて手配するのはかなりのストレスになると想像される。そこで治療以外の全てに対応治療する施設がある地元の旅行会社ならではの手厚いフォローをする」
さらに国内だけではなく先進治療を目的にした医療インバウンドの拡大にも注目しています。センターでは言語の壁など職員の負担も考慮しながら、徐々に外国人患者の受入れも始めています。
東日本重粒子センター岩井岳夫 センター長「長きにわたってできるだけたくさんの患者を治してあそこに行けば安心だというような評価をいただけるのならそれが一番理想」
重粒子線治療を受けた男性「東北に1か所ですからね県外にあったら治療するにも不安だったと思う身近にあって大変よかった」
先端技術が詰め込まれた東日本重粒子センター、県内外、さらに国の内外でがんに悩む患者を1人でも多く救うため、山形の地から最新の医療が続けられています。