法廷で男と“初対面”…ロマンス詐欺「結婚信じ仕事もやめた」被害女性の憤りと後悔 山梨
相手の恋愛感情につけ込む「ロマンス詐欺」。最近はSNSで知り合い、相手とは一度も会うことなく現金をだまし取られるケースが増えています。結婚をちらつかせて現金をだまし取った男の裁判を傍聴した被害女性が取材に応じ、男への憤りと後悔を語りました。
山梨県の富士北麓地域に娘と母の3人で暮す40代のAさん。三重県に住むアルバイト、清水孝之被告(48)にSNS型ロマンス詐欺の手口で、約130万円をだまし取られた被害者です。
清水被告の顔を見たのは、28日に傍聴した初公判が初めてでした。法廷での清水被告は「ゲームで課金したかった」などと動機を語るだけで、被害者への謝罪を口にすることはありませんでした。
ロマンス詐欺被害にあったAさん
「(裁判で)被害者に対して“すいません”とか“申し訳ない”という言葉が一言もなかったので、そこが引っかかる。今となってはお金が欲しかったんだろうな、ただそれだけだったんだろうなと思う。向こうの好意というのも全部(金)を出させる手段というか…」
Aさんが清水被告と知り合ったのは趣味のオンラインゲームがきっかけでした。意気投合した2人はその後、LINEや電話でのやり取りを2年ほど続けました。清水被告は「ハル」と名乗り、自らを「都内在住の社長」と説明していたといいます。
ロマンス詐欺被害にあったAさん
「(自分はロマンス詐欺に)正直ひっかからないよねと思ってました。“分かるでしょ”って。実際、被害にあって“こんなに分からないんだと”。手のひらで転がされてたなって感じ。向こう(清水被告)も私の性格を分かった上で『多分こういうことに弱いんだな』『こう言えばいいんだな』ってことが段々つかめてきたから、ここまで金額も大きくなってしまった」
AさんのLINEには清水被告との生々しいやり取りが今も残されています。「俺と一緒になる気ある?」「恋人でしょ?」などと結婚をちらつかせ、言葉巧みに好意を抱かせた清水被告。その言葉を信じたAさんは「兄貴に借金があって金が必要」「肺がんになった、足が痛くてマッサージ機が欲しい」などと金を求めてくる清水被告の口座に13回にわたり、132万円あまりを振り込みました。
さらに起訴されている以外にも150万円分の電子ギフト券を購入し、その情報を伝えたといいます。Aさんにとっては将来、結婚する人の金を立て替えている感覚だったといいます。
会ったことのない相手に好意を抱いたことを、Aさんは次のように振り返りました。
ロマンス詐欺被害にあったAさん
「結局、向こうから(結婚しようなど)具体的な言葉を言われたこともあるし。みんなLINEをしてると思うが、頻繁にやる人は限られるじゃないですか。頻繁に(LINEを)やることによって、“相手にとって必要と思われてるのかな”ということが自分の中で大きかった」
清水被告と結婚できると信じたAさんは仕事をやめ、子どもの転校準備も進めていたといいます。さらに金を工面するため身内や友人から借金をしたといい、周りに迷惑をかけてしまったと今も自分を責め続けています。
ロマンス詐欺被害にあったAさん
「(清水被告の要求を)私が断れなかったことが悪いと思うが、無理してでも(金の送付を)やってしまった私にも責任があるかなと思う。相手の真相、本当にその人なのかとか、会ってみてちゃんと分かってから色々やるべきだったと思う」
清水被告を信じる一方、「詐欺かもしれない」という思いも抱いていたというAさん。警察に相談したことで解決につながり、今はほっとしているとも話してくれました。
警察では「ささいなことでもいいので、まずは相談してほしい」と呼びかけています。