×

【独自解説】「若い人でも踏み間違えはしている」それでも事故に至らないワケは?高齢ドライバーによる“危険運転”相次ぐ背景に、認知機能だけではない高齢者特有の“意外な盲点”

2024年6月12日 17:00
【独自解説】「若い人でも踏み間違えはしている」それでも事故に至らないワケは?高齢ドライバーによる“危険運転”相次ぐ背景に、認知機能だけではない高齢者特有の“意外な盲点”
高齢ドライバーによる事故、相次ぐ

 相次ぐ高齢ドライバーによる交通事故。中でも多いのが、アクセルとブレーキの“踏み間違い”。また、年間に約200件起きるという“高速道路逆走”の約7割が高齢者との報告も…。他人事ではない“事故に繋がりやすい運転操作”とは?事故を防ぐため推奨される“後付け機器”とは?免許返納を検討すべき“認知機能レベル”とは?交通事故鑑定人・中島博史氏の解説です。

 2019年に起きた“池袋暴走事故”以降、高齢ドライバーの交通事故発生件数は減少傾向にありましたが、コロナ禍が明けたこともあるためか、徐々に増えています。2024年6月11日には東京で、80代の男性が運転する車が暴走して2人がケガ。また、この3日前には奈良県で、65歳の女性が運転する車がレンタルスペースに突っ込む事故が発生。さらに、その3日前には埼玉県で、84歳の男性が運転する車が小学生の列に突っ込むなど、相次ぐ高齢者の事故。このうち、東京の80代男性と奈良の65歳女性が「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」と供述しています。

Q.「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」という言葉を、本当によく聞きますよね?
(交通事故鑑定人・中島博史氏)
「実は、若い人でも踏み間違えはしているんです。ただ、若い人の場合は間違えたことに気付いてからのリカバリーも早いため、事故に至らない。どうしても高齢者になると、間違いに気付くこと、あるいは間違った操作から正しい操作に直すまでに時間がかかることから、事故に繋がりやすいです」

Q.踏み間違いでの事故が増えたのは、オートマチック車が普及したからですか?
(中島氏)
「そうですね。あと、ペダルの踏み方です。踵を軸にしてアクセルとブレーキを踏み替えていくのが良いんですが、高齢になると足首が硬くなって、踵ごと上げる踏み方をして強い力で踏み込むので、踏み間違えたときに踏み替えるのが非常に難しくなります」

 2021年から新型車への搭載が義務化されているのが、衝突被害軽減ブレーキが『止まる』をサポートする、いわゆる“自動ブレーキ”です。また、『踏み間違い時の急発進抑制などをサポート』『車線逸脱警報で、はみ出さないをサポート』『先進ライトで危険を早期発見』といった“サポカー”も、特に高齢運転者に推奨されています。

 ただ、道路交通評論家・中村拓司氏によると、「高齢者が運転している車は、年式が古い。“慣れた車を運転するほうが安全”という考えもあり、新しい車を買うのが敬遠されがち。そんな方には“後付け機器”を推奨したい」ということです。

 “後付け機器”とは、自動車用品店などで販売されている『ペダル踏み間違い急発進抑制装置』のことで、踏み間違い時の急発進抑制などをサポートします。障害物を検知して、車止めがある場合は乗り越えない程度に抑制してくれるなど、機能は車種によって様々です。例えば、アクセルの急な踏み込みを検知すると強制的にアクセル信号をカットする『ペダルの見張り番Ⅱ(オートバックス専売)』は国交省にも認定されていて、取付込みで4万4000円。その他、本体+取付価格5万円程度で各社販売中です。

Q.これは付けておいたほうが良いですよね?
(中島氏)
「ゆっくりのところから急にアクセルを踏んだ時に作動して、スピードを出させないという仕組みです。輪止めがあると乗り越えるような力を出せませんし、輪止めがなくて進んでしまう時にも、クリープ現象で進むだけですので、対処する時間が十分取れるようになります」

 また、“踏み間違い”だけではなく、高速道路などでの“逆走”も増えています。全国の高速道路では年間200件ほど起きていて、約7割が高齢ドライバーによるものだということです。

 2024年6月6日にも、愛知県の伊勢湾岸自動車道・飛鳥IC付近で、逆走車が映像に捉えられました。3車線の真ん中を走り続ける逆走車に、慌てて車線変更する車も…。1kmほど逆走し、大型トラックとあわや正面衝突といった場面で停車しました。しかし、約10秒後に到着した高速道路交通警察隊が交通誘導しようとすると、再び逆走。慌てて追いかけた隊員は逆走車の運転席に乗り込み、車を正しい方向に戻しました。

 逆走の様子をリアルタイムで確認した『NEXCO中日本』の林修平さんは、「出口から進入してきて、逆走で入って来るとETCのバーは開かないんですけど、それを押しのけるように強引に突破してきている状況でした。いつ事故が起きてもおかしくないな、と思いました」と話しています。

 この逆走車を運転していたのは50代の男性で、迎えに来た家族に引き取られたということです。警察は、「事故が起きていないため、これ以上調べを進める予定はない」としています。

Q.この運転手は、ずっと逆走の認識がないということですよね?
(中島氏)
「恐らく、自分は左側車線を走っているつもりで、“対向車が、はみ出してきている”という認識で走っていたのだと思います。恐ろしいですね。道路の表示・標識などには『逆走しないように』とかなり注意喚起されていますので、よほどの見落としがない限り、逆走しないと思うのですが…」

 道路交通評論家・中村氏らが作成した『症状別 認知機能低下・事故リスク』の指標によると、“車のキー・免許証を探し回る”“好きだったドライブの回数が減る”“汚れが気にならず洗車しなくなる”といった症状の人は『初期症状の可能性』、“よく通る道で曲がる場所を間違える”“右左折時、歩行者出現でハッとする”といった症状がある人は『事故リスクあり』、“逆走や、運転中に気が遠くなる”といった症状がある人は『免許返納の検討を』となっています。

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年6月11日放送)

最終更新日:2024年6月18日 19:59
    読売テレビのニュース