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【なぜ】“令和のコメ騒動”価格2倍も客が殺到!大阪・吉村知事「備蓄米の放出」要望も政府は慎重姿勢 店頭からコメが消えた背景とは?

2024年9月1日 8:00
【なぜ】“令和のコメ騒動”価格2倍も客が殺到!大阪・吉村知事「備蓄米の放出」要望も政府は慎重姿勢 店頭からコメが消えた背景とは?
大阪市内のスーパーマーケット(8月20日)

 全国的に広がる「コメ不足」。大阪府の吉村知事は、約100トンある政府の備蓄米を小売店などに放出するよう要望した一方、国側は「慎重に考えるべき」と否定的な姿勢を示しています。そもそも備蓄米とはどのようなもので、コメが店頭から消えている背景には何があるのでしょうか。

■5キロで3500円超!価格は去年の2倍でも続々と買い求める来店客

 8月28日、大阪市内のスーパーマーケット「フレッシュマーケットアオイ昭和町店」には、三重県産の今年の新米が店頭に並びましたが、販売価格は5キログラムで3650円。去年の同じ時期に比べると、約2倍の価格だといいます。

 それでも、コメの品薄感に加え、台風の接近も重なり、開店と同時に来店客が次々と買い求めていました。

 購入した男性は「コメを切らしていて、なかなか売ってなかったので、ちょっとくらい高くても買ってしまう。(台風も来ているので)2~3日くらい外に出なくていいようにはしようと思っている」と話しました。

 アオイの内田寿仁社長は現状について「少しずつ入荷はあるが、それもいつ入るか分からない。どれくらいの量が入ってくるかも、その日にならないと分からないような状況が続いている」と語ります。

 大阪府によりますと、府内の小売店などで米の入手が難しい状況が続いていて、緊急で実施した抽出調査では「大阪府内の約8割の小売店などで、品切れが発生している」という結果が出ています。

■吉村知事「眠らせておく必要はない」と要望も…政府は備蓄米放出に否定的

「需給がひっ迫しているのであれば倉庫に眠らせておく必要はない」

 26日、政府に対して備蓄米を開放するよう求めた大阪府の吉村知事。

 翌日の27日、坂本農水相は「今後順次回復していくものと見込んでいる。民間流通が基本となっているコメの需給や価格に影響を与える恐れがあるため、慎重に考えるべき」と備蓄米の放出に否定的な見解を示しました。

 これに対し、吉村知事は「需給がひっ迫し、価格は急騰している。(農水省は備蓄米開放で)価格が下がるというが、むしろなぜそれが否定されるのかがよくわからない。現場感覚からすると少し違うのではないか」と反論。政府側との応酬が続いています。

■政府の備蓄米だけでなく「民間在庫」も…年間約4850万人分のコメが眠る

 政府の備蓄米とは、1993年の大凶作により店頭から日本米が消えた、いわゆる「平成の米騒動」をきっかけに1995年から始まったもので、毎年約20トンのコメを買い入れ、約5年保管したうえで、飼料用などとして市場に放出しています。

 緊急的な放出は、農水省内での議論を踏まえ、農水相によって可否を最終判断することになっていて、東日本大震災の際にも行われました。

 ただ、政府が備蓄米放出に慎重になる背景には、実際の放出には時間がかかることや、今後出回る新米の流通による回復が見込まれることに加え、「民間在庫が十分にある」ことが要因となっているとみられています。

 民間在庫は6月末時点で156万トンと推計され、備蓄米とあわせると約4850万人分の年間のコメにあたる量が眠っているのです。

■在庫が一番少ない8月に「地震」「台風」のダブルパンチ

 では、なぜ眠っているコメが私たち消費者に届かないのでしょうか。

 民間在庫とは、生産農家や農協、卸売業者、小売業者が保管するコメを指します。そもそも、去年の猛暑によりコメの収穫量が減り、コメの不足が指摘されていました。

 8月は米の在庫が一年で一番少ない時期ではあるのですが、今年は8月8日、日向灘で起きた地震による「南海トラフ地震臨時情報」が発表されたことで、消費者が「備え」への意識から品薄状態になりました。

 さらに、お盆で農協や卸売業者が休みに入る中、台風7号の接近が重なって物流が滞った影響もあり、コメが届かなくなってしまったのです。坂本農水相も26日、「集荷業者や卸売業者に対し円滑な販売をお願いした」と語っています。

■焦らずに家のコメの量の確認を…キーワードは「2週間」

 品薄の状態が続くと、どうしても「買いだめしておかないと」という意識が生まれてしまいますが、流通評論家の常本泰志さんによると、「焦らずに家にあるコメの量を確認することが重要」だといいます。

 一つのキーワードになるのが流通量が回復すると見込まれている「2週間」という期間です。1日の消費量が1合であれば2週間で約2.5キロ、2合の場合は約5キロ、3合ならば約7.5キロあれば、焦らずに購入しなくても十分な量が確保できているといえます。

 また、コメは購入してから20日以降はおいしさが落ちるといい、気温が高い状態が続けば虫が発生する可能性もあることから、災害備蓄には不向きな面があります。焦らずに必要な量を購入することが安定供給にもつながります。

 政府も大阪府も、9月中には流通量が安定するとして、落ち着いた消費行動をとるようよびかけています。

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