「その人の言葉がなければ」千賀滉大 プロ入りのきっかけをつくった1本の電話
■スカウト部長「年賀状は2000枚くらい」
千賀投手は最速164キロのストレートと、“おばけフォーク”と呼ばれる、鋭く落ちるフォークボールを武器に、メジャーリーグでも三振の山を築き、メジャーデビューから2連勝を挙げています。
そんな千賀投手も、高校時代は無名。
ソフトバンクはどのように発掘したのか、当時スカウト部長だった小川一夫さんは「人脈を全国にどうやって作っていくかが、プロのスカウトとしては非常に重要な要素。どこにどんな選手がいるか情報をつかむ上で、野球に関わっている全ての人とつきあいをしていく。一番多いときで年賀状は2000枚くらい出していました」と語ります。
■1本の電話―「面白いピッチャーがいる」
すると、そのもとに選手の売り込みがあったと言います。
小川「名古屋にベースボールショップ西正というスポーツ店があるんですけど、1本の電話が入ってきて、『小川さん、蒲郡に千賀という面白いピッチャーがいる』と連絡がありました」
千賀投手を紹介してくれたのは、野球用品店の店長、西川正二さん。
撮影された動画を見た小川さんは、無名の千賀投手に大きな可能性を感じたと言います。
小川「ピッチャーとしての資質。関節の柔らかさ、使い方の良さが、千賀投手はすばらしい」
■育成出身から、大投手、そしてメジャーへ
その見立て通り才能は開花。高校時代140キロ台だったストレートは、最速164キロにアップ。磨いたフォークは“おばけフォーク”と呼ばれる武器になりました。
2016年からは7年連続2ケタ勝利。さらに2020年には最優秀防御率(2.16)、最多勝(11)、最多奪三振(149)の投手3冠に輝くなど、日本球界きっての大投手になり、2023年に育成出身選手として初めてメジャーリーグデビューを果たしました。
しかし、千賀投手のプロ入りのきっかけを作った西川さんは、プロでの千賀投手の活躍を見ることなく、亡くなりました。
千賀投手は「僕自身は面識もなくて、名古屋のスポーツ店にも行ったことがない状況でした。その人(西川さん)の言葉がなければ、プロ野球への一歩目が切れなかったのは間違いないと思います。背番号が変わったり、1軍で投げられるようになったときに、その方の話を聞いて挨拶に行きたいと思っていたら実は…という話を聞きました。『あいつは元気に野球をやっているんだな』と思ってもらえるプレーを見せられたら」と語っています。
※この記事は2020年11月19日、『news zero』で放送された内容を再構成しています