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「僕も人間なので…」順天堂大オリンピアン三浦龍司の葛藤 悩む大黒柱の背中を押した“監督の言葉”で最後の箱根駅伝へ

2023年12月30日 18:05
「僕も人間なので…」順天堂大オリンピアン三浦龍司の葛藤 悩む大黒柱の背中を押した“監督の言葉”で最後の箱根駅伝へ
長門俊介駅伝監督(左)と三浦龍司選手(右)
2024年1月2、3日に行われる第100回箱根駅伝。順天堂大4年生の三浦龍司選手は、駅伝主将として最後の箱根路へ挑みます。世界の舞台で戦うキャプテンだからこその葛藤。そんな悩む大黒柱の背中を押した存在がいました。

■「僕も人間なので…」かかる期待に本音

2021年の東京五輪、当時2年生だった三浦選手は、3000m障害に学生オリンピアンとして出場。決勝へ進むと、この種目で日本選手初の7位入賞を果たし、学生ながら世界で戦えることを示しました。

その三浦選手を支えているのが、順天堂大・長門俊介駅伝監督です。学生時代は4年連続で箱根駅伝に出場し、第83回大会では総合優勝を成し遂げました。3000m障害の選手ではありませんでしたが、練習メニューを考え、熱心にサポートします。

三浦選手からは、「自分の意欲やチャレンジしたいことを、同じような熱量や視点で取り組ませてもらえた」と絶大な信頼。進むべき道をともに切り開く、伴走者のような存在です。

三浦選手は、学生ながら陸上界で常に注目の的。しかし、これまでに出場した3度の箱根駅伝では区間10位、11位、12位といずれも区間2ケタ台でした。

それには世界の舞台で活躍する三浦選手だからこその理由があります。夏にチームメートが駅伝シーズンに向けて走り込む最中、三浦選手は9月まで海外の大会に出場。短い準備期間で箱根駅伝の長い距離に対応することは、容易ではありません。長門監督は、「走り込める時期の練習が影響してくれるので、難しい」と頭を悩ませます。

三浦龍司選手も、ある日のインタビューで、「“オリンピアンだから”とひとくくりにしたい気持ちはわかるが、僕も人間なので仕方がない。期待に応えられればそれがベストですが、応えられないことも当然あります」と吐露。チームに貢献したいと思いつつも、十分に果たせないことにもどかしさを抱えていました。

■世界の舞台で戦うキャプテンだからこその“葛藤”

前回大会、輝く4年生の姿がありました。4年生として走った5人は、区間賞1人に、全員が区間1ケタの快走で総合5位に貢献。レース後、カメラが三浦選手を追うと、走り終わった4年生に「お疲れ様です。マジでかっこよかったです」と笑顔で抱擁する姿がありました。

「ラストランということで、なんでそんなに開きが出るんだろうと不思議で、一番奮起していた4年生の姿を見ていると、4年生って何が違うんだろうって感じた」

その答えが知りたくて。新チームとなり三浦選手は、志願してキャプテンに就任。激闘から一夜明けた1月4日の朝に、順天堂大“伝統のエール”の声かけをする姿がありました。

新たな重責を担いながらも、3000m障害でこれまで以上の走りを披露。6月に行われた世界最高峰のリーグ戦で日本記録を更新して2位。8月の世界選手権では6位入賞を成し遂げます。

ところが世界で活躍する一方、練習のほとんどが仲間と別メニュー。海外遠征のためにチームを離れることも多く、キャプテンとして葛藤を抱えていました。

「自分が見ていないところでみんなはポイント練習をやっていて、そもそも声をかけられないし実態も見られない。キャプテンとして機能していない、正直何もできていない。ふわふわしているのは自分でも感じていましたが、どうすればいいのかっていう…」

悩みを抱えたまま迎えた駅伝シーズン。10月の出雲駅伝で出場はなく、チームは10位と苦戦。11月の全日本大学駅伝では、三浦選手が区間8位に終わり、チームも11位と4年ぶりにシード権を逃しました。

チームのために何もできずにいる。キャプテンとして無力感を味わう三浦選手に、長門監督は「みんなの気持ち、スイッチの入り方次第。そのスイッチを入れてあげるのがキャプテン」と言葉を送りました。

■仲間に伝えた思い オリンピアン×キャプテンとして挑む最後の箱根路

監督の言葉を受けて、11月の全日本大学駅伝の後に、チームメートへ思いを伝えます。

「出雲・全日本と僕自身すごく悔しかったし、まだまだこんなはずではない。みんなの力の高さは他の大学と比べても遜色ないものがあると思う。これだけの強さを持っていると証明していけるように、残りの1か月半やっていきましょう」

練習では先頭を走り、仲間とのコミュニケーションを大切にするなど、言葉だけでなく背中でもチームをけん引。三浦選手の姿勢によって徐々に仲間たちのスイッチも入っていきます。2年生の村尾雄己選手は、「チームで戦う意識が一気に固まっていった」、1年生の吉岡大翔選手は、「コミュニケーションが増えて、チームとしての雰囲気が良くなってきている」と仲間も証言。キャプテンの行動一つでチームは変われる、三浦選手にそう気がつかせた監督からの言葉でした。

キャプテン就任以降、三浦選手が書き留めてきたノートがあります。そこには、「みんなが持っている力を最大限ぶつけて満足できるようにしたい。そう思ってもらえるようにしたい」と仲間への思いがつづられていました。

重責を背負い、迎える最後の箱根路。三浦選手は、「達成感や充実感を全員で味わいたい。この1年の走りをぶつけて、区間賞を目指していきたいです」と決意。キャプテンの言葉に、もう迷いはありません。

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