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中澤が聞く 鈴木武蔵が受けた差別…後編

2021年6月5日 18:09
中澤が聞く 鈴木武蔵が受けた差別…後編

◇日本テレビ「newszero」
~美容室に行けない…鈴木武蔵差別を語る~後編

■トラウマを払拭してくれた仲間の存在

肌の色の違いでの差別について、その体験を赤裸々に告白したサッカー鈴木武蔵選手。幼い頃、美容室で受けた心の傷を引きずり、プロ入り後も、坊主。髪を自分でそり続けていました。

そのトラウマを克服できたのは、あるチームメートのおかげでした。

中澤「今はすごくオシャレな髪形をされてると思うんですけど、どんなきっかけで美容室に行くようになったんですか?」

鈴木「アンダーの代表からずっと一緒だった川口尚紀選手(当時・新潟、現・柏レイソル)。ロッカールームとかでも話していた。『行きつけの美容室で知り合いだし、行きやすいんじゃない?1回行ってみる?』ということでそこで初めて美容室に行きました」

中澤「誘われたとき、どんな気持ちでした?」

鈴木「嫌でしたよ、やっぱり。表では何も言ってなくても、俺らが帰った後に言われるだろうなとか」

中澤「担当された美容師の方の反応はどうだったんですか?」

鈴木「すごいいい人で『癖があるんだね、全然大丈夫。横切って、上とかどうする?そのまま残す?』みたいな感じで。フランクな感じで来てくれたのが僕にとってはすごく嬉しくて。それまで重く思いつめていたのは何だったんだろうと思いました」

中澤「心が晴れた?」

鈴木「トラウマを克服できた。自分を受け入れられたっていうのが一番大きいです。やっとそこからも何も気にせずに美容院に行くことができました」当時のことについて、美容室に誘った川口選手は。

川口尚紀選手(以下、川口)「武蔵も髪を切りたそうにしていたのは当時あって、でも1人で行けない感じがしていたので。僕が誘って一緒に行った記憶がありますね。武蔵の中でトラウマがあって、それを克服できるきっかけになれたのならうれしいです」

その後は、いろいろな髪型を楽しむようになった鈴木選手。川口選手もその変化を感じていました。

川口「髪形が変わったことで、より自信を持つ感じは感じました。そこからどんどんいろんなところで良さというか自分の中で追求していってる感じがする」


■今でもある差別

今でもアスリートに対する人種差別は後を絶ちません。バスケットボールの八村阿蓮選手はSNSで差別的な発言を受けたことを告白。兄・八村塁選手も「こんなの毎日のようにくるよ」と反応しました。

鈴木「今回、八村選手が何度もあった中で1つを出したのだと思う。出したことによって差別が今でもあるという事実をみんな認識できますし、自分たちの国は差別がないって思っている方もいるので。アスリート側が伝えることによって差別があるということをみんなが認識できて、そこからより良い社会になっていくんじゃないかなと個人的には思います」

鈴木選手にもSNSで心ない言葉が――。
「あの見た目で日本代表なんて」

そのとき、鈴木選手が返したツイートは――。
「サッカーで見返すしかないですからね。そうやって小さい頃からやってきたので。お父さんの血がなかったら日本代表になれてなかったと思いますし、ハーフである事、日本という素晴らしい国で育った事に感謝してます」(鈴木武蔵選手ツイッターより)

鈴木「内容を見たときはイラっとしましたし、本当に悔しいなと思いましたが、他の人種の人が入るのが少し許せない部分もあったと個人的には思っていて。僕も日本がすごく好きなので、多分その言った人も日本がものすごく好きで、その人と同じ気持ちでいるよっていうのを伝えたかったですね。見た目じゃなくて中身の部分で同じ日本人として共に歩んでいけたらいいなという思いで、その時はツイートを返しました」


■差別を受けても…ひとりじゃないと伝えたい

鈴木選手は自身の経験を生かし、母子家庭の子供たちや児童養護施設の子供たちを招待して、「MUSASHI CUP」というサッカー教室を開催しています。

鈴木「そういった子どもたちは自分の感情に一歩入ってこられるのを嫌がるんですよね。僕もそうだったんですけど、親であっても言いたくないことを他人には絶対、僕も言えないので。現役のサッカー選手と一緒にサッカー教室をやることによって、もしかしたら次の日の学校で『俺、サッカー選手と一緒にサッカーやったんだよ』っていう、ちょっとの自慢だったり次の日が楽しくなるようなことを僕は届けたくて。いじめや差別をなくすんじゃなくて、ひとりじゃないんだよっていうのを伝えるのともっと楽しく過ごしてほしいっていう思いで開催しました」

中澤「今後どんなサッカー選手になっていきたいですか?」

鈴木「どんな批判にも負けずに挑戦していきたいなと思っています。その先で日本を代表する本当のエースストライカーになりたいです」