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羽生結弦「五輪は幸せな場所」「悔し涙流した選手の分まで頑張りたい」荒川静香さんに語った3度目の五輪「僕のアクセルでいたい」

2022年2月17日 12:11
羽生結弦「五輪は幸せな場所」「悔し涙流した選手の分まで頑張りたい」荒川静香さんに語った3度目の五輪「僕のアクセルでいたい」
14日に対談した男子シングル羽生結弦選手と荒川静香

北京五輪フィギュアスケート男子シングル4位の羽生結弦選手と、日テレ系五輪メインキャスターの荒川静香さん(トリノ五輪金メダリスト)が14日、北京五輪国際放送センター内にある日本テレビのスタジオで対談しました。

この対談は、14日に行われた羽生選手の記者会見の直後に実施。スタジオへ入ってきた羽生選手は、スケート界、そして地元宮城県の大先輩である荒川さんを前にし、「先輩!先に座らないと…」と着席を促します。お互いが譲り合う中、2人は「せ~の!」といって仲良く着席しました。

 ◇   ◇   ◇   ◇

荒川さん
「五輪を経験してみて、羽生選手にとっての五輪の素晴らしさ、難しさ、それぞれいかがでしょうか?」

羽生選手
「やっぱり五輪は色々な方々が見てくださったり、フィギュアにふだん興味ない方も含めて見てくださる場所なので、そういう意味では応援の力がすごいですよね。そしてその応援の力もすごいですけど、スタッフさん含めて色んな方々が本当の意味で力をくださるというか、サポートしてくださるってことでもやっぱり五輪ってすごい舞台だなと思います」

■フリー直後に荒川さんには明かしていた足首の状態…五輪という舞台が羽生選手を跳ばせた

14日の記者会見で羽生選手は、「(フリーの)前日に4回転半アクセルの練習中に捻挫した。普通の試合だったら棄権していた。ドクターには10日絶対安静と言われた」と報道陣の前で公表。しかし実は10日のフリー直後に取材エリアで行われた荒川さんのインタビューで羽生選手は、「もう右足の感覚がない状態でやっていた」と右足の状態について本音を漏らしていたのです。

許容量以上の痛み止めを服用しながら臨んだフリーの演技でした。羽生選手は、痛めている右足で最高難度の大技4回転アクセル(4A)を跳びますが転倒して失敗。羽生選手の4Aは回転不足の判定となりますが、国際スケート連盟(ISU)公認大会で初めて認定された形となりました。

羽生選手は、「僕だけが特別ではなく、みんな生活の中で何かしら挑戦している。挑戦を大事にしてここまで来た」と言います。94年ぶり五輪3連覇という目標をかかげて挑んだ3度目の五輪は4位という結果でした。羽生選手が3度目の五輪で感じた思いを聞きました。

荒川さん
「五輪はどんな場所でしたか?」

羽生選手
「僕はやっぱり五輪は幸せな場所だなって思ってます。この舞台に立って滑っていること自体特別なことですし、全員ができるわけではないので。実際この舞台に立てなくて悔しい涙を流した選手がいたことも僕は知ってるし、その人たちの分まで頑張りたいと思える舞台ですね」

荒川さん
「4回転アクセルへの挑戦は、『他のジャンプの延長線上ではない』と思いましたが、どうでしょうか?」

羽生選手
「例えばトウループ、サルコウだったら4回転半回るんですよね。何回か4回転半のために5回転を練習していたこともあるんですけど、そのとき4回転半回るんです。ただやっぱりアクセルは回転の方法論がぜんぜん違った。他の選手たちにとっては技術的に似てるとか、同じように回れる選手もいるかもしれないですが、僕のアクセルではそうではなくて。だからこそ『僕、羽生結弦のアクセル』になっていたと思いますし、その羽生結弦の(アクセルの)延長線上に、ちゃんと4Aがあったことは僕にとっては誇りです」

■『羽生結弦のプログラム』が必要…あれが僕の全て

ショートプログラムで8位と出遅れた羽生選手はフリーの予定構成を、去年12月の全日本選手権からジャンプの基礎点を4点あげる攻めの姿勢を見せました。

かつて「男子シングルで3連覇という権利を有しているのは僕しかいない」と話した羽生選手の勝負のフリーの曲は『天と地と』。戦国武将の上杉謙信を主役にした大河ドラマのテーマ曲です。最後まで挑戦する姿勢で挑んだフリーの演技は、「自分の生き様というか、それにふさわしい演技だった」と、自身を上杉謙信にたとえて、会見では振り返っています。そんな北京五輪の挑戦について聞きました。

荒川さん
「挑戦してよかったですか?」

羽生選手
「どうだろう、過去の自分が答えるんだったら嫌だったって思うけど、自分のうれしさに比べて苦しさの方が何倍も多かったので、だからそういう意味では良かったのかどうかわからないけど、競技のフィギュアスケートを続けていく上で4Aがあったからこそさらに表現やスケーティングを突き詰めてやってこられたし、そういう意味ではよかった」

荒川さん
「勝負しながらの挑戦が、『さすが羽生結弦選手』だなと思いました。どっちかをかなえるのは難しいのに、両方この五輪では挑みましたね?」

羽生選手
「やっぱりルッツとかループをいれて、前半サルコウ、そのあと助走なくトリプルアクセル、後半トウループ、トウループ。そういう構成はできなくはない、練習していれば。ただそれは僕じゃなくていいかなっていう。『羽生結弦のプログラム』としてそれが必要なのかなと思うとなんか違う気がしてる。アクセルを入れて勝ちたいって強く思ってしまいました」

荒川さん
「体さえ整えば完成もみえるのでは?というところまでアクセルは来ましたが、この挑戦は?」

羽生選手
「僕のアクセルの理論で、自分の、羽生結弦のアクセルを保持したままで最高点には本番でできたと思っています。もしかしたら違う技術をとり入れたら回り切れるかもしれないし、着氷時にうまく着氷すればできたかも。でもそれは僕じゃないので。なんか…そんなアクセルだったら僕はいらないって思うんです。やっぱり僕のアクセルでいたい。だからある意味では納得してますし、あれが僕の全てだったかなと今は思っています」

14日の会見では、明確にエキシビションへ出場するとは口にはしていませんが、連日練習を行っている羽生選手。「やっぱりここで滑りたい」という思いとともに、まだ痛みの残るその右足で臨むエキシビションは、北京五輪の大会最終日に行われます。