大谷翔平はなぜ三振がとれるのか?元同僚・鶴岡慎也が分析「バッターを見る目も超一流」
■出会いの挨拶から印象的
大谷選手は日本時間10日のアストロズ戦で7つの三振を奪い、ベーブ・ルースさんが持つメジャー通算奪三振数『501』を抜き、507奪三振をマーク。奪三振率もリーグトップの12.91を誇ります。
そのスゴさについて語ってくれたのは、侍ジャパンでプルペンキャッチャーを務めていた鶴岡慎也さんです。
2002年ドラフトでプロ入りした鶴岡さんは大谷選手の10年先輩。大谷選手がルーキー時代、最初にされた挨拶について「私が三菱重工横浜という社会人野球出身なんですけど、大谷選手のお父さんも三菱重工横浜製作所野球部の出身ということで、『父が鶴岡さんの先輩なんですよ』と、まだ高校生の少年が、そんな礼儀正しく丁寧に挨拶してくれるんだとちょっと感動しましたね」と振り返ります。
■「確率は悪い」努力でつかんだストレート
2013年2月、高校卒業前の大谷選手は1軍キャンプで初ブルペンに臨みました。それを受けたのは、当時プロ11年目の鶴岡さん。
当時の感触について「指にかかった160キロぐらいのストレート、なかなかそういう速い球を投げるピッチャーいなかったので、久しぶりに受けた感覚。ダルビッシュ投手以来ぐらいの感覚だったので、それをまだ高校を卒業していない選手が投げるのはすごいと思いました」と話します。
一方で「すごい球を投げるけど、確率はものすごく悪いなと思いましたね。5球に1球ぐらいだったんですよね、指にかかったストレートがちゃんとミットの構えたところに来るのは」と、制球には伸びしろがあると感じていた鶴岡さん。
その後、努力を惜しまずトレーニングを続けた大谷選手。するとストレートの制球も次第に安定してきました。
鶴岡「コントロールがバラつくのであれば、そのコントロールを良くするためにはこうすればいい、ああすればいいとか。(ウエート)トレーニングの形を見ていても、お尻回りとか腰回りの強さはものすごいものがある。努力の結晶だと思う」
3年目までに、体重は5キロ近く増加。土台となる下半身を鍛え上げ、球速とコントロールを磨きました。
■大谷選手との初対戦に「僕には無理」
鶴岡さんがストレートの成長を感じたのは、大谷選手がプロ4年目の時。対戦相手として打席に立ったときでした。
大谷選手が投じた156キロのストレートに、鶴岡さんは空振り。
鶴岡さんは「ストレートを狙っているのに、全くストレートが当たらないっていう野球選手として初めての経験をした」と当時を振り返ります。
鶴岡「指にしっかり掛かってコントロールされていました。自分の体の力をものすごく指先に伝えているなと、そういうのがあって、僕には無理だと感じたのをすごく覚えています」
■決めどころでの直球に「バッターを見る目も超一流」
努力でつかんだ自慢のストレートはメジャーでの奪三振率にもつながっているといいます。
鶴岡「最近はスイーパーをものすごく投げていますが、(バッターが)狙っていると感じたら、フォーシーム(直球)で勝負できているので、バッターを見る目も超一流だなと感じます」
象徴的だと語るのは10日のアストロズ戦。これまでバッテリーを組んできたキャッチャーがケガのため相次いで離脱し、この日はメジャー経験わずか7試合のクリス・オーキー選手との初コンビとなりました。
2回、対戦したのはジェイク・マイヤーズ選手。その初球、スイーパーをファウル。そして追い込んでからの4球目、マイヤーズ選手が外に逃げるスイーパーをギリギリで見極めます。そして5球目、外角ギリギリに157キロのストレートを投げ込み見逃し三振。
この投球に鶴岡さんは「(4球目は)ハーフスイングで止まった。明らかにスイーパーを狙っていますよね。次、フォーシーム(直球)に行ったんです。なかなか分かっていても、フォーシームをストライクゾーンに投げるコントロールがないとダメですが、それを1発でしっかりアウトコースで決めたのはさすがだなと思いましたね」と、狙い球の読みとコントロールを称賛。
■相次いで変わる女房役に球種でも対応
さらに、初バッテリーを組むオーキー選手が、大きく曲がるスイーパーに対応できていなかったこともあり、この日の大谷選手の球種を見ると。
◇今季7試合
スイーパー:48.9%
シンカー:5.2%
◇10日アストロズ戦
スイーパー:38.8%
シンカー:31.1%
これまでの登板に比べ、シンカーの割合が多くなっていました。
この狙いに鶴岡さんは「確実にスイーパーをアストロズ打線が狙っていたと大谷選手が判断したからだと思います。やはり外に逃げる(スイーパーの)軌道をイメージしている右バッターに対して、逆に食い込んで来たらバッターは対応できない。そういう効果を狙っていたんだと思います」と説明しました。