大谷翔平はなぜ速いのか?陸上界のレジェンド・朝原宣治が分析
豪快なホームランを生み出す圧倒的なパワーが注目されますが、メジャーでもトップクラスのスピードも、大谷選手の活躍を支える要因となっています。
なぜ大谷選手は“速いのか”。日本短距離界のレジェンドで、北京五輪4×100mリレーの銀メダリスト・朝原宣治さんに走りのメカニズムを解説してもらいました。
■ボルトを彷彿させる陸上選手並みのダッシュ
大谷選手は2021年シーズン、リーグ5位となる26盗塁をマークし、メジャー史上6人目の45HR25盗塁を達成。
バッティングから一塁に到達するまでの時間は、わずか4秒16。最高速度はメジャー平均を秒速1mも上回る、驚異的なスピードを誇ります。
大谷選手の速さの要因について、朝原さんは「ピッチ(脚の回転数)が出るので、この巨体で。陸上選手並みのダッシュをしている」
朝原「打って体勢が崩れた状態から一塁に走るので、タイミングを合わせるのは大変で、(普通)ピッチが上がってこない。バットを大きく振ったあとに一塁ベースにたどり着く頃にはピッチが出るような走りに整っているのがすごい。巨体をうまくコントロールできるように、コンパクトに動こうとしている」と語ります。
その走り方は陸上界のスーパースター、ウサイン・ボルトさんを彷彿させるといいます。
大谷選手は身長193センチ、体重95キロ。ウサイン・ボルトさんの195センチ、94キロとほぼ同じ体形。
走り方についても「(大谷選手は)蹴るという動作はまったく入ってない。短距離選手も一緒で、スピードが上がれば上がるほど(地面を)蹴る意識はない。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)アメリカ戦の内野安打の走りでは、上げた足を地面に叩き落として推進力を得ている。(地面を)蹴らずに、すぐに足を上げてる」と解説。
地面を蹴るように走ると、蹴った脚が体の後ろに行くため、脚の循環にロスが生まれ、ピッチが上がらない。
一方、上げた脚をすぐに戻すような直線的な動きになると、ピッチが出やすいと言います。
■着目した、一塁を踏む“左足”
さらに大谷選手の走り方で朝原さんが絶賛したのが、WBCチェコ戦で見せた二塁打のときのもの。
朝原「全力で走っているように見えて、一塁ベースを左足で踏めるようになっていたらすごいと思いました。僕は走り幅跳びをやっていて、踏み切り板に足が合わないことが結構ある。踏み切り板に足が合う人は、何m前かになると自動調整して、踏み切り足が来るようになる、コントロールできる能力がある。内野安打の時は最後の一歩を大きくして、左足で踏んでセーフみたいな感じだった。二塁打のときは左足でベースを踏んで、さらにそこから加速しないといけないので、普通の人だったら、前のめりになって足が後ろ回転になってスピードが落ちる。スピード維持したままスライディングに入ることができるのですごい」
■追い風となるベースのサイズ変更
また今シーズン、メジャーリーグではベースが7センチ大きいものに変更。
ホームから一塁までは7センチ、一二三塁間は11センチも短くなりました。
昨季と今季で開幕1週間の盗塁数と成功率を比べると、盗塁数は61から124に増加。成功率も68.5%から80.5%に伸びています。
投打で活躍する大谷選手。走りでも記録的な活躍に期待です。